内藤陽介 Yosuke NAITO
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 仏像切手の魅力(前)
2009-02-13 Fri 20:57
 雑誌『大法輪』3月号が発表になりました。今月発売の3月号と来月発売の4月号では、東京・目白の切手の博物館で開催中の「ザ・仏像展」にちなみ、2回に分けて「仏像切手の魅力」と題する僕のエッセイが掲載されています。そこで取り上げたものの中から、今日はこんなモノをもってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 鎌倉大仏1円

 これは、1939年7月1日に発行された“鎌倉の大仏”(高徳院・銅造阿弥陀如来坐像)を描く1円の通常切手です。

 いわゆる昭和切手は“世界に冠たる神国・日本”をテーマに、当時の大日本帝国を代表する人物や風景、文化遺産などをとりあげていましたが、1円切手に関しては、当初は江戸時代の画家・伊藤若冲による鶏の図を取り上げる方針が立てられていました。ところが、デザインの検討過程で、若冲の描くリアルな鶏はグロテスクに見えるとの反対意見が出され、代わりに、東大寺法華堂の執金剛神や同戒壇院の広目天、法隆寺の吉祥天、法華寺の十一面観音などが候補として挙がります。そして、その中から最終的に、誰にでもわかるものということで“鎌倉の大仏”が切手に取り上げられることになりました。

 『吾妻鏡』によると、鎌倉の大仏は、1238年に建造が開始され、5年後に完成。台座を含む高さは13.35メートル、重量約121トンで、木製の原型をもとに外型と内型を土で造り、その隙間に青銅を溶かして流し込むという手法でつくられました。原型は運慶一派が担当したと考えられていますが、具体的な仏師の名は確認できていません。また、素材となった青銅の組成から、原料には中国からもたらされた宋銭が溶かして用いられた可能性もあるそうです。完成当初の大仏は黄金色に輝き、大仏殿に納められていましたが、室町時代の津波で建物が倒壊した後は現在のように露座となりました。

 切手は茶系統の濃淡二色で印刷されており、素朴な味わいの雰囲気が良い雰囲気です。画面構成の都合から、台座の両脇の灯籠をカットし、松の木を大仏寄りに移動させて描いているほかは、背景は当時の写真をほぼ忠実に再現しています。ただし、切手発行から70年が経過した現在では木立の様子もかなり変わっていますが…。

 なお、今回のエッセイでは、この大仏切手と中宮寺仏像の50円切手の変遷を中心にまとめてみました。機会がありましたら、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。また、現在、“切手に見る仏像”といった趣旨の本を作っているのですが、この本でも、大仏切手のちょっと面白いマテリアルをご紹介する予定になっています。本の正式なタイトルや詳細が決まりましたら、またこのブログでもご案内いたしますので、どうかよろしくお願いいたします。


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この記事のコメント
#1381 日本切手の誇り
この昭和切手のシリーズは、日本普通切手の最高峰だと自分では思っています。題材の選定、デザイン、刷色など、どれを見ても素晴らし作品ですね。当時の製作者の情熱とプライドを感じます。特に、この大仏や法隆寺など凸版でもけして、凹版に見劣りしない切手が出来る証明になってますね
話は脱線しますが、私が本格的に切手収集を始めたのはこのシリーズがあったからです。もしこの昭和切手が無ければ今日まで収集は続いてなかったかもしれません。
翻ってみて、今の平成切手はどうでしょうか、このシリーズを見てああ素晴らしい切手だな。集めてみようかなと、思う人がいるんでしょうか、甚だ疑問です。鳥、花、虫と、画一的に無理やり統一し、さらには毒毒しいまでの多色刷り。最低のシリーズですよ。まだ以前の円単位やローマ字入りの方がましですね。
印刷技術は向上しても、デザイナーの質は低下すると言うことか、
はたまた、シール見たいな物で良しとする当局の方針かな。
2009-02-14 Sat 16:36 | URL | 一匹狼 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 一匹狼様

 その昔、デザイナーの木村勝は、自分がデザインした日本三景の松島の切手が出来上がってきたのを見て、こんなにひどい切手を作ってしまって慙愧に堪えない、といった趣旨の発言をしたことがあります。この発言を聞いて、その志の高さに頭が下がる思いがしました。

 翻って、いまのデザイナーたちは・・・止めておきましょう。愚痴になりますから。
2009-02-18 Wed 22:59 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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