内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手が語る宇宙開発史(2)
2009-06-20 Sat 16:21
 雑誌『ハッカージャパン』の7月号が出来上がりました。僕が担当している連載「切手が語る宇宙開発史」では、今回はこんな切手を取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)

 スプートニク1号

 これは、1957年11月にソ連が発行したスプートニク1号の記念切手です。

 1957年7月1日から翌1958年12月31日までの期間、全世界の研究者が、気象、地磁気、電離層、宇宙線、経緯度、海洋、地震、重力などについて共同観測を行う“国際地球観測年”が実施されました。こうした国際共同観測事業は、第二次大戦以前にも、“極年”と呼ばれて2度ほど実施されており、今回が初めてではありませんでしたが、1956年のソ連共産党大会でフルシチョフがスターリン批判を行うという状況の中で、東西の融和ムードを反映するものと受け止められていました。

 国際地球観測年が計画されると、アメリカは早い段階で人工衛星による地球近傍の太陽系空間を観測するとのプランを発表します。

 当時はすでに、1949年8月にはソ連が、そして、1952年10月にはイギリスが原爆実験に成功していました。また、1952年11月にアメリカが水爆実験に成功すると、翌1953年8月にはソ連もその後に続くなど、その頃までには、核兵器はすでにアメリカの専有物ではなくなっていましたが、それでも、当時のアメリカは黄金の50年代の真っただ中にあり、その経済力や軍事力、科学技術力は他国をはるかに凌駕していました。それゆえ、人類で初めて宇宙への扉を開くのはアメリカ以外にはありえないというのが世界の常識でした。

 ところが、1957年10月4日、ソ連は、突如、人工衛星を打ち上げて「スプートニク(ロシア語で“付随するもの”の意)」と名付けたと発表。世界は大騒ぎとなります。

 ソ連の発表をめぐっては、まず、そもそもそれが事実であるのか否かが大きな議論となりました。東京天文台の天体捜索部のスタッフは、米軍のレーダーによる追跡情報をもとに、ただちに新聞社や放送局の飛行機に乗って衛星の実物を確認しようとしたそうです。

 結局、このときの夜間飛行では彼らは衛星を視認することができませんでしたが、まもなく、衛星本体から発信された40.02MHzと20.05MHzの電波は世界各地で受信され、ソ連の発表が紛れもない事実であることが明らかになりました。

 ソ連の発表によれば、スプートニク1号の打ち上げ目的は、あくまでも国際地球観測年事業の一環として、電離層の観測を行うことにあるとされており、実際、衛星の存在証明となった電波もそのためのものでした。

 しかし、彼らが人類初の人工衛星を打ち上げたという事実は、ソ連が科学技術の面においてアメリカを凌駕しているというイメージを多くの人々に与え、東西冷戦の心理戦においてソ連に大きなアドバンテージを与える結果をもたらします。

 こうした文脈の下で、ソ連は、自国の対米優位を大々的にアピールする手段として、人工衛星の打ち上げ成功を華々しく宣伝。その一環として、打ち上げ成功からわずか1ヶ月後の11月5日には地球を周回する人工衛星を描く記念切手を発行しました。おそらく、衛星の打ち上げ準備と並行して極秘裏に製作準備が進められていたのではないかと思われます。

 なお、11月5日に発行された切手は青みがかった用紙に紺色で印刷されていますが、12月28日には白紙に明るい青色で印刷された切手が発行されています。両者のデザインと額面は全く同じで刷色も同系統ですから、このような変更が行われる必然性はあまりないように思われますが、あるいは、突貫作業で作られたために用紙やインクの調達の関係でそうせざるを得なかったということなのかもしれません。


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