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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 重陽の節句
2011-09-09 Fri 23:59
 きょう(9月9日)は重陽の節句です。というわけで、菊を取り上げた切手の中からこの1枚です。(画像はクリックで拡大されます)

        平和条約調印2円

 これは、いまからちょうど60年前の1951年9月9日に発行された“平和条約調印”の記念切手のうち、菊の花を取り上げた2円切手です。

 第二次大戦後の講和条約調印に際して記念切手を発行することは、すでに1947年の段階で企画されていましたが、条約がいつ、どのような内容で調印されるかという点については、全く白紙の状態であったため、「講和条約成立」記念切手を発行も、あくまでも「期日未定」の仮定の話の域を出ていませんでした。

 講和条約の記念切手発行が正式に決定され、具体的な実務作業が開始されるようになったのは、1951年7月になって、講和会議が9月上旬に行われることが確定してからのことで、期間が限られていることから、記念切手の版式はグラビアを用いられること、また、セットとしての構成も国内用の葉書と書状基本料金、外信用の書状基本料金(船便)の3種とすることが決められました。その後、関係者の昼夜を問わない奮闘の結果、9月5日までに、2色刷の8円を含む3種の切手、計1200万枚が郵政省に納品されています。

 今回の記念切手に関しては、製作期間が短かったことにくわえ、講和会議の結果いかんによっては条約の調印が行われないこともありえたため、発行日の設定に関しては郵政省も相当苦労したようです。

 ちなみに、8月25日付の「郵政省切手普及係発表」は、そうした郵政の苦衷を極めて率直に表現しています。

 來る九月上旬と期待される、サンフランシスコにおける平和條約調印にちなみ、次の三種の記念切手を発行の豫定です 発行日は調印当日若しくはその翌日の見込みですが、詳細は最寄の郵便局にお問合せ下さい なお郵政局所在地の中央局並に当係以外では、印刷の関係上右期日に間に合わない場合が豫想されますから、初日に御希望の方は右の各局へ直接お申込下さい

 一方、収集家の側も、講和会議の成り行きに不安を抱きながら、記念切手の発行を待っていたようで、切手の発行後、『京都寸葉』の武田修は次のように述べています。

 今度の平和條約調印が不成立に終ることを願つたようなものは、恐らくわが國民には一人もなかつたことと思う 稀にあればそれは共産党員位であつたろう しかしあの平和記念切手が未発行に終れば面白いなと思つた人は、郵趣界の中にはかなりにあつたらしい 奇を追い珍を貴ぶ趣味人としては無理からぬことかも知れず、出來上つてしまつていたあの記念切手が、かつての大震災当時の東京御成婚 とおなじような未發行ともなれば珍品になるんだがナアと心の一隅で考えたことは良識の有無如何に拘らず一應尤もと考えられる 事実今度の平和記念切手には当初一縷の危機がからんでいた 記念切手にスリルが伴うなどいうことは、これ迄のものには一寸前例のなかつたことだ というのは最初会議不参加が殆ど決定的と信じられていた世界の二大対立國家群の一方、鉄のカーテンの彼方のソ連が突如会議参加を発表したことに初まる 何かこれは一悶着起こるゾ、スラスラと予定通りに事は運ばぬぞ、といつた感じは誰しも一應抱いたことだつた 最惡の場合には條約調印も不成立に終るのではないかという一抹の危惧が生じたことが、記念切手の未発行の場合もあり得るということを考えさせるに至つた要因と思う

 こうした状況であったため、郵政省では、記念切手の発行は条約調印を確認してから行うものとし、調印終了が日本時間で郵便局の窓口受付時間内であれば当日発行とするが、午後5時以降または日曜で午前10時以降であった場合にはその翌日発行とするよう準備していました。

 結局、講和条約は、サンフランシスコの現地時間で9月8日午前10時42分(日本時間では9日の午前3時42分)に調印されたため、記念切手は9日に発行となりました。もっとも、9日は日曜日であったため、実際に同日から発売されたのは普通局以上、しかも、午前中に限られていました。また、記念切手発行の告示は、9月11日に訴求告示の形式をとって出されています。

 ちなみに、一般の歴史年表などでは講和条約の調印はサンフランシスコ時間(署名に記載の日)をとって9月8日とされていることが多いのですが、日本時間をとれば、上述のように、9月9日が調印日ということになります。僕の個人的な気分としては、重陽の節句に菊を取り上げた記念切手が発行されたということとあわせて、日本時間の9月9日を記念日としても悪くないかな、とも思います。

 なお、今回ご紹介した2円切手と同時に発行された他の2種については、拙著『切手百撰 昭和戦後』でもご紹介しておりますので、機会がありましたら、ぜひ、ご覧いただけると幸いです。


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