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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 トマス・ジェファーソン
2009-07-04 Sat 23:39
 きょう(7月4日)は言わずと知れたアメリカの独立記念日です。というわけで、ストレートにこの1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 ジェファーソン

 これは、1904年にルイジアナ購入100周年を記念して行われた“ルイジアナ購入博覧会”の記念切手のうち、トマス・ジェファーソンの肖像を取り上げた2セント切手です。独立宣言起草委員会の中心メンバーであったジェファーソンは、アメリカ独立宣言の事実上の起草者とみなされることも多く、初代大統領ジョージ・ワシントンのもとで初代国務長官をつとめ、次の大統領ジョン・アダムズの代には副大統領をつとめたのち、1801-09年には第3代大統領も務めました。この間の1803年、ミシシッピ川以西のルイジアナをフランスから買収し、その後の西部開拓の基礎を築いたことで、今回の記念切手にも取り上げられました。ちなみに彼の忌日は1826年の独立記念日です。

 こうした華々しい業績もあって、アメリカでは、ジェファーソンこそが“歴代大統領の中で最も優れた人物の一人”として考えられていますが、はたして、その評価が妥当なものなのかどうか、僕個人は疑問に思っています。

 たとえば、アメリカ合衆国の建国に際して、初代財務長官であったアレクサンダー・ハミルトンは、新国家の経済・通商制度をゼロから作り上げることに心血を注ぎ、1791年に連邦中央銀行を創設。1792年には造幣局を設立してドル硬貨を発行するなど、アメリカ資本主義の基礎を確立しようとしました。また、ハミルトンとその支持者たちは、農業国のままではアメリカの将来は暗いと考え、産業資本を育成し、イギリスにならった経済システムを導入することで、イギリスをしのぐ産業国家を作り上げようと考えていました。

 これに対して、バージニアの大地主の家に生まれたジェファーソンは、そうしたハミルトンの企図を全く理解しようとはせず、銀行についても、貧乏人から金を巻き上げ、農家を圧迫し、質素な共和主義を堕落させる、唾棄すべき存在と思いこんでいました。限られた家内工業しかない“農業の楽園”こそが、アメリカ合衆国のあるべき理想像だと信じる彼は、「農業を主としている限り、わが政府は今後何世紀にもわたって高潔さを失わずにいられるだろう」と主張し、商業は“際限のない凶悪窃盗”であると公言してはばからなかったほどです。

 さらに、政敵ハミルトンとの対立の過程で、自派の新聞『ナショナル・ガゼット』紙を使って、フランス革命とそれに続くナポレオン戦争に対してワシントンが中立宣言に署名したのは“イギリスびいき(ハミルトンのこと)”から脅されたせいだとの記事を掲載。さらに、ワシントンをギロチンで処刑する風刺漫画の入ったビラを同紙の関係者が作成して、ワシントンを激怒させ、ワシントン政権の国務長官の職を辞任せざるを得なくなっています。

 このほかにも、黒人奴隷の女性を愛人として数人の子供を産ませたり、アメリカの政治家には珍しく(?)演説が苦手だったりと、人間的にはいろいろと面白い人物だと思うのですが、教科書などで紹介される“偉人”のイメージが強いせいか、そうした人間臭いエピソードがなかなか紹介されないのは残念な気もします。

 なお、ハミルトンとジェファーソンという、アメリカ建国時の2大英雄の壮絶な争いについては、主としてハミルトンがワンの視点から拙著『大統領になりそこなった男たち』でもまとめてみましたので、機会がありましたら、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。

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