内藤陽介 Yosuke NAITO
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 タクシンちがい
2009-04-17 Fri 23:21
 タクシン派の反政府デモはとりあえず収まったものの、依然、非常事態宣言下にあるタイのバンコクで、今度は、反タクシン派の指導者ソンティ・リムトンクンの暗殺未遂事件が起きたそうです。物騒な話ですな。ところで、日本語では問題の元首相と同じ“タクシン”と表記されることが多いのですが、タイ語では全く別の発音となるタクシン王(原音はタークシンに近いので、以下、そのように記します)の誕生日は1734年4月17日だということなので、タクシン違いですが、きょうはこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 タークシン像

 これは、1955年5月1日にタイで発行されたタークシン王の銅像の切手です。

 タークシンはアユタヤ王朝時代の1734年、賭博場の徴税人をしていた潮州華人の父とタイ人の母の間に生まれました。社会的には下層の出身でしたが、才知を見込まれてアユタヤの大臣の養子となり、シンと名づけられ、宮廷に仕えるようになります。1767年にビルマ軍がアユタヤを攻撃してきた時には、タイ北西部のタークの国主の地位にあったことから、プラヤー・タークとよばれるようになり、これが、タークシンという名の由来になりました。

 アユタヤ陥落の際、タークシンはビルマの軍の包囲をかいくぐってタイ東南部のラヨーンに脱出。ここから反撃を開始し、同年10月、チャオプラヤー川西岸にあったトンブリーの要塞を奪還してビルマ軍を撃退し、トンブリーを都としたうえで、翌1768年にトンブリー王として即位しました。ちなみに、チャオプラヤー川をはさんでトンブリーの対岸(ラタナコーシン地区)に建設されたのが、現在のチャクリー王朝の王宮エリアです。

 その後、タークシンは、混乱の中で四分五裂に陥っていた国内の統一に乗り出し、約3年で旧アユタヤ朝の版図を回復。さらに、みずからマレー諸国やカンボジアを服属させたほか、部下のトードワン(後のラーマ1世)ならびにブンマーの兄弟らを遠征させて北方のチェンマイやメコン川岸のラオス諸国を属国としました。また、チャオプラヤー川に面したトンブリーの地の利を生かして清朝との朝貢貿易にも乗り出しています。

 このように、タークシンは救国の英雄にして、一代で王朝を建設した武闘派の傑物だったのですが、社会が安定を回復し、アユタヤ朝時代の名門貴族が復権し始めると、彼らからは“成り上がり者”として軽んじられ、疎外感を味わっていたようです。そのストレスからか、自らを僧侶に跪拝を命じて拒否した者には鞭打ちや重労働の刑を課すなどの偏執的な奇行が目立つようになり、1728年、宮廷クーデターで逮捕され、ベルベットの袋に入れられ白檀の杖で首を折って処刑されるという非業の死を遂げています。

 救国の英雄でありながら悲劇的な死を遂げたタークシンは、いつしか、人々の間でその霊力にあやかってわが身を守ろうとする信仰を生み出すようになり、各地に彼を祀る廟が建てられるようになりました。

 今回ご紹介の像は、1954年、トンブリー地区の繁華街で鉄道のウォンウィエン・ヤイ駅前のロータリーに建てられた像で、イタリア出身の彫刻家シン・ピーラシーの手によるものです。もちろん、銅像の顔などは、後代の想像によるタークシン像なのですが、切手を見る限り、勇猛な武将としての彼の雰囲気は上手く表現できているのではないかと思います。

 なお、最近ニュースに頻出のバンコクに関しては、拙著『タイ三都周郵記』でも、その主要スポットを切手でたどりながらご紹介しています。機会がありましたら、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。


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