内藤陽介 Yosuke NAITO
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 世界漫郵記:ペンニャの丘周辺(前篇)
2010-02-25 Thu 12:28
 『キュリオマガジン』2010年3月号が出来上がりました。僕の連載「郵便学者の世界漫郵記:マカオ篇」は、今回と次回の2回に分けてペンニャの丘周辺を取り上げます。その記事の中から、今日は、こんなモノをもってきてみました。(以下、画像はクリックで拡大されます) 

      港務局大楼     港務局大楼(実物)

 左は港務局大楼のアーチとバルコニーを図案化した1984年の切手で、右側は建物の実物です。

 中国語では一般にマカオのことを“澳門”と呼びますが、これは、マカオ半島南側のペンニャの丘(西望洋山、南台)と北側のギアの丘(東望洋山、北台)のふたつの丘を門柱に見立て、その間にある“澳”(入江)という意味でつけられた名前です。

 その一方の門柱にあたるペンニャの丘は、ポルトガル人が命名した“マカオ”という地名の由来とされる媽閣廟のすぐ北側にありますが、廟の背後から、内港側の大通りではなく、一本入った媽閣斜巷の坂道を少し上っていくと、ほどなくして見えてくるのが港務局大楼の建物です。

 1874年に建てられた港務局大楼は、もともとは、ゴアから派遣されたムーア人(漢字で書くと摩爾人)の営舎で、200人以上が収容可能だったといわれています。

 一般にムーア人というと、一般に北西アフリカのムスリム(イスラム教徒)、特に、非アラブのベルベル人を指すことが多いのですが、マカオでは単に(インド出身の)ムスリムの意味で使われることが多いようです。

 マカオに本格的にインド兵が上陸したのは、1840年のアヘン戦争のときが最初です。ただし、このときのインド兵はイギリスが派遣したもので、彼らは、清朝とポルトガル人居留地としてのマカオとの境界にあった“関門”を占領しました。

 ポルトガルはアヘン戦争の直接の当事者ではありませんでしたが、清朝の衰退を目の当たりにして、マカオを自国の完全な植民地にしようと画策し、1862年、第2次アヘン戦争の講和条約として結ばれた天津条約でマカオの統治権を清朝に認めさせ、1887年の中葡友好通商条約により、マカオを第三国に譲渡しないことを条件に、ポルトガルがマカオを永久に占有することを清朝に認めさせました。こうして、ポルトガルによるマカオの植民地化が完成します。

 港務局大楼が建設された1874年は、まさに、ポルトガルがマカオの支配を強化していく過程にあたっており、ポルトガル当局としても、社会の変動期として治安の維持に神経をとがらせていました。このため、インドのムーア人がマカオに動員され、主として警察業務にあたることになり、彼らの営舎が必要となったわけです。

 こうして、イタリア人建築家カッスートの設計による営舎が建てられました。営舎は、花崗岩の強固な石組みの基盤にレンガが積み重ねられており、長さ67.5メートル、幅37メートル。淡いクリーム色と白を基調とした漆喰の壁が美しい。ムーア人が住むことを意識して、シンプルなネオクラシック様式を基調としつつも、通りに面した回廊と外壁のアーチが、どことなく、イスラム世界のモスクをイメージさせる風貌となりました。

 現在、この建物は港務局ならびに海上警察のオフィスとして使われており、それゆえ“港務局大楼”と呼ばれているのですが、ポルトガル語では、いまなお“ムーア人の営舎”を意味するクァルテウ・ドス・モウロス(Quartel dos Mouros)の名で通っています。なお、港務局大楼はオフィスとして使用されているため、毎年5月20日の“港務局の日”の前後に公開される以外は、一般の観光客は、外観と回廊は見学できるものの、建物の中に立ち入ることはできません。

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