内藤陽介 Yosuke NAITO
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 『反米の世界史』予告編(8・最終回)
2005-06-15 Wed 01:24
 昨日の日記でもお知らせいたしましたが、いよいよ明日(16日)、『反米の世界史』が配本となります。そこで、今日は最後の予告編として、サダムフセイン政権下のイラクの切手を1枚、ご紹介します。

 湾岸戦争10周年

 この切手は、2001年、湾岸戦争10周年を記念して発行されたものです。我々の感覚からすると、イラクは湾岸戦争で負けたということになりますが、フセイン政権によれば、「アメリカがフセイン政権を打倒できなかったコトを持って、イラクは負けていない」と説明されていました。

 さて、切手をみると、イラクを象徴する鷲が星条旗を引きちぎってイラク国旗を打ち立てているのが、まず、目につきます。もちろん、これはアメリカに対するイラクの“勝利”を表現したものです。

 鷲と並んで、左の上のほうにはエルサレムを象徴する“岩のドーム”が描かれています。これは、フセイン政権の掲げる“リンケージ論”と密接に絡んでいます。

 リンケージ論というのは、簡単にまとめると、次のような主張です。

 イラクは国連決議に従わず、クウェートから撤退しなかったがゆえに、懲罰として湾岸戦争で多国籍軍の攻撃を受けた。しかし、同じように国連決議を無視して、1967年の第3次中東戦争以来、ガザ地区とヨルダン川西岸を占領し続けているイスラエルに対して、国際世論は何も制裁を加えていないではないか。これは、明らかなダブル・スタンダード(二重基準)で、不当である。それゆえ、イラクを公平に扱うというのであれば、クウェートの問題とパレスチナの問題は、リンクさせて解決しなければならない。

 このリンケージ論は、もともと、国際的に孤立していたフセイン政権が、アラブ意諸国の支持を得るため、苦し紛れに発したものという色彩が濃いのですが、一向に解決の兆しが見えないパレスチナ問題に閉塞感を感じていたアラブ世界の一般国民の間では、一定の支持を獲得しています。そして、そうした一般国民の支持が、結果として、国際社会においてフセイン政権を支えていた一要因となっていたことも事実です。

 切手では、鷲の背後に緑色でアラブ世界の地図が描かれていますが、このことは、西側世界の押し付けたダブル・スタンダードに対して断固戦うイラクに対して、アラブ世界は支援を与えるべきだとの意味が込められており、上記のようなアラブ世界の世論をさらに喚起する狙いがあるものと考えられます。

 いずれにせよ、こうした切手が実際に郵便物に貼られて流通していくことで、アラブの人々の間に、アメリカを中心とした西側世界のダブル・スタンダードに対する不信感が醸成されていくことになるのです。

 『反米の世界史』では、この切手を含め、フセイン政権下のイラクの切手を多数取り上げ、この10年間のイラクから見たアメリカと国際社会の諸相を明らかにしています。

 是非一度、お手にとってご覧いただけると幸いです。
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