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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ゾルゲと勲章
2010-01-14 Thu 13:40
 ゾルゲ事件で逮捕された画家の宮城与徳に対して、旧ソ連が1965年に授与を決めた勲章が、きのう(13日)45年ぶりに東京・港区のロシア大使館で遺族に贈られたそうです。というわけで、きょうはこの1枚です。(画像はクリックで拡大されます)

      ゾルゲ(ソ連1965)

 これは、ゾルゲ事件の首謀者、リヒャルト・ゾルゲの生誕70年にあたる1965年にソ連が発行した切手です。
 
 ゾルゲは、1895年、ソ連支配下のアゼルバイジャンの首都、バクーでドイツ人鉱山技師の家に生まれました。

 3歳の時、家族とともにベルリンに帰国した彼は、第一次大戦が勃発すると、1914年10月、ドイツ陸軍に志願しましたが、西部戦線で両足を負傷。入院中に社会主義思想を学び、終戦後はベルリン、キールの大学を経て、1919年にハンブルク大学で政治学の博士号を取取得しました。1919年、ドイツ共産党が結成されるとハンブルク支部に加入し、1924年にはモスクワに渡ってソ連共産党に加入し、軍事諜報部門である労農赤軍参謀本部第4局に配属されました。

 1930年代には、ドイツの有力紙「フランクフルター・ツァイトゥング」の記者という身分を隠れ蓑として、上海で諜報活動を行い、中国各地に情報網を築くことに成功します。朝日新聞記者だった尾崎秀実と知り合ったのは、この時代のことです。

 1932年の第一次上海事変を報道した後、ゾルゲはいったんモスクワに戻りましたが、1933年9月、日本やドイツの動きを探るために「フランクフルター・ツァイトゥング」紙の東京特派員にしてナチス党員として日本に赴任。駐日ドイツ大使を務めたオイゲン・オットの信頼を勝ち取り、最終的に大使の私的顧問の地位を獲得し、近衛内閣のブレーンであった尾崎を通じて収集した日本の情報をモスクワに送っていました。

 スパイとしてのからの最大の“業績”は、①駐日ドイツ大使との関係を利用して、ドイツのソ連侵攻の正確な開始日時を事前に察知し、モスクワに報告したこと、②独ソ戦開始後、日本軍の矛先が同盟国のドイツが求める対ソ参戦に向かうのか、仏領インドシナやイギリス領マレー、フィリピンなどの南方へ向かうのかという点について、日本が南進を決定したことを、いわゆる太平洋戦争の開戦以前にモスクワに報告したこと、の2点となりましょう。このほかにも、日本の武器弾薬、航空機、輸送船などのための工場設備や生産量、鉄鋼の生産量、石油の備蓄量などについて、彼は正確な情報を探知して、モスクワに報告しています。

 ゾルゲのスパイ活動が発覚した発端は、1941年6月に逮捕された日本共産党員の伊藤律が、アメリカ共産党員で当時日本に住んでいた北林トモの名を自供したことで、そこから北林の同志である宮城与徳が逮捕され、芋づる式にゾルゲや尾崎の逮捕につながりました。逮捕されたゾルゲは、1942年に国防保安法、治安維持法違反などにより起訴され、一審によって死刑が確定し、1944年11月7日のロシア革命記念日に巣鴨拘置所にて処刑されました。

 ゾルゲの逮捕後、ソ連政府はゾルゲが自国のスパイであることを否定し続けていました。しかし、スターリン批判を行ったフルシチョフが失脚した直後の1964年11月5日、ソ連政府はゾルゲに対して“ソ連邦英雄勲章”を授与しました。今回ご紹介の切手も、こうした文脈に沿って発行されたものです。なお、印面の下部に描かれている勲章の実物は金星なのですが、切手ではグレーで印刷されています。


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この記事のコメント
#1608
 はじめまして みーふぃともうします。

 有益なきじありがとうございます。

 ひとつしつもんですが ブログ上段の 消印 わたしも
 欲しくなり作りたいのですが ゴム印 でつくられたのでしょうか?  よろしくご指導おねがいします。
2010-01-14 Thu 21:29 | URL | みーふぃ #bxvF113M[ 内容変更] | ∧top | under∨
#1609
私は読売新聞の記事を読んでどのような理由で叙勲されたのか明記されていないので何だかよく分からんニュースだと思いました。
宮城氏の故郷の「沖縄タイムス」の記事には以下の文がありました。
『勲章と表彰状は1965年に宮城に与えられていたもので、ドイツによる旧ソ連への侵攻以降の「大国民戦争」(ロシアでの呼称)の関係者に贈られた「2級勲章」。ロシア大使館側は授与の理由を「同戦争に対応し、平和のために活動したため」』
また、親族は宮城氏の名誉回復となりうれしい、と言っているそうです。
ゾルゲ事件の事実関係は別として、「美談」として伝えられるニュースなのか?
日本政府からの叙勲ではもちろん無いわけで、「名誉回復」と言えるのか・・・
マスコミは、報道するのならもう少し掘り下げてほしいなと思う今日この頃でございます。
話は逸れますが、「R25」という無料雑誌がありますが、見出しに惹かれて読むと、どうも中途半端な記事や、あたりまえのことがもっともらしく記事となっている様に感じ、読む度に欲求不満になってしまいます。
R45世代としては読む資格がないのか!?
無料なのであの程度?なのか、あの程度が日本の標準となっているのか?
やはり日本の未来は・・・とタダの雑誌を読んで悲観してしまいます。
その点、先生のブログはタダで毎日目から鱗、ありがたく拝読させていただいております。
末筆ですが、本年もよろしくお願い申し上げます。
2010-01-14 Thu 23:03 | URL | えびす #mQop/nM.[ 内容変更] | ∧top | under∨
 皆様、コメントありがとうございます。

・みーふぃ様
 消印のデザインは、air-mailというテンプレートを利用しています。僕自身はどちらかというとパソコン音痴なので、共有テンプレートを探したのですが、いろいろカッコいいのもありますので、探してみたら、お好みのモノもきっと見つかると思いますよ。

・えびす様
 こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします。
 ゾルゲ事件が純然たる冤罪ならともかく、スパイ行為はスパイ行為ですからねぇ。美談に仕立てられるのは、どうにも変な話ですよね。
2010-01-18 Mon 19:55 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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