内藤陽介 Yosuke NAITO
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 泰国郵便学(11)
2010-12-26 Sun 10:02
 財団法人・日本タイ協会発行の『タイ国情報』第44巻第6号ができあがりました。僕の連載「泰国郵便学」では、今回は“大東亜戦争”の勃発とタイの失地回復に関する話題を取り上げました。その中からこんなモノをご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

        シャン地方加刷(高額)

 これは、1943年10月1日に発行されたシャン地方切手のうち、シャン族の女性を描く10セント切手です。

 1941年12月8日、日本は米英に宣戦を布告し、“大東亜戦争”が勃発します。

 真珠湾攻撃の成功やイギリスの戦艦、プリンス・オブ・ウェールスならびにレパルスの撃沈などの戦果が報じられると、対日協力の見返りとして、日本の敵国となったイギリスに奪われた失地の回復を期待したタイは日本との交渉を進め、12月11日、日泰攻守同盟条約を調印。1942年1月25日、タイは英米に対して宣戦布告します。

 参戦に伴い、ピブーン政権は同盟条約に基づき、英領ビルマへの進攻を望みましたが、日本側はこれをなかなか認めず、1942年5月になって、ようやく、シャン州のモンパンやケントンなどへの進撃を認めただけでした。

 また、タイ領内に進駐した日本軍はタイ・バーツを日本円と等価に切り下げさせて物資を極端な安価で調達したほか、船舶をはじめとする敵性資産を独占的に接収してタイに返還しないなど、タイの同盟国としての立場を軽んじるような行動をとりました。さらに、日本軍の進駐により深刻なモノ不足が生じ、タイ国内のインフレも増進。このため、日本軍が東南アジア各地を破竹の勢いで進撃し続けていた1942年半ばには、早くも日本に対する期待感は急速にしぼんでいくことになります。

 1943年に入り日本の戦況が悪化すると、ピブーン政権は露骨に日本とは距離を置くようになりますが、これに対して、日本側はなんとかしてタイの対日協力を確保しようと、遅ればせながら、タイの悲願である失地回復を具体的に検討しはじめます。

 すなわち、1943年5月31日の御前会議で決定された「大東亜政略指導大綱」では、“対泰方策”として、①相互協力ノ強化、②マライ失地回復、③国境ノ調整などの方針が決定され、7月4日、東條英機首相がみずから訪タイし、マライ北部のケダー(クダとも)、ケランタン(クランタンとも)、トレンガヌ、ペルリス(プルリスとも)の4州とシャン地方のモンパン、ケントンの2州をタイ領に編入することを約束。これを受けて、8月20日、「『マライ』及『シャン』地方ニ於ケル『タイ』国領土ニ関スル日本国『タイ』国間条約」が調印されました。

 この条約にしたがい、10月19日、日本軍の占領下にあったマライ北部のケダー、ケランタン、トレンガヌ、ペルリスの4州がタイに返還されます。一方、同条約では、旧マライ4州同様、モンパンとケントンの2州はタイに返還されましたが、残りのシャン地方の所属は未定のままでした。

 すなわち、1943年5月の「大東亜政略指導大綱」に先立ち、日本側はビルマの対日協力を得るため、同年3月10日に『緬甸独立指導要綱』を決定。この方針に従い、同年8月1日、ビルマでは軍政が廃止され、バーモを首班とするビルマ国が独立します。ただし、同国の独立と同時に日本ビルマ同盟条約が締結され、ビルマは連合国へ宣戦布告し、日本軍の駐留はその後も終戦まで続けられ、タイならびに中国と接するシャン地方に関しては、戦略上の要衝であるとの理由から、日本軍が引き続き軍政を継続することになりました。

 このため、シャン地方では、独立ビルマとは別の郵政機関を組織する必要が生じ、今回ご紹介しているような独自の切手が発行されました。このシャン地方切手は10月1日に発行されましたが、その直前の9月25日、「『シャン』地方等ニ於ケル『ビルマ』国領土ニ関スル日本国『ビルマ』国間条約」が調印され、モンパン、ケントンの2州を除くシャン州(現在の南北シャン、ワーに加え、カヤ州がその範囲に相当する)は条約調印から90日以内に独立ビルマの領土に編入されるものとされます。

 なお、モンパンとケントンの2州がタイに返還されたのは10月19日のことですから、理論上は、10月1日から18日まで、これら2州でもシャン地方切手が使用されていてもおかしくないのですが、その実物を入手するのは絶望的なまでに難しいでしょうねぇ。


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