内藤陽介 Yosuke NAITO
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 泰国郵便学(12)
2011-03-04 Fri 14:03
 ご報告が遅くなりましたが、財団法人・日本タイ協会発行の『タイ国情報』第45巻第1号ができあがりました。僕の連載「泰国郵便学」では、今回と次回の2回に分けて、第二次大戦中のタイ俘虜収容所の郵便物についてご紹介します。その中から、きょうはこの1枚です。(画像はクリックで拡大されます) 

        泰・第2分所宛てカバー

 これは、1944年1月に英国から泰俘虜収容所第2分所宛の郵便物です。

 タイのバンコクとビルマ(ミャンマー)のラングーン(ヤンゴン)を結ぶ鉄道の建設は、20世紀初頭、ビルマを支配していたイギリスの下でいくつかのルートが検討されたものの、地形が険しく、断念されていたという経緯があります。

 日本軍は、ビルマ戦線の物資輸送のためのルートを確保するため、イギリスがかつて検討したルートの一つを継承するかたちで、ビルマのタンビュザヤとタイのノーンプラードックを結ぶ415キロの鉄道建設を計画し、これに既存の鉄道路線をつなげることで、タイ=ビルマ間の輸送ルートを確保することとし、タイ側と正式な建設協定を締結。1942年9月から本書き的な工事を開始します。

 完成までには5年の工期が必要との予測もありましたが、日本軍は、鉄道隊と旧国鉄職員の軍属およそ1万2500名を派遣し、6万人を越える連合軍捕虜(英国3万、オランダ1万8000、オーストラリア1万3000、米国700)を労働者として投入。さらに、少なくとも20万人を越えるアジア各国の労働者を動員して、突貫作業の末に、同年10月25日、工事を完成させました。

 最も早い時期に鉄道建設に動員された捕虜の例としては、1942年5月、シンガポールのチャンギ収容所からビルマのモールメン(モーラミャイン)に移送された3000名のオーストラリア兵の例があります。彼らは当初、ビルマ域内での空港建設を行いましたが、後にタイ側に移送され、バーンポーンとカーンチャナブリーでの捕虜収容所の建設に従事しました。

 1942年秋からは、多数の連合軍捕虜がスマトラ、ジャワ、シンガポールから動員され、ビルマ側のタンビュザヤとタイ側のバーンポーンの二手に分かれて工事を開始。その後、鉄道建設のために動員された捕虜たちは、まず、各地の収容所からシンガポールのチャンギ収容所を経て、モールメンに集められ、それぞれの建設現場に移送されるというのが、一般的なルートとなりました。

 今回ご紹介のカバーの名宛人も、そうした経路を経て、チュンカイにあった第2分所に送られたもので、鉄道の完成後は、保守作業等に従事していたものと思われます。

 なお、「泰国郵便学」の連載では、次回は、収容所で使われたさまざまなフォーマットの葉書をご紹介する予定ですが、その一部については、拙著『タイ三都周郵記』でもご紹介しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。

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この記事のコメント
#1952
郵便と歴史ってこんなにも密接だったんですね。

勉強になります。次回を楽しみにしております。
2011-03-04 Fri 17:59 | URL | #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 歴史の証言者としての切手の面白さに気づいていただき、嬉しいです。今後ともよろしくお願いいたします。
2011-03-06 Sun 21:39 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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