内藤陽介 Yosuke NAITO
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 目打があってもなくても④
2010-09-30 Thu 11:28
 ご報告が遅くなりましたが、東京郵便切手類取引所(TOPHEX)による『スター☆オークション』(10月2日実施)のカタログ第12号ができあがりました。僕が担当しているオマケの読み物は、ジョルジュ・バルトーリの郵趣コラム集 Avec ou sans dents (邦題『目打があってもなくても』)に所収のコラムをご紹介する第4回目。今回は、下の切手にまつわるエピソードを取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)

        ボヘミア・モラビア1     ボヘミア・モラビア2

        ボヘミア・モラビア3     ボヘミア・モラビア4

 ドイツとオーストリアに隣接したズデーテンラントはドイツ系住民が多く、ドイツによる領土要求の結果、1938年9月30日に行われたミュンヘン会談によって、ドイツへの割譲が決定されます。ミュンヘン会談ではハンガリー王国やポーランドへの係争地域の割譲も求められたため、チェコスロヴァキア国内の民族運動は激化。5ヵ月後、チェコスロバキア東部のスロヴァキアとカルパティア・ルテニアが独立を宣言し、スロヴァキア共和国とカルパト・ウクライナ共和国が成立。さらに、残ったチェコ地域に関しては、ドイツがこれを併合し、1939年3月15日、ボヘミアとモラビアの主要部分にベーメン・メーレン保護領(ボヘミア・モラビアのドイツ語読み)を設置しました。

 こうして、チェコスロヴァキアが解体されるなかで、占領当局は新たに発足した保護領の正刷切手制作をチェコ人に命じます。命令を受けたデザイナーと彫刻家は、おとなしく占領当局の命令に従うふりをして、チェコスロヴァキアの復活を願う意図を込めて、さまざまな仕掛けを施しました。たとえば。上の4枚の切手の雲や林の輪郭を左下のようにつなげると、ドイツによって消滅させられたチェコスロヴァキア地図の輪郭が浮かび上がるようになっています。また、切手の随所には、チェコスロヴァキア共和国初代大統領のマサリクや後継大統領のベネシュ、国民的英雄であったミラン・シュテファニク将軍の肖像なども隠されています。(右下は、その一例で、50K切手に隠されている“顔”の部分です)

        チェコスロヴァキア地図     50Kの顔

 ボヘミア・モラビアの切手は未使用は大量に残されており、安価に入手できますので、チェコ・レジスタンスの隠された痕跡を探して遊んでみるのも面白いかもしれません。

 それにしても、わが日本政府は、北方領土や竹島、尖閣諸島など、領土問題で弱腰の姿勢を取り続けており、切手というメディアを通じて自国の領土を内外に宣伝するという、当たり前のことができない状況が何十年も続いています。こういう情けない状況に対して、切手デザイナー諸氏は、今回ご紹介したボヘミア・モラビアの事例を見習って、せめて、切手の中に他国の侵略を受けている地域の地図のシルエットなどを入れてくれると良いんですがねぇ。まぁ、デザイン上の理由か何か知りませんが、択捉島を外した日本地図の切手を何度も発行してきたような人たちに、あまり期待はできんでしょうな。

 なお、そうした日本の領土問題と切手政策については、拙著『事情のある国の切手ほど面白い』でもいろいろと取り上げておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。

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