内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ルーマニア大統領といえば…
2009-12-07 Mon 17:42
 きのう(6日)行われたルーマニア大統領選の決選投票は、現職のバセスク大統領が得票率50.33%、野党・社会民主党党首のジョアナ元外相が49.66%とまれにみる大接戦で、バセスク大統領の再選が決まりました。というわけで、ルーマニアの大統領ということで、定番のこの人の切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      チャウシェスク

 これは、1988年に発行されたチャウシェスク生誕70年の記念切手です。

 ニコラエ・チャウシェスクは1918年1月26日、ルーマニア南部のオルト県の出身で、第二次大戦以前は非合法だったルーマニア共産党に参加し、度々投獄を経験しています。第二次世界大戦後、ソ連の占領の下でルーマニアが共産主義化されると、党書記長にして国家評議会議長(国家元首)だったゲオルグ・ゲオルギウ・デジの側近として頭角を現し、デジの死後、共産党の書記長に就任しました。

 当時のルーマニアは産油国という立場のゆえにソ連とも一定の距離を維持する独自外交を行っていました。特に、1968年のいわゆる“プラハの春”に際して、ソ連を中核とするワルシャワ条約機構軍がチェコスロヴァキアに侵攻した際、チャウシェスクはこれに加担せずソ連を非難し、国民の喝采を浴びました。以後、“ソ連の脅威”を煽ることで国内の団結を図ることが独裁政権の基本スタイルとなりました。

 その一方で、1970年代初頭からチャウシェスクは次第に独裁の度合いを強め、国民に対して個人崇拝を強制するようになっていきます。そのきっかけとなったのは、1971年の中国・北朝鮮歴訪で、かの地で毛沢東ないしは金日成に対する異常な個人崇拝やマスゲームなどを目にしたチャウシェスクは、自国でもこれと同じことを行うべく、帰国後の同年7月、“ルーマニア文化大革命”を発動。秘密警察(セクリタテア)を動員した思想・文化の統制を強めていきました。1974年の大統領制導入もこうした文脈に沿って行われたもので、当然、初代大統領にはチャウシェスク本人が就任しています。

 チャウシェスクの推進した経済政策は、石油に依存する非効率なもので、極端な重工業至上主義によって建てられた各種の大規模コンビナートを運営していくためには、国内産の原油だけでは足りず、輸入燃料も必要であったことなどから、1977年以降、ルーマニアは石油の輸入国に転落し、対外債務も雪だるま式に膨らんでいきます。さらに1970年代末の農業の不作でルーマニア経済は深刻な状況に陥りましたが、個人崇拝の魔力に魅せられたチャウシェスク政権は、1984年に黒海=ドナウ運河が完成すると、北朝鮮にならった大規模な首都改造事業に乗り出し、国庫を濫費していきます。その一方で、1985年には電力非常事態宣言を発し、街灯を半減させ、テレビ放送は一日二時間に制限するという極端な“節電”を実行したほか、対外債務返済のための強引な“飢餓輸出”政策を遂行。国民生活は大きく圧迫され、国民は不満を鬱積させましたが、チャウシェスク政権は秘密警察を動員してそれを強引に抑え込んでいました。

 こうした体制は、いまから20年前の1989年12月の民主革命によってチャウシェスク政権が打倒されるまで続くことになります。

 まぁ、2人の有力な候補が大統領の座をめぐって争い、ともに開票直後に勝利宣言を発するほどの接戦を演じたということは、それ自体、この国でも公正な選挙が行われるようになったことを意味しているといってもよいでしょう。特に、今回の選挙結果に対して、野党側は「不正が行われた証拠がある」として異議申し立てを行う方針だそうですが、そもそも、不正な選挙しか行われていなかったチャウシェスク時代には異議申し立てを行うことは、そのまま、死を覚悟しなければならないことだったろうと思います。とはいえ、ルーマニア経済が昨年のリーマンショックに端を発した国際金融危機の直撃を受け、国際通貨基金(IMF)の支援を仰いでいるという状況では、民主的に選ばれたものの政権基盤の弱い大統領よりは、多少のことに目をつむってでも“強いリーダー”を待望する国民というのも、案外、少なくないかもしれませんが…。

 なお、1989年のルーマニア革命については、拙著『トランシルヴァニア/モルダヴィア歴史紀行』でも詳しく取り上げておりますので、機会がありましたら、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。


 ★★★ 出版記念パーティーのご案内 ★★★

 『トランシルヴァニア/モルダヴィア歴史紀行』の刊行を記念して、ルーマニア民主革命20周年の記念日にあたる12月22日、下記のとおり出版記念パーティーを開催いたします。当日は、僕のトークのほか、日本におけるジプシー・バイオリンの第一人者、古館由佳子さん(当日は彼女のCDも販売します)による生演奏もお楽しみいただけますので、ぜひ、遊びに来てください。

      トランシルヴァニア/モルダヴィア歴史紀行      古館由佳子 古館由佳子さん

 ・日時 2009年12月22日 18:30~

 ・会場 レストラン・ルーマニア(本格的ルーマニア料理のレストランです。)
     *東京都中野区本町1-32-24(東京メトロおよび都営地下鉄中野坂上駅1分)
      tel: 03-5334-5341 地図などはこちらをご覧ください。
      料理は下の画像のようなイメージで、ブッフェ・スタイルです。
      ルーマニアのワイン(もちろん飲み放題)も出ます。

       ルーマニア料理

 ・会費 7000円(『トランシルヴァニア/モルダヴィア歴史紀行』1冊つき)
     *当日会場にてお支払いをお願いいたします。

 ・参加ご希望の方は、12月18日までにキュリオマガジン編集部まで、電子メール(info@fujimint.com)にてお申し込みください。たくさんの方々のお越しを心よりお待ちしております。

 
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 2001年のシリーズ第1巻『濫造濫発の時代』から9年。<解説・戦後記念切手>の最終巻となる第7巻は、1985年の「放送大学開学」から1988年の「世界人権宣言40周年年」まで、NTT発足や国鉄の分割民営化、青函トンネルならびに瀬戸大橋の開通など、昭和末期の重大な出来事にまつわる記念切手を含め、昭和最後の4年間の全記念・特殊切手を詳細に解説。
 さらに、巻末には、シリーズ全7巻で掲載の全記念特殊切手の発行データも採録。
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