内藤陽介 Yosuke NAITO
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 “日韓併合”の切手
2010-08-22 Sun 19:13
 1910年8月22日に漢城府(現ソウル)で「韓国併合ニ関スル条約」が調印されて、きょうでちょうど100年です。というわけで、きょうはこんなモノをもってきました。(画像はクリックで拡大されます)

         解放切手銘版

 これは、1946年5月1日、アメリカ軍政下の南朝鮮(大韓民国はまだ発足していません)で発行された“解放切手”10銭の銘版つき田型です。

 米軍政下の南朝鮮で発行された最初の正刷切手である解放切手は、名目上は“(米軍による南朝鮮)解放の記念切手”でしたが、総計4470万枚発行され(うち、1946年の製造数は3000万枚)、実質的に通常切手として用いられました。

 当時の南朝鮮内には、これだけの量の切手を短期間に確実に製造しうる印刷所はありませんでしたから、解放切手は、デザイナーの金重鉉がソウルで作成した原画をもとに、日本の印刷局の彫刻課長・加藤倉吉が原版を彫刻し、印刷局で印刷するという方式で調製されました。ただし、当時は日本国内でも、切手には目打や裏糊がないのが当たり前でしたから、解放切手も日本で印刷された後、目打作業は現地で行われています。

 このため、解放切手の銘版は“大日本帝国印刷局製造”となっていましたが、今回ご紹介のマテリアルでは、南朝鮮で穿孔された目打が大幅にずれてしまったため、銘版の“大日本帝国印”の部分が右下の切手の印面に入っています。1枚の切手上に“(解放)朝鮮”のハングル(右書き)と日本の文字が同時に入っている“日韓併合”切手といってもよさそうです。

 さて、誰しも外国人に支配されるのは嫌なものです。しかし、不愉快ではあっても、一定以上の年月の植民地支配を受けていれば、好むと好まざるとにかかわらず、植民地側が宗主国の影響を受けるのは避けられませんし、独立した植民地は植民地時代の遺産の上に、彼ら自身が努力することによってしか、新国家を建設することができません。

 韓国の現代史は良くも悪くも“日帝36年”と称される日本統治時代の遺産の上に成立しています。おそらく、当時の朝鮮人(日本統治下の正式名称は“朝鮮”です)の多くは、内心では、日本人の支配下に置かれていることを不快に思っていたことでしょう。したがって、日本の支配下でインフラ整備が進み、教育・医療水準が飛躍的に向上したことが事実であったとしても、それを日本人が「してやった」といえば、喧嘩になるのは避けられません。

 しかし、当時の朝鮮人の中には、自分たちを支配している日本から学ぶことで朝鮮の発展や独立につなげていこうと真摯に努力を重ねていた人々も少なくありませんでした。というよりも、そうした日本時代に教育や職業訓練を受けた人々こそが、日本統治時代の遺産としてのインフラや社会システムとともに、1945年以降の韓国の国家建設を支えてきたことは、まぎれもない事実です。その意味では、“日帝36年”を単なる暗黒時代として全面否定することは、実は、韓国とその現代史を根幹から否定するということになってしまいます。それゆえ、過去の朝鮮統治に対して日本人が卑屈になることは、かえって、日本から学び、韓国の国家建設に携わった人を愚弄することになりかねません。

 今月10日、日韓併合100年に際して発表された首相談話は「植民地支配がもたらした多大な損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明する」との内容でした。この談話では“日帝36年”は全面的に否定されるということになるのでしょうが、ということは、当然、韓国の国家建設に従事した“親日派”も断罪されるということなんでしょうから、ひどい話です。

