内藤陽介 Yosuke NAITO
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 サウジで女性参政権容認へ
2011-09-26 Mon 23:53
 サウジアラビアのアブドラ国王が、きのう(25日)、将来の地方選挙で女性に参政権を認めるとの方針を明らかにしました。というわけで、きょうはこの切手です(画像はクリックで拡大されます)

        サウジアラビア・社会福祉協会25周年

 これは、1987年にサウジアラビアで発行された社会福祉協会25周年の記念切手で、掌の上で保護される女性と子供たちが図案化されて描かれています。同国の切手で、女性がそれとわかるようにはっきりと描かれているケースは非常に少ないのですが、これはその例外的な1枚といえます。

 コーランでは、女性は保護されるべき存在であるとされています。この“保護”の考え方は、たとえば、戦争などで男女の人口バランスが崩れた場合などに経済的に余裕のある男性が“平等に愛する”との前提で複数の妻をめとることが認められるというロジックや、未婚女性の純潔を守ることが一族の名誉となるという考え方に結びついています。

 ただし、現実には“保護”の名の下に男性が女性を恣意的に扱ったり、女性の権利が著しく制限されていたりすることも珍しくありません。たとえば、未婚女性の純潔を守ることが一族の名誉であるということは、裏を返せば、未婚女性がセックスを体験したことが明らかになると一族の名誉が失墜するという発想につながります。このため、かつてのエジプトの農村では、新婚初夜に花嫁が処女でなかったことが判明すると、翌朝、ナイル川にウェディング・ドレス姿の死体が浮かんでいるという悲劇も少なからずあったようで、そうしたことを防ぐためと称して、未婚女性を男性の目の届かない環境に置く、すなわち、一般社会から隔離して、学校にも行かせなければ、町への買い物にも行かせない、それゆえ、お金もほとんど渡さないというようなことも珍しくありませんでした。

 かつてアフガニスタンのほぼ全域を支配していたタリバン政権下で、女性の権利や教育、社会進出が極端に制限されていたのは、こうした発想によるものです。

 当然のことながら、こうした女性の“保護”は西側世界の人権感覚からすると非難の対象となるわけですが、それでは、イスラム社会のすべての女性が抑圧の下で苦しんでいるとみなしうるかというと、ことはそう単純ではありません。

 たとえば、イスラム教徒の女性が公衆の面前で髪を隠すのは、髪を男性に見せると男性の劣情を刺激し、貞操の危機につながりかねないとの考えによるものですが、ベールの着用を疎ましくいる女性がいる半面、イスラム教徒であることを強く自覚し、公衆の面前で髪を見せることを“恥ずかしい”と感じているがゆえに、自らの意思でベールを着用したいと考える女性も少なくありません。こうした状況を無視して、一方的にベールの着用=女性の人権侵害と短絡的に非難しても、結果的に、いわゆる人権屋さんの自己満足にしかならないということも十分にあり得ます。

 ただし、世界の多くの国や地域において男女に等しく認められている権利を、“保護”を理由に女性には与えないままにしておいてもよいということにはならないのは当然で、そのあたりをどのように伝統的な価値観と折り合いをつけて行くかはなかなか難しい問題です。

 今回のサウジ国王の方針については、諸外国からも「女性の権利拡大へ向けた重要な一歩」として歓迎されているようです。

 ただ、サウジアラビアにおける地方選挙は1963年に初めて実施されてから2005年まで行われず、当初2009年に予定されていた3回目の選挙も延期が繰り返され、近々、ようやく実施にこぎ着けるというありさまで、女性の参加が実現する4回目以降の選挙がいつになったら行われるのか、現時点では全く先が見えない状況です。

 まぁ、サウジアラビアの国名は、アラビア語の正式国号を直訳すると“サウード家のアラブ王国”ですからねぇ。“将軍様”の支配する独裁国家でさえ、表向きは金王朝ではなく朝鮮民主主義人民共和国という立派な名前を名乗っていることを考えると、まさに、かまどの下の灰までサウード家のモノと堂々とうたっている国ですから、女性の参政権がどうのこうという以前の問題として、国民の政治参加が制度的に保証され、民意がきちんと反映されるシステムが確立されるには、まだまだ相当の時間がかかるんでしょうな。


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