内藤陽介 Yosuke NAITO
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 泰国郵便学 (1)
2009-05-31 Sun 13:19
 ご報告が遅くなりましたが、財団法人・日本タイ協会発行の『タイ国情報』第43巻第2号から、「泰国郵便学」と題する連載を始めました。切手や郵便物を通じてタイの近現代史を見ていこうという企画です。第1回目の今回はタイの最初の切手が発行された当時の話をまとめましたが、そのなかから、こんなモノをご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

 クダ消印

 これは、1890年10月29日、現在はマレーシア領となっているクダ(日本語ではケダーと表記されることも多いようです)で使用されたラーマ5世の切手です。

 1868年にラーマ5世が即位した頃のタイは、現在の国名でいうラオスのほぼ全域やベトナムの北部、カンボジア西部、さらには、マレーシアの北部までをも勢力下に収めた域内の大国でした。もっとも、チャクリー王朝の直接支配はその全域に及んでいたわけではなく、地方の小領主がバンコクの王室に服属し、結果として緩やかな連合国家を形成されていたというのが実態でした。

 英仏列強はこうしたタイ国家の構造を利用して、周辺の属国をラタナコーシン王朝の支配下から切り離すことで領土を拡大していったわけですが、そのプロセスを、年表風に記すと以下のようになります。

 1888年 シップソーンチュタイ(ベトナム北部)をフランスに割譲
 1892年 シャン族5王国と東カレン族の国をイギリスに割譲
 1893年 シャム危機:砲艦外交に屈して、メコン川東岸のラオス全域をフランスに割譲
 1904年 シャム危機での賠償金支払い完了までの保障占領としてチャンタブリーとトラートに駐留していたフランス軍の撤退を求めて、メコン川右岸のマノープライ、チャンパーサック、ルアンプラバーン州をフランスに割譲
 1907年 フランスのアジア系保護民の治外法権撤廃軍の代償として、カンボジアのバタンバン、シムエレアプ、シーソーポンをフランスに割譲
 1909年 イギリス保護民の治外法権撤廃の代償として南部のクダ、ペルリス、クランタン、トレンガヌ4州の宗主権をイギリスに割譲

 この年表からもお分かりいただけるように、1909年まではクダはタイ領であり、当然、タイの切手が使われていたということになります。
 
 さて、これら6回にわたる領土の割譲で、タイが失った総面積は30万平方キロにも達しました。タイは、こうした多大なる代償と引き換えに、東南アジアにおける英仏の緩衝国という立場を確保し、独立を保ったといえます。

 もちろん、タイの損失が一部領土の割譲にとどまり、独立国として存続しえた背景には、ラーマ5世による一連のチャクリー改革が一定の成果をあげ、曲がりなりにも“近代国家”の一員として国際社会から認知されていたという事情も見逃してはならないでしょう。1883年に創業したばかりのタイ郵政が、早くも1885年7月1日付で国際的な郵便交換の組織である万国郵便連合に加盟し、それに伴い、前日の6月30日をもってバンコクのイギリス局が撤退していたということは、その象徴的な出来事と見ることができます。

 今回の連載では、次回以降、“周年モノ”の記念切手も使いながら、タイの近現代史を時代順にたどっていこうと思っています。連載終了(いつになるかはわかりませんが)後は、加筆・修正のうえ、単行本化する計画もありますので、よろしくお付きあいいただけると幸いです。


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