内藤陽介 Yosuke NAITO
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 イルカの食文化
2010-03-09 Tue 22:34
 きのう(8日)発表された第82回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞は、和歌山県太地町の伝統イルカ漁を隠し撮りした作品「The Cove」が受賞しました。というわけで、きょうはこの1枚を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

      英領南極・イルカ

 これは、1985年に英領南極で発行された“初期の自然学者”の27ペンス切手で、ダンダラカマイルカとジャン・ルネ・クォワの肖像が描かれています。

 ダンダラカマイルカはカマイルカ属の一種で、南極圏から亜南極圏にかけての南の冷たい海域で生息しています。1820年に描かれた図版に基づき、1824年、クォワらによって新種であることが確認されましたが、現在まででもたった6体の完全な標本と14個体分の部分標本が調べられているだけという珍獣です。

 さて、中世ヨーロッパでは、イルカの肉は食用として好まれ、串焼きやプディング、パイなどに用いられてきました。特に、イングランドの宮廷では17世紀頃まで、イルカの肉が供されていたという記録もあります。また、メルヴィルの『白鯨』にも「イルカの美味はよく知られている」との記述がありますし、19世紀のアメリカの捕鯨船の船員もイルカの肉を食べていたという記録があります。おそらく、切手に取り上げられたクォワも、イルカを食べたことはなくても、イルカを食べる習慣については知っていたでしょうし、そのことについて何もネガティヴな感情は持っていなかったと思われます。

 したがって、今回のアカデミー賞受賞作「The Cove」で問題とされた和歌山県太地町の伝統イルカ漁も、世界の各地で見られたイルカの食文化の一つであり、適正に行われている限りにおいて、なんら非難されるべき筋合いのものではありません。それゆえ、イルカ漁を正面から真摯に取り上げたドキュメンタリー映画を作るのであれば、そもそも隠し取りなどという卑劣な手段をとる必要などないはずです。また、問題となった映画では、ドキュメンタリーには不可欠の冷静かつ客観的な視点は微塵も感じられず、あらかじめ、日本のイルカ漁は悪であるという先入観の下、「年2万3千頭が不必要に殺される」「水銀で汚染されたイルカ肉が学校給食に使われている」といった悪意に満ちた表現(しかも、事実誤認の部分も少なくない)が随所に挿入されています。

 さらに、この映画の背後には、環境テロリスト団体のシー・シェパードが関与しており、問題はきわめて深刻です。

 たとえば、シー・シェパードのポール・ワトソンは「The Cove」について「シー・シェパードが、日本のイルカの大量殺戮について、一緒に関われたことは誇りに思う」と公にコメントしています。これが、彼らの一方的な法螺ではないことは、たとえば、シーシェパードは2003年に太地町に活動家を送り込み、イルカ漁の撮影や漁の妨害を行っていたことからもあきらかでしょう。ちなみに、このとき、一味は沖合にある網を刃物で切り、15頭のイルカを逃がしたことで、和歌山県警に威力業務妨害容疑で逮捕されましたが、裁判の判決は罰金刑というあまりにも軽いものでした。釈放に際して、犯人たちは「3週間の拘束で、イルカの命が救われるのなら、私たちは幸せだ」などとうそぶいたのだそうです。

 いわゆる911事件の後、“テロとの戦争”を言い出したのは、アカデミー賞の開催国であるアメリカです。そのアメリカの映画人たちが、率先してテロリストとつながりのある映画に賞を与え、ほめたたえるとは、いったい、どういう神経をしているのでしょうか。テロないしはテロ支援国家という理由で、軍事攻撃を受けたアフガニスタンやイラクの国民に対して、このことをどのように説明するのか、ぜひとも聞かせていただきたいものです。

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