内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 チェウシェスク処刑20年
2009-12-25 Fri 10:58
 ルーマニアの独裁者だったチャウシェスク夫妻が1989年12月25日に処刑されてから、ちょうど20年です。というわけで、きょうはこの1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      チャウシェスク夫妻

 これは、1985年にルーマニアで発行された“黒海=ドナウ運河完成1周年”の記念切手(小型シート)で、運河を背景にテープカットを行うチャウシェスク夫妻の肖像が取り上げられています。

 1971年に中国・北朝鮮を訪問したチャウシェスク夫妻は、かの地で毛沢東ないしは金日成に対する異常な個人崇拝やマスゲームなどを目にし、自国でもこれと同じことを行うべく、帰国後の同年7月、“ルーマニア文化大革命”を発動。秘密警察(セクリタテア)を動員した思想・文化の統制を強めていくことになります。また、物理的にも、北朝鮮の“記念碑的建造物”にならい、国力を無視した大規模土木事業が盛んに行われました。今回ご紹介の小型シートの主題となっている黒海=ドナウ運河もその一つで、1975年から1984年まで、10年の歳月をかけて建造されました。

 チャウシェスク本人もさることながら、国民のさらなる怨嗟の的となっていた妻のエレナは中国への外遊で毛沢東夫人の江青から「指導者の妻はもっと政治にかかわるべきだ」とのアドバイスを受け、以後、江青にならって、自ら政治に関与していくようになり、1980年には第一副首相に就任しました。自称“科学者”としての彼女は奢侈にふけり、他人に書かせた100以上の論文を使って名誉博士号の収集に熱中しましたが、避妊と堕胎手術を禁止し、大量のストリートチルドレンを生み出す原因を作ったほか、保健管理委員会の委員長として「共産主義国家にエイズは存在しない」と主張して予防や感染拡大阻止のための措置を取らず、エイズの蔓延を招くなど、およそ科学者らしからぬ失政を繰り返しました。

 1989年12月17日のティミショアラ事件の後、チャウシェスクは、22日に全土に戒厳令を発し、軍に治安回復を命じましたが、軍は命令を拒否し、かえって装甲車で大統領官邸のある共和国広場に押し寄せます。このため、チャウシェスク夫妻は党本部からヘリコプターで脱出し、リビアへの亡命を企図。しかし、翌23日、チャウシェスク夫妻はルーマニア南部のトゥルゴビシュティで革命政府の救国戦線に逮捕され、25日、6万人の大量虐殺と10億ドルの不正蓄財などの罪で起訴。軍事裁判で銃殺刑の判決が下り、即日処刑されました。

 ちなみに、今回ご紹介の切手の原画を担当したミハイ・マネスクは、チャウシェスク政権崩壊後、民主革命1周年の記念切手の原画も作成しています。まさに、切手の世界における“激動のルーマニア現代史”を象徴する人物といってよいでしょう。

 なお、拙著『トランシルヴァニア/モルダヴィア歴史紀行』では、ルーマニアの近現代史についてもカバーしておりますので、機会がありましたら、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。
 

 ★★★ イベントのご案内 ★★★

 下記の日程で、拙著『昭和終焉の時代』の即売・サイン会(行商ともいう)を行います。入場は無料で、当日、拙著をお買い求めいただいた方には会場ならではの特典をご用意しておりますので、よろしかったら、遊びに来てください。

 1月10日(日) 切手市場 於・桐杏学園(東京・池袋) 10:15~16:30
 詳細はこちらをご覧ください。


 ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★

  総項目数552 総ページ数2256  
  戦後記念切手の“読む事典”(全7巻) ついに完結!

      昭和終焉の時代  『昭和終焉の時代』 日本郵趣出版 2700円(税込)

 2001年のシリーズ第1巻『濫造濫発の時代』から9年。<解説・戦後記念切手>の最終巻となる第7巻は、1985年の「放送大学開学」から1988年の「世界人権宣言40周年年」まで、NTT発足や国鉄の分割民営化、青函トンネルならびに瀬戸大橋の開通など、昭和末期の重大な出来事にまつわる記念切手を含め、昭和最後の4年間の全記念・特殊切手を詳細に解説。さらに、巻末には、シリーズ全7巻で掲載の全記念特殊切手の発行データも採録。

 全国書店・インターネット書店(amazonbk1JBOOKlivedoor BOOKS7&Y紀伊国屋書店BookWebゲオEショップ楽天ブックスなど)で好評発売中!
スポンサーサイト

別窓 | ルーマニア:共産時代 | コメント:2 | トラックバック:0 | top↑
<< 泰国郵便学(5) | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  物騒なクリスマスケーキ>>
この記事のコメント
#1590 明日は我が身の将軍様
チャウシェスクが処刑された時、あのフセインは大きな衝撃を受けて部下にその原因を調査させたらしいですが、そのフセインも結局アメリカに倒されて処刑されました。今や世界に残る邪悪な独裁者はあの国の偉大な将軍様ですが、随分前からいずれチャウシェスクの二の舞になると言われながら相変わらず権力の座に留まっています。もっとも、健康不安には勝てないようで、誰かに倒される前にあの世に逝く公算の方が高いようですが・・・。
2009-12-25 Fri 11:25 | URL | アルファ #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
・アルファ様

 北朝鮮の場合は、大国の緩衝地帯ということもあって、ともかくも存在が消滅してもらっては困るというのが国際社会の意思ですからねぇ。その点が、ルーマニアやイラクとは決定的に違っていますな。個人の感情としては、非常に残念なことと思いますが…。
2009-12-28 Mon 23:47 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/