内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 盧武鉉の“功績”
2009-05-23 Sat 23:50
 韓国の盧武鉉・前大統領が自殺しました。謹んでご冥福をお祈りいたします。というわけで、盧武鉉政権時代の切手の中から、こんな1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 第2次南北頂上会談

 これは、2007年10月、盧武鉉と金正日の南北首脳会談を記念して韓国が発行した切手です。

 2003年に発足した盧武鉉政権は、経済政策の失敗や過去清算をめぐる国内の混乱、対日外交の破綻に見られる外交失策などから、支持率が低迷し、2006年5月31日の統一地方選挙で与党ウリ党は惨敗します。

 追い打ちをかけるかのように、、金大中政権以来の対北朝鮮宥和の“太陽政策”も、巨額の援助の見返りとなるはずだった北朝鮮の非核化は一向に進展しなかったばかりか、2006年7月5日には北朝鮮は国際社会を挑発するかのようにミサイルを発射実験を断行。これに対して、韓国政府は「果たしてわが国の安保上の危機だったか」、「(政府対応が遅れたのは、国民を不安にしないために敢えて)ゆっくり対応した」、「あえて日本のように夜明けからばか騒ぎを起こさなければならない理由は無い」などとする見解を発表し、国際社会を唖然とさせました。さらに、ミサイル発射後の7月13日の南北閣僚級会談では「南は北の先軍政治の恩恵をこうむっている」という北朝鮮側の暴言を浴び、会談は決裂しましたが、それでも盧は北朝鮮が過去に行った戦争や拉致を許すと演説し、同時期に発生した北朝鮮の水害に対する援助として、米、セメント、重機などの支援を行っています。

 こうしたことが重なり、2006年も後半になると政権は完全にレームダック化し、与党ウリ党でも、翌2007年末の大統領選挙をにらんで、金槿泰を中心に、かつて袂を分かった民主党との再統合を模索する動きが活発化。2007年2月28日には、盧はウリ党からの離党を余儀なくされてしまいます。

 四面楚歌となった盧は、残り少なくなった任期中に何とかして業績を残そうと、8月8日、北朝鮮を訪問し、最高権力者の金正日と会談することを発表。会談は当初予定の8月28-30日から延期され、10月2日から行われ、前回の頂上会談同様、会談初日には、今回ご紹介の記念切手も発行されました。

 10月2日、軍事境界線を徒歩で越えて北朝鮮に入るパフォーマンスを行った盧は、4・25文化会館での歓迎式典の後、万寿台議事堂で北朝鮮最高人民会議常任委員長の金永南と会談。翌3日は、百花園招待所で金正日と会談した後、5・1競技場で公演「アリラン」を鑑賞。最終日の4日に平壌で「南北関係発展と平和繁栄のための宣言」に署名した後、開城工業団地を視察して帰国するという訪朝日程をこなしています。

 共同宣言では、①黄海に平和協力特別地帯を設定する、②11月中に南北の首相、国防相会談を開催する、③朝鮮戦争終結宣言のため、朝鮮半島で関連当事国会議を開催する、④京義線の貨物列車の運行を開始する、などの項目が盛り込まれ、朝鮮半島の経済共同体建設に向け、具体的な協力事業の推進での合意がなされました。

 しかし、肝心の核問題をめぐっては「南北は朝鮮半島核問題解決のために六カ国協議の共同声明と合意文書が順調に履行されるよう努力することにした」と記されただけで北朝鮮側の非核化に向けた意思表示や具体的な行動は盛り込まれなかったばかりか、韓国人や日本人の拉致には触れられていないなど、成果に乏しいものでした。

 結局、盧武鉉による南北首脳会談は客観的に見れば失敗に終わってしまったわけですが、そのことは、少なくとも対北政策に関する韓国の左派政権の無能を内外に強く印象づけることとなりました。そのことが、結果的に、かつての民主化運動の闘士というだけで実力以上に評価されてきた左派政治家に対する韓国民の幻想を打ち砕き、保守政権の復活につながったのだともいってよいでしょう。その意味では、みずから左派勢力(実は、韓国人の伝統的なメンタリティとかなりな部分で合致するものでもあったわけですが)の限界を明らかにしたことこそ、韓国政治史において、盧武鉉の最大の功績として特筆大書されるということになるのかもしれません。

 なお、盧武鉉政権時代の主要な出来事とそれにまつわる切手に関しては、拙著『韓国現代史:切手でたどる60年』でもいろいろとまとめておりますので、機会がありましたら、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。

 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★  
   
 異色の仏像ガイド決定版 
 全国書店・インターネット書店(アマゾンbk17&Yなど)・切手商・ミュージアムショップ(切手の博物館ていぱーく)などで好評発売中!

 切手が伝える仏像  『切手が伝える仏像:意匠と歴史』 彩流社(2000円+税)       

 300点以上の切手を使って仏像をオールカラー・ビジュアル解説
 仏像を観る愉しみを広げ、仏教の流れもよくわかる!
スポンサーサイト

別窓 | 韓国:盧武鉉時代 | コメント:2 | トラックバック:1 | top↑
<< 世界漫遊記:アルバ・ユリア(後篇) | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  切手で巡る庭園散歩:プッタモントン公園>>
この記事のコメント
#1529
v-115鳩山由紀夫がノ・ムヒョンの真似をしているわけではないが、鳩山由紀夫はノ・ムヒョンと政策が似ていると言われている。
米国との対等な関係の主張(反米体質)。経済成長よりも、税金の分配による格差是正(社会主義体質)。
鳩山由紀夫が自殺をすれば、さらにそっくりである。
2009-09-13 Sun 08:44 | URL | 岡田負也 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 岡田負也様

 まぁ、“宇宙人”氏が、自殺も選択肢に入るほど、物事を真剣に考えたことがあるのかどうかは、大いに疑問ですがね。
2009-09-14 Mon 23:18 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
盧武鉉前大統領死亡
韓国の盧武鉉・前大統領が死亡した。自殺らしい。大統領に強大な権力が集中するシステムの韓国。様々な団体や企業などが、あらゆる手段を使って大統領周辺に近づいてくる。結果、大統領の家族、側近、血縁者たちがカネのスキャンダルに曝される。大統領が替わると、前職大... …
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/