FC2ブログ
内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 香港から震災後初の団体客
2011-05-17 Tue 16:23
 きのう(16日)午後、首都圏の空港を利用した海外からの団体旅行客としては東日本大震災後初めて、香港のツアー客が成田に到着しました。これを契機に海外からの観光客が回復し、7-8月に横浜で開催予定の国際展には、海外からも多くのお客さんが参加してほしいものです。というわけで、きょうは香港から日本宛てのカバーの中から、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

        省港スト・カバー

 これは、1926年1月18日、香港・西半山の西摩道から東京宛に差し出された書留便です。それだけなら、だからどうしたという話なのですが、このカバーが差し出された時期、香港ではいわゆる“省港スト”の最中であったというのがミソです。

 1925年5月14日、上海の日系企業・内外綿で、従業員の解雇問題をめぐる騒動から発砲事件が起こり、1人が死亡。さらに同月28日、青島で、日本の要請で出動した軍閥系の兵士が数名を射殺する事件が発生しました。

 このため、5月30日、上海でこれらの事件に抗議する学生デモが発生しましたが、租界の警察はデモ隊に対して一斉射撃を行い、死者13名、負傷者数十名、逮捕者53名が出ました。いわゆる五・三〇事件です。

 ときあたかも、翌5月31日には中国の全国的な労働組織である中華全国総工会の地域組織として上海総工会が成立。総工会の呼びかけに呼応して、上海全市はゼネストに突入し、労働側は列強諸国や北京政府に対して17ヵ条の要求を突きつけました。

 その後、事件は南京、北京、天津などへと飛び火しましたが、中でも凄まじいまでの勢いを示したのが、広州と香港の省港ストでした。ちなみに、省港の省とは広東省ないしはその省都である広州、港は香港の意味です。

 1925年6月19日、香港の労働者十数万人は、共産党の劉少奇、蘇兆徴、李立三らの指導の下、大規模なストライキに突入。上海での17ヵ条に加え、香港政庁に対して、政治的自由、法律上の平等、普通選挙の実施、労働立法、家賃引き下げ、居住の自由の六項目をつきつけ、さらには不平等条約撤廃の運動も展開しました。

 これに対して、香港政庁は戒厳令を実施。このため、労働者は国共合作の拠点であった広州に走り、6月23日には、国民党も党大会を開いて胡漢民、汪兆銘、廖仲らが反英を訴えます。しかし、集会後、デモ隊が広州の外国人居留地、沙面の対岸、沙基に差し掛かったとき、イギリスとフランスの両軍が群集に向かって機関銃を連射。このため、多数の死者が発生しました。いわゆる沙基惨案です。

 このニュースは瞬く間に中国全土に伝わり、広東政府は香港に対する経済封鎖とイギリスに対する経済断交を宣言。香港の労働者は次々と広州に引き上げ、6月28日までにほとんどの業種で香港と広州の労働者はストライキに突入しました。

 広東政府による香港の封鎖は厳重で、労働者側は糾察隊をつくってスト破りを防いだほか、イギリス商品のボイコットも徹底して行われたといわれています。
 
 その後、ストライキは翌1926年10月まで1年4ヵ月にわたって続き、香港経済は壊滅的な打撃を受けました。また、清掃業者のストライキにより、ゴミや屎尿の回収も行われなかったため、街中は悪臭が満ち溢れ、香港は臭港になったとまで呼ばれました。文革中、香港のことを、帝国主義の腐臭漂う都市として“臭港”と呼ぶ者がありましたが、そのルーツは、案外、こんな所にあったのかもしれません。

 ちなみに、省港ストについて書かれた文献では、たいてい、「香港はゼネスト状態になり…」といった類の記述があるのですが、郵便に関しては、今回ご紹介のカバーを見ると、なんとか“ゼネスト”の対象外として機能していたようですな。

 その後、1926年7月、蒋介石が孫文の遺志を継いで北伐を開始すると、国民政府はこれに力を注ぐようになって、ストライキを顧みる余裕を失います。このため、後ろ盾を失った罷工委員会は、10月10日、民衆大会を開いて、イギリスに対して一方的にストライキの終息を宣言。その後も、香港海員工会によるストライキが散発的に続けられていましたが、最終的に、香港政庁と罷工委員会によって、ストライキ期間中の16ヵ月間に対して、労働者には10ヵ月分相当の賃金が支払われることで省港ストは最終的に決着しました。

 なお、省港スト前後の香港の状況については、拙著『香港歴史漫郵記』でも詳しく解説しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。

  ★★★ 内藤陽介の最新刊 ★★★

        切手百撰・昭和戦後
         切手百撰 昭和戦後
       平凡社(本体2000円+税) 

  視て読んで楽しむ切手図鑑!
  “あの頃の切手少年たち”には懐かしの、
  平成生まれの若者には昭和レトロがカッコいい、
  そんな切手100点のモノ語りを関連写真などとともに、オールカラーでご紹介

  全国書店・インターネット書店(amazonboox storeconeco.netJBOOKlivedoor BOOKSYahoo!ブックスエキサイトブックス丸善&ジュンク堂楽天など)で好評発売中! 
スポンサーサイト

別窓 | 香港:~1941 | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< 英女王のアイルランド訪問 | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  “516革命”50年>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/