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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 口号木
2009-02-16 Mon 17:34
  今日(2月16日)は、北朝鮮の“将軍様”こと金正日の誕生日です。まぁ、ネタには事欠かない人物なので何を持ってこようか迷ったのですが、とりあえず、こんなモノを持ってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

 抗日スローガンの木

 これは、1989年に北朝鮮が発行した“抗日スローガンの木”(口号木:クホナム)の切手です。

 口号木というのは、日本統治時代の抗日パルチザンが、中朝国境の白頭山中などで抗日スローガンを書いたり彫ったりした樹木のことで、日本の官憲史料にも「日本のファシスト、軍閥を打倒せよ」「朝鮮の青年よ、速やかに来たり、抗日戦に力強く参加しよう」などの文言を記した樹木が存在していたことが記録されています。

 抗日スローガンの木(本物)

 たとえば、1959年に発行された“普天堡戦闘勝利22周年”の記念切手(上)には、「日本のファシスト軍国主義者を打倒するため起ち上がれ!」とするスローガンの書かれた口号木が取り上げられていますが、これなどは、比較的史実に忠実なデザインといってよいでしょう。ちなみに、“普天堡戦闘”というのは、北朝鮮側の説明だと、“首領様”こと金日成が日本側に対して大打撃を与えたゲリラ戦ということになっていますが、その実態は日本側の隙をついて現金・物資・警察駐在所の武器などを強奪し、学校などの施設に火を放って引き上げたというもので、単なる強盗放火事件にすぎません。

 これに対して、1989年の切手に取り上げられている口号木のスローガンは「白頭光明星は朝鮮未来の光輝である」となっています。ここでいう“白頭光明星”とは金正日のことだそうですが、よく知られているように、金正日が生まれたのは白頭山中ではなくソ連領内ですし、彼が生まれた1942年の時点では父親の金日成もソ連軍の一下級将校にすぎません。それに、抗日闘争の時期に士気を鼓舞するために作られたはずの口号木に抗日スローガンの類が出てこないのも、そもそもおかしな話ですね。

 金日成から金正日への権力の世襲が着々と進められていた1980年代、北朝鮮当局は突如として、金日成・金正日父子らを讃える文言の記された口号木が大量に見つかったと発表し、今回ご紹介しているような切手を発行したというわけです。
 
 ちなみに、脱北者等の証言から、これらの口号木は、朝鮮人民軍特殊部隊がひそかに山中に入ってつくっておき、適当に古びてきたところで当局が“新発見”として発表したものであることが明らかになっています。まぁ、常識的に考えれば「そうだろうな」というところですが、生きていくためにはそこまでして忠誠心を表明しなければならない人たちには、心から“お気の毒さま”としかいいようがありませんな。


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この記事のコメント
#1390
テリー伊藤さんの「お笑い北朝鮮」に乗っていた写真で、口号木の形式で「森の木を大切にしよう」と書かれていてわからん感覚だなあと思ったものですが、こういう「伝統」があったのですね。
2009-02-22 Sun 03:49 | URL | まめふじ #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 まめふじ様

 ≫口号木の形式で「森の木を大切にしよう」

 きついブラックジョークですね。将軍様に対するせめてもの皮肉なのかなぁ。
2009-02-24 Tue 23:23 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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