内藤陽介 Yosuke NAITO
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 44歳になりました
2011-01-22 Sat 15:33
 私事ながら、本日をもって44歳になりました。だからどうしたといわれればそれまでなのですが、せっかくの機会ですから、こんな切手をもってきてみました。(画像はクリックで拡大されます)

        ベルギー・誕生日

 これは、2006年にベルギーで発行されたグリーティング切手帖で、“HAPPY BIRTHDAY TO YOU”の文字の切手とバースデーケーキの切手が交互に収められています。

 1830年にオランダから独立したベルギーでは、ながらく、北部オランダ語圏のフランデレンに対して南部フランス語圏のワロンが優位に立つという構造が続いていました。これは、19世紀の独立当初は、フランス語が権威ある国際語・文明語だと見なされており、ベルギーの指導者層がフランス語を話していたという歴史的経緯によります。

 このため、人口的に多数派を占めるフランデレンは常に不満を持っており、1944年9月にナチス・ドイツの占領下から解放された後、戦後復興のためにワロンとフランデレンの宥和が重要な課題となると、フランデレンへの配慮として両地域を分ける“言語境界線”が公式に設定され、フランデレンではオランダ語が公用語とされました。ただし、首都ブリュッセルは、言語境界線の北側にあるが、オランダ・フランス両語が公用語とされています。

 ところが、戦後の産業構造の変化により、工業・サービス業を中心とするフランデレンが目覚しい経済成長を遂げたのに対して、石炭・鉄鋼業を中心としていたワロンは衰退。これにより、両者の力関係は徐々に変化し、フランデレンの発言力が向上していくことになります。

 じっさい、ワロンでは失業率がフランデレンのほぼ2倍にのぼっていますが、言語の違いから、労働者の需給にギャップが生じても、南北間の人的交流が難しい上、フランデレンの中でワロン語(ワロンの日常言語だが、公用語のフランス語とも異なる)がある程度通用する首都のブリュッセルでも、単純作業の低技能労働は安価な移民労働力によってまかなわれることが多いため、失業問題はなかなか改善されないままになっています。さらに、両者の経済力の差を反映して教育水準も異なっており(当然、フランデレンのほうが高い)、そのことが、ますます南北の格差を拡大させています。

 こうしたことから、1970年以降、ベルギーでは4度の憲法改正が行われてフランデレンの地位向上がはかられ、ついに1993年の憲法改正により、単一国家の政体は放棄され、連邦制に移行しました。それでも、両者の溝はなかなか埋まらず、一部ではベルギー国家そのものを解体して、フランデレンはオランダと、ワロンはフランスと、それぞれ合併したらどうかという議論さえ登場したほどです。

 今回ご紹介の切手にも、こうした状況はしっかりと反映されており、切手帖に収められている切手が国内向けの50グラムまでの書状料金に相当するものであることはオランダ語とフランス語で併記されているものの、どちらかの言語を優先すれば、別の言語圏から批判されるため、切手本体には、国名表示(ベルギー切手の国名表示は、フランス語のBELGIQUEとオランダ語のBELGIEを交互に配することになっています)以外には、どちらの言語も記されておらず、英語で“HAPPY BIRTHDAY TO YOU”と表示されているだけになっています。

 なお、ベルギーでの言語間対立については、昨年刊行の拙著『事情のある国の切手ほど面白い』でも1章を設けて解説しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。

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この記事のコメント
#1934 誕生日おめでとうございます
はじめましてです。
ベルギーと言えばチョコやフランダースの犬やアダモと言うイメージがありますね。しかし言語の問題がここまで深刻だとは知りませんでした。連邦制になってもやはり言葉と言う大きな壁はなかなか崩せないなと思ってしまいました。
2011-01-23 Sun 11:04 | URL | ナンシ #HLdkuL/2[ 内容変更] | ∧top | under∨
 ナンシ様

 ベルギーといえば、僕はポアロですかね。彼はイギリスでフランス人と間違えられるよく場面が出てきますが、これは、オランダ人と間違えようにもイギリス人側が言語を把握できないということによるのかもしれませんね。とまれ、これからもよろしくお願いします。
2011-01-31 Mon 17:29 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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