内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 試験問題の解説(2009年1月)-2
2009-01-31 Sat 11:57
 昨日に引き続き、都内の某大学でやっている「中東郵便学」の試験問題の解説です。今日は、「この切手(画像はクリックで拡大されます)について説明せよ」という問題を取り上げてみましょう。

 ヨルダン成立

 これは、1952年4月1日、“ヨルダン統一”を記念して発行された切手で、地図を背景に、エルサレムを象徴する岩のドームと、旧トランスヨルダンを象徴するペトラの遺跡が描かれており、中央には“ヨルダン統一記念 1950年4月24日”との意味のアラビア語が印刷されています。

 第一次大戦後の旧オスマン帝国領の分割の過程で、1921年、イギリスはヨルダン川東岸地域に委任統治領としての“トランスヨルダン(ヨルダン川東岸を意味する)”を創設。大戦中、いわゆるアラブ叛乱でオスマン帝国との戦いで重要な役割を果たしたハーシム家のアブドゥッラーをアミール(首長)として、アンマンに政府を樹立しました。

 その後、トランスヨルダンは1946年にイギリスから独立。1948年5月に第一次中東戦争が勃発すると、イスラエルの独立を阻止するとして参戦し、イギリス撤退後のヨルダン川西岸地区を占領しました。エジプトによるガザ地区の占領と同様、“パレスチナ解放”の大義とは裏腹に、アラブ諸国が混乱に乗じてパレスチナの犠牲の上に自国の権益を拡大しようという意図をもって参戦していたことを象徴的に示している事例といってよいでしょう。

 第一次中東戦争は、結局、イスラエル側の勝利に終わりましたが、トランスヨルダンのアラブ軍団は1949年4月の休戦までエルサレム旧市街を含むヨルダン川西岸地区を維持します。この間、1948年12月1日には、現地の親ヨルダン派のパレスチナ人指導者が死海北西岸のイェリコで“パレスチナ・アラブ評議会”を開催し、トランスヨルダン国王アブドゥッラーを“全パレスチナ人の王”とし、同国王に対して西岸地区のトランスヨルダンへの併合を要請する決議を採択。これを受けて、同月13日、トランスヨルダン議会がイェリコでの評議会の決議を全会一致で承認するという形式を取りながら、トランスヨルダンは西岸地区の併合に向けて着々と準備を進めてきます。

 そして、イスラエルとの休戦協定成立後の1949年6月、トランスヨルダンはヨルダン川西岸地区と東エルサレムを併合し、新国家“ヨルダン・ハシミテ王国”の建国を宣言し、ここに、現在のヨルダン国家が誕生したのです。

 試験の答案としては、この切手が、旧トランスヨルダンと西岸地区の統合を記念したものであることを踏まえ、旧トランスヨルダンが現在のヨルダンハシミテ王国へと変貌していく過程が要領よくまとめられているかどうかがポイントとなります。


 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★  
   
 誰もが知ってる“お年玉”切手の誰も知らない人間ドラマ 好評発売中!
  
 年賀切手   『年賀切手』   日本郵趣出版 本体定価 2500円(税込)       
 
 年賀状の末等賞品、年賀お年玉小型シートは、誰もが一度は手に取ったことがある切手。郷土玩具でおなじみの図案を見れば、切手が発行された年の出来事が懐かしく思い出される。今年は戦後の年賀切手発行60年。還暦を迎えた国民的切手をめぐる波乱万丈のモノ語り。戦後記念切手の“読む事典”<解説・戦後記念切手>シリーズの別冊として好評発売中!

 1月15日付『夕刊フジ』の「ぴいぷる」欄に『年賀切手』の著者インタビュー(左の画像)が掲載されました。 こちらでお読みいただけます。また、日本郵政本社ビル・ポスタルショップでは、『年賀切手』の販売特設コーナー(右の画像)も作っていただきました。 *写真はいずれも:山内和彦さん撮影

 夕刊フジ(イメージ)   日本郵政特設コーナー 
 
 
 もう一度切手を集めてみたくなったら 
 雑誌『郵趣』の2008年4月号は、大人になった元切手少年たちのための切手収集再入門の特集号です。発行元の日本郵趣協会にご請求いただければ、在庫がある限り、無料でサンプルをお送りしております。くわしくはこちらをクリックしてください。
スポンサーサイト

別窓 | ヨルダン | コメント:2 | トラックバック:0 | top↑
<< 試験問題の解説(2009年1月)-3 | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  試験問題の解説(2009年1月)-1>>
この記事のコメント
#1364 別問題
私の感覚では,なかなか渋い地図切手ということになるのですが,
私がこの切手を題材に問題を作るとしたら,
地図に描かれている河川と湖について,その地形的な特色を述べなさいということになるでしょうか。
答としては,死海に流れ込むヨルダン川の両地名を示した上で,このヨルダン川河谷が紅海に続くヨルダン地溝帯に当たり,海面下の土地であること,そしてヨルダン川支流のうちの何本かが,乾燥地帯特有のワジ(涸れ川)になっていることが書ければ良いことになります。
2009-02-01 Sun 23:00 | URL | mapstampfan #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 mapstampfan様

 なるほど。このエリアは水争いも重要な問題ですから、ヨルダン川を題材にした問題も面白そうですね。御教示ありがとうございました。
2009-02-04 Wed 23:05 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/