内藤陽介 Yosuke NAITO
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 不発行の飢餓救済切手
2009-10-16 Fri 12:49
 きょう(10月16日)は世界食糧デー。というわけで、来週23日の配本予定日まで1週間となった拙著『トランシルヴァニア/モルダヴィア歴史紀行:ルーマニアの古都を歩く』のなかから、飢餓救済関連の切手ということでこの1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 ベッサラビア飢餓救済

 これは、1923年に発行が計画されていたものの、不発行に終わったベッサラビア飢餓救済の加刷切手です。

  現在のルーマニアの東の国境線となっているプルート川=ドナウ川とドニエストル川にはさまれた地域は、かつてモルダヴィア公国の領土でした。しかし、1812年、露土戦争の結果結ばれたブカレスト条約で、この地域はロシアに割譲され、その支配下でベッサラビアと呼ばれるようになります。この命名は、かつてこの地を支配したワラキア公バサラブにちなむものでした。

 もともと、長年にわたってモルダヴィア公国の支配下に置かれていた地域だけに住民の大半はルーマニア人でルーマニア語を話していましたが、新たな支配者となったロシアのロマノフ王朝は、この地を南下政策の重要拠点と位置付けて、ロシア人やウクライナ人の入植を進め、ロシア化政策を推進。このため、1859年にモルダヴィア=ワラキア連合公国が成立した時も、ベッサラビアはその埒外に置かれていました。

 ところが、第一次大戦中の1917年、ロシア革命が起こって帝政ロシアが倒れると、1918年2月16日、モルドヴァ議会はキシナウでロシアからの独立を宣言。つづいて同年4月9日、同議会はベッサラビアのルーマニアとの統一を圧倒的多数で議決し、これをルーマニア議会が承認するというかたちで、ベッサラビアはルーマニア領に復しました。

 これに対して、ロシアのボリシェヴィキ政権は、ルーマニア軍がベッサラビアに駐留していたことを理由に、モルドヴァ議会の決定は無効であると主張。1919年5月、オデッサにベッサラビア暫定政府を樹立しましたが、これはフランスおよびポーランドの介入によって挫折します。以後、彼らはベッサラビアの回復を虎視眈々と狙うようになり、それは、最終的に第二次大戦を経て実現されることになるのです。

 さて、第一次大戦後のルーマニアとベッサラビアの統合は1920年にロシアを除く西欧諸国から正式に承認されることになりますが、一連の混乱のなかで、ベッサラビアでは飢餓が蔓延し、多数の餓死者が発生しました。今回ご紹介の切手は、そうした状況に対応すべく、新たにルーマニア領となったベッサラビアの同胞の救済を訴えるために準備されたものですが、実際には発行されずに終わりました。

 さて、まもなく刊行予定の『トランシルヴァニア/モルダヴィア歴史紀行』では、今回ご紹介の切手も含め、ベッサラビアとルーマニアの関係史についてもまとめています。奥付上の刊行日は11月5日ですが、10月23日には全国の主要書店に配本予定ですので、実物を見かけることがありましたら、ぜひ、お手にとってご覧いただけると幸いです。


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