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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ドバイ・ショック
2009-11-28 Sat 10:51
 きのう(27日)、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイの金融不安(ドバイ政府は、25日に政府系の投資持株会社ドバイ・ワールドとその不動産子会社ナヒールの債務返済の一時凍結要請を発表)から、急激な円高と株安が起こりました。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

 ドバイ・新旧両通貨混貼り

 これは、1967年1月4日、ドバイからアメリカ宛てに差し出されたカバーで、ガルフ・ルピー表示の20ナイエ・パイサ切手2枚と、あらたにカタール・ドバイ・リヤルで10ディルハムの額面表示を加刷した切手1枚が貼られています。

 1947年8月、インドとパキスタンが分離独立する以前の英領インド帝国は、郵政面では、非常に広範な地域をカバーしており、英領インドの域外でも各地でインド切手が使用されていました。こうした英領インドの在外郵便局は、二つの世界大戦を経て次第に規模が縮小されていきますが、それでも、1947年8月の段階では、ドバイ(現アラブ首長国連邦)やマスカット(オマーン)など、ペルシャ湾岸の郵便はパキスタンのカラチ中央郵便局の管轄下に置かれていました。

 もっとも、ドバイやマスカットは対岸のイランの脅威に備えるためにイギリスの保護領になったという経緯があり、対イラン防衛という点であてにならないパキスタンの保護領になるメリットは何もありません。それゆえ、英領インド郵政が解体されたのであれば、イギリス本国が直接、郵便事業を管轄することが望ましいということになります。また、この地域では、従来は英領インド・ルピーが、1947年8月以降は新生インド・ルピーが法定通貨として流通していたこともあって、パキスタン・ルピーで販売される切手の購入には、インド・ルピーとパキスタン・ルピーの為替差が常に問題となるという不便もあり、1948年4月、イギリスは新たに東アラビア郵政庁を設置し、同庁がペルシャ湾岸地域の郵便を管轄することになりました。

 ところで、新生インドが誕生した時点でのインド・ルピーはイギリスのスターリング・ポンドに対して1ポンド=13・3分の1ルピーの固定相場でした。また、スターリング・ポンドは米ドル金為替本位制を中心としたIMF体制の下で、米ドルとの固定為替相場制(1ポンド=2ドル80セント)を取っており、間接的に金本位制となっていました。このため、インド・ルピーもポンドを介して(さらに間接的にですが)金本位制とつながっていました。

 ところが、米ドルとの交換を目的とした公定価格(金1オンス=35ドル)は、市場での金取引の実勢価格に比べて割安に設定されていたため、金を買ってドルを売ることが盛んに行われました。その際、インド一国にとどまらず、広い地域で使われているインド・ルピーが金の密貿易に盛んに利用されたため、インドの外貨準備高は減少の一途をたどっていきます。

 このため、1959年5月、インド政府はインド・ルピーの国外での流通を停止し、湾岸地域で使用するための通貨として、新たにガルフ・ルピー(インド・ルピーと連動した不換紙幣)を発行します。ガルフ・ルピーの導入をきっかけに、1961年にはクウェートがクウェート・ディナールを、1965年にはバーレーンがバーレーン・ディナールを導入し、ルピー経済圏を離脱することになりますが、その他のイギリス保護下の湾岸首長国では依然として、ガルフ・ルピーが使用されていました。

 ところが、1966年6月6日、インド政府は、それまでスターリング・ポンドに対して1ポンド=13・3分の1ルピーとされていた固定相場を切り下げることを決定。これを受けて、ガルフ・ルピーは為替市場で暴落し、湾岸地域は通貨危機の危険にさらされます。

 このため、ポンドとの旧レートを支持したオマーン(1970年までガルフ・ルピーが使用された)を除き、湾岸首長国はガルフ・ルピーを放棄し、カタールとドバイによるカタール・ドバイ・リヤル(後のカタール・リヤル)を導入。アブダビは前年に創設されたバーレーン・ディナールに加わりました。

 今回ご紹介のカバーは、こうした状況の下で、新旧両通貨の切手が同時に貼られているもので、新通貨導入直後の移行期間ならではのマテリアルといえます。

 かくして、ペルシャ湾岸におけるルピーの歴史は終焉を迎え、1971年12月にドバイとアブダビを中核として発足したアラブ首長国連邦では、独自通貨としてUAEディルハムが使用されることになりました。

 さて、今回の一件で、当然、UAEディルハムは大暴落することになるでしょうが、ドルもユーロも下落して円高のみが進行するという事態になるという最悪のシナリオも覚悟しておいたほうがよさそうです。昨年のリーマンショックの後、当時の麻生政権はともかくも緊急経済対策を行い、一定の成果を上げたとされているわけですが、現在の鳩山政権はどうするつもりなんでしょうかねぇ。すくなくとも“鳩山不況”と呼ばれている現状を直視し、現在の施策を全面的に見直すぐらいのことをしてもらわないと、たまったものではありませんな。


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