 また、国際社会の常識でいえば、損害に対してお詫びするということは、追加の補償なり賠償なりを支払うという意味になりますが、そうだとすると、1965年の日韓基本条約をもひっくり返すことになりかねません。両国間の補償問題は日韓基本条約で完全に解決していますから、追加の補償なり賠償なりというのは全く筋の通らない話です。仮に、条約に伴って日本から得た資金を、当時の韓国政府が個人補償に使わず、インフラ整備と重要産業への集中的な投資に回し“漢江の奇跡”と呼ばれた高度経済成長を実現したことが悪かったとでもいうのなら、それは内政干渉にほかなりません。まぁ、わが国の教科書検定にクレームをつけるという内政干渉を韓国はしばしばやっていますから、それに倣ったということなのかもしれませんがね。

 いずれにせよ、韓国に対する安易な贖罪意識から発せられた首相談話は、実は、その本質において、韓国の国家建設の源流を否定し、“漢江の奇跡”までをも否定しています。この点において、談話は韓国の現代史を愚弄した実に非礼なものでしかありません。こうした“非礼”の代償がいかに高くつくか、いい加減、政治家諸氏にも学習してもらわないと困りますな。


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この記事のコメント
#1774 謝罪などしないのが普通
昨日のNHKの「日曜討論」で先の菅の談話について大学の先生方がコメントしていましたが、その先生方は異口同音に「植民地支配の謝罪などしないのが(国際的に)普通」と言っていました。確かに、日本より遥かに多くの植民地を有していたイギリスやフランスが今は独立国となっているアジアやアフリカ諸国にかつての植民地支配を謝罪したなんて話は聞いた事がありません。日本だけが妙な贖罪意識から相変わらず中国や韓国に「謝罪と反省」を繰り返していますが、謝罪や反省の次には当然賠償という生臭い話が待っています。それでなくても貰えるモノは何でも貰う卑しい中国や韓国(北朝鮮も)が賠償という見返りを求めないはずがありません。後先を考えずに軽々しく発言する愚か者の多い民主党の連中は中国や南北朝鮮に安易に謝罪と反省を示す事がいずれとんでもない見返りを要求されるという事実をもっと認識すべきです。
2010-08-23 Mon 10:35 | URL | アルファ #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
・アルファ様

 おっしゃる通り、謝罪などしないのが国際常識です。そして、謝罪をすれば、当然、先方からの要求が待っているというのも、これまた常識です。まぁ、中韓の立場に立てば、それが国益なのですから、国際常識をわきまえずに謝罪した日本が悪いということになるのでしょう。

 と、ここまでは多くの人が指摘しているとおりなのですが、今回の記事では、彼らの贖罪意識って何なんだろうという素朴な疑問をぶつけてみたつもりです。

 つまり、自虐派の人たちは、自分たちが謝罪することである種の精神的満足を得られるのかもしれませんが、そうした謝罪は、僕には、謝罪相手をバカにしているように見えて仕方がないのです。

 日本統治時代の現在的な意味を問うというのなら、せめて、1945年以降の朝鮮半島の歴史をきちんと勉強してほしいものです。そうすれば、彼らが自己満足のために行っている謝罪なるものが、わが国の国益を棄損するだけでなく、いかに韓国と韓国人を愚弄するものであるのか、すぐにわかると思うんですがねぇ。

 まぁ、長くなりそうなので、きょうのとことはこの辺で。
2010-08-23 Mon 11:13 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
#1778 バカ内閣はゴミ箱へ
昔、村山と言う管に輪をかけたようなバカ総理がいましたね。謝罪旅行と称してアジアを回りましたがマハティール首相に過去の謝罪など必要なし、何故謝罪するのか理解できないとまで言われ、それよりも現在未来の話をするべきだと逆に説教までされる始末でした。そして何の実績もないまま退陣しました。管内閣も経済そっちのけで謝罪と内ゲバです。どうやら同じ末路を辿りそうです。
2010-08-23 Mon 16:31 | URL | 一匹狼 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
・一匹狼様

 管内閣や民主党の末路がどうなろうと知ったことではないのですが、国民を道連れにするのだけは勘弁してもらいたいものです。
2010-08-26 Thu 11:07 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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