内藤陽介 Yosuke NAITO
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 “漢江の奇跡”の原資
2010-07-08 Thu 09:05
 きのう(7日)、仙谷由人官房長官が記者会見で、日韓基本条約(1965年締結)で韓国政府が日本の植民地をめぐる個人補償の請求権を放棄したことについて「法律的に正当性があると言って、それだけで物事は済むのか。(日韓関係の)改善方向に向けて政治的な方針を作り、判断をしなければいけないという案件もあるのではないかという話もある」と述べ、政府として新たに個人補償を検討していく考えを示したそうです。というわけで、きょうはこの1枚です。(画像はクリックで拡大されます)

      韓国・第2次五カ年計画(インターチェンジ)

 これは、韓国が第2次5ヶ年計画(1967-71)宣伝のために計画期間中の1968年に発行した切手で、インターチェンジが描かれています。

 1961年の“5・16革命”で政権を掌握した朴正熙は、政権掌握以前から日本との国交正常化の必要性を痛感していました。それは、経済開発のためには外資が必要であり、そのためには、アメリカに次ぐ大口の出資者として日本を引き寄せなければならなかったためです。

 このため、朴は政権掌握早々、日本との関係改善にむけて積極的に動き出し、はやくも1961年11月には、社会的な混乱が続く中、訪米の途上でみずから日本に立ち寄り、日本の首相・池田勇人と会談して日本との国交正常化に意欲を示しています。

 両国の国交正常化交渉の最大の難所は、いわゆる賠償問題でした。すなわち、自らを“対日戦勝国”であるとして、戦争賠償金を求める韓国側に対して、日本側は「韓国は合法的に日本の領土であったのであり、韓国と日本が交戦状態にあったことはない」としたうえで、韓国に対しては賠償を支払う義務は全くなく、むしろ、韓国独立に伴って放棄せざるを得なかった日本資産の補償を求める権利があると反論。李承晩の時代には、両国の主張は平行線をたどっていました。

 ところで、1963年に朴正熙政権が軍事政権から第3共和国に移転した時点で、韓国経済は危機的な状況にありました。すなわち、軍政時代の1962年度にスタートした経済開発5ヵ年計画(第1次5ヶ年計画)は、年平均7.1%の経済成長を目標としていたものの、実際には資金の不足とインフレの進行により目標を達成できずにいたばかりか、1963年は凶作のため米価が高騰し、これに引きずられるかたちでインフレが増進し、対外収支も悪化していたためです。

 このため、朴政権は、外資導入の手段として日本との国交正常化を何にもまして急ぎ、ともかくも日本からの資金援助を得るため、賠償問題を、韓国側の“請求権”に応じ、無償経済協力3億ドル、政府借款2億ドル等を日本側が支払うという形式をとることで、大筋での決着にこぎつけます。賠償ではなく請求権という語が用いられたのは、戦争による被害の賠償ではなく、植民地時代に累積した債権を韓国側が請求するということで政治決着がはかられたためでした。なお、この中には、いわゆる従軍慰安婦を含め民間人への補償も全て含まれています。じっさい、解放後に死亡した者の遺族、傷痍軍人、被爆者、在日コリアンや在サハリン等の在外コリアン、元慰安婦らは補償対象から除外したのは、ほかならぬ韓国政府です。

 ちなみに、当時の韓国の国家予算は約3.5億ドルですから、“請求権”によって得られた資金が、韓国にとっていかに巨額のものであったか、お分かりいただけると思います。こうした日本からの資金と、ベトナム戦争に派兵したことによって得られたアメリカからの経済援助をもとに、韓国政府は道路やダム・工場の建設などインフラや企業に集中的な投資を行い、“漢江の奇跡”と呼ばれた高度経済成長を実現しました。それゆえ、“漢江の奇跡”の象徴して、しばしば切手にも取り上げられた高速道路やインターチェンジなども、もとをただせば、そのかなりの部分が日本からの資金によるものといえます。

 こうした経緯を考えれば、日韓基本条約に伴って日本から得た資金を、当時の韓国政府が個人補償に使わなかったからといって、それは韓国政府の判断(その判断が大局的にみれば誤っていなかったことは、その後の歴史が証明しています)によるもので、わが国がとやかく言うべき筋合いのものではありません。ましてや、韓国側から何らかの具体的な援助の要請があり(そういえば、ワールドカップのスタジアム建設費用も、最終的には日本がかなりの金額を援助しましたね)、その是非を議論をするというのならともかく、国際法上は完全に決着した“個人補償”の問題を、わざわざ、日本側が蒸し返すというのもおかしな話です。にもかかわらず、財政状況が厳しく、消費税の増税がホット・イッシューとなっている中で、あえて我々の血税を投入して新たな“個人補償”を検討するということは、そのことによって、よっぽどおいしい思いをする政治家がわが国には少なからずいるんでしょうな。やっぱり。


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この記事のコメント
民主党の売国政策は以前から目に余るものがありましたが、遂に中国に次いで大好きな韓国にも売国政策を始めようとしています。しかし、韓国への個人賠償などを言い出せば、それでなくても貰えるモノは何でも貰う卑しい朝鮮人(韓国人)の事ですから、いくらカネを吹っ掛けられるか分かりません。長年執拗に日本に賠償を求めている自称元従軍慰安婦のバアさん(実際はただの売春婦)を始め、日本に強制徴用されたと裁判を繰り返している連中等、日本から賠償(と言うよりカネ)をせびり取ろうとしている韓国人は大勢います。そんな連中に言われるままにカネを出していたらいくらカネがあっても足りません。それでなくても民主党はカネも無いのにバラ撒き福祉をやって批判されているのに、この上韓国にも個人補償までしようとするのですから怒りを通り越して虚無感を感じます。韓国にも媚を売りたくてしょうがない民主党は消費税を上げてそのカネを大好きな韓国人に“上納”したいんですかねえ・・・(嘆)。
2010-07-08 Thu 10:30 | URL | アルファ #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 アルファ様

 まぁ、本当に必要な支援を行い、それで感謝してもらえるのなら、支払う価値はあるんですけどねぇ。

 常々思うのですが、李承晩の時代に、賠償云々などといわず、韓国側が「朝鮮戦争で大打撃を受けたのでなんとか復興支援をしてくれ」とストレートに頭を下げてきたら、結果的に、日本はもっと巨額の支援をしなければならなかったでしょうし、その後の歴史もだいぶ変わってきたんじゃないかと思います。まぁ、そうできないのが問題ではあるのですがね。
2010-07-13 Tue 10:42 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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