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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 復旧・復興のめど
2011-06-03 Fri 02:17
 一時は可決の可能性もかなりあると見られていた菅内閣に対する不信任決議案ですが、菅首相が「(震災の復旧・復興に)一定のめどがついた段階で、若い世代の皆さんに責任を移していきたい」と退陣をほのめかしたことで、与党内の造反組が腰砕けになり、結局は圧倒的大差で否決されました。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました(画像はクリックで拡大されます)

        帝都復興事業完成記念

 これは、関東大震災後の“帝都復興事業完成記念”の絵葉書に切手を貼り、帝都復興事業完成の印を押したものです。葉書は逓信省発行のものではありませんが、エンボス加工も施された立派なもので、なんらかの公的な組織が発行したものではないかと思います。

 1923年9月に起こった関東大震災の復興計画は、第2次山本権兵衛内閣の内務大臣に就任した後藤新平が帝都復興院を設立して自ら総裁に就任し、大阪市の港湾計画や都市計画に従事した直木倫太郎を技監に据えて行われました。

 当初の復興計画では焦土を買い上げ、都市の構造を抜本的に改造する壮大なものとして、30億円の予算が計上されていましたが、財政事情から、議会提出の時点で5億円まで削減され、さらに、議会での審議を通じて2割カットプラス復興院事務費の全額カットに修正されています。その後、ともかくも復興が動き出した矢先の1924年1月に摂政・裕仁親王暗殺未遂事件の虎ノ門事件が起こり、山本内閣は責任を取って総辞職。後藤も失脚してしまいました。

 当初の復興計画に比べると、実際の復興事業の規模はかなり縮小されましたが、それでも、現在の内堀通りや靖国通り、昭和通りなど都心・下町のすべての街路がこの復興事業によって整備されたほか、隅田川には震災復興橋梁として相生・永代・清洲・両国・蔵前・厩・駒形・吾妻・言問の9橋が架けられ、都心の小学校校舎の鉄筋化・トイレの水洗化、墨田・浜町・錦糸の3大公園と52の小公園の設置など、現在の東京都心の骨格がつくられました。

 なお、後藤は1929年に亡くなりますが、翌1930年に復興事業は完成し、3月26日にはそれを祝して帝都復興債が行われました。今回ご紹介のマテリアルは、これにあわせてつくられたものです。

 さて、菅首相は震災の復旧・復興のめどがついた時点で退陣するつもりだそうですが、その具体的な時期については口を濁しています。後藤新平が震災直後から強力なイニシアチブを発揮した関東大震災の時の復興事業でさえ、予算が通って事業が動き出したのは、震災から4ヶ月後。すでに、東日本大震災からは3ヶ月近くも空費されている現状を考えると、いまから4ヶ月後に復興事業が本格的に動き出しているとはなかなか想像しにくいのですが、“復旧・復興のめどがつくまで”ということは、少なくともそれまでは菅首相は辞めずに居座るということなんでしょう。ましてや、関東大震災の時の復興事業完成は震災から6年半後だったことを考えると、“復旧・復興のめどがつくまで”という言葉を水戸黄門の印籠よろしく取り出して、首相は任期満了後の再選さえ狙っているのではないかと思えてきます。

 そもそも、野党が内閣不信任案を提出し、与党からも相当数の議員が賛成に回ると見られていたのは、菅政権の下で復旧・復興のめどが全く立っていなかったからで、逆説的にいえば、今回の不信任案否決は、今後も、現状のままずっと菅首相が居座る(なにせ“復旧・復興のめどがつくまで”は辞めないそうですから)ことを意味するといえます。菅首相のこれまでの言動を見ていると、彼が自らの保身と政権の延命を優先して復旧・復興を遅らせるという可能性も決して否定しきれず、暗澹たる思いにとらわれるのは僕だけではないはずです。

 PS きのう(2日)夜の記者会見で、首相は「放射性物質の放出がほぼなくなり冷温停止になるのが原発事故の一定のめどだ」と述べたそうです。原発事故の収束に向けた工程表では、冷温停止を実現するのは来年1月ですから、それまでは続投するつもりということ。もちろん、冷温停止が遅れれば、その分、政権に居座り続けるということでしょう。耐震偽装ならぬ退陣偽装が早々に馬脚を現した格好ですな。


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