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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ルドルフ1世
2011-10-05 Wed 16:58
 史上初めて無敗でクラシック3冠を制するなどG1で7勝を挙げ、“皇帝”の愛称でファンに親しまれたシンボリルドルフが、きのう(3日)、余生を送っていた千葉県成田市のシンボリ牧場で30歳の高齢で死亡しました。で、馬名“シンボリ”は馬主の冠名、“ルドルフ”は神聖ローマ帝国の皇帝ルドルフ1世にちなんで名づけられたということなので、きょうはルドルフ1世の切手です。(画像はクリックで拡大されます)

        北朝鮮・ルドルフ1世

 これは、1984年に北朝鮮が発行した「西洋名画」の切手のうち、ルドルフ1世を取り上げた1枚です。

 ルドルフ1世は、1218年、当時はスイスを基盤としていたハプスブルク伯爵家に生まれました。当時のハプスブルク家はドイツでは有力な存在ではなく、なおかつ、ルドルフの母がホーエンシュタウフェン家傍系の出身であったことから、強力な皇帝の出現を嫌うドイツ諸侯の思惑により、1273年、事実上の神聖ローマ帝国君主である“ドイツ王”に選出されました。「神輿は軽くてバカがいい」というわけですな。

 ところが、ルドルフ1世として即位した彼はドイツ諸侯の目論見とは違って“バカ”ではなく、政略結婚を通じて皇帝権力の強化と地盤固めに専念。帝国内で最も有力だった選帝侯のボヘミア王オタカル2世マルヒフェルトの戦いで破り、オーストリアその他の所領を奪取し、皇帝権力の強化とハプスブルク家発展の基礎を確立することに成功しました。なるほど、その名にあやかったシンボリルドルフも、自らが活躍しただけでなく、引退後はトーカイテイオーなどの名馬を生んで、シンボリ牧場を一層発展させましたから、その名にふさわしい名馬に違いありません。

 ところで、1984年に北朝鮮が発行した「西洋名画」の切手は、ことごとく、ヨーロッパの国王や皇帝を題材としており、発行当時は、社会主義国である北朝鮮も外貨稼ぎのためには国王や皇帝の切手を発行するのか、と眉をひそめる人も少なくなかったようです。

 もちろん、北朝鮮の切手には、海外の収集家に売りつけて外貨を獲得したいという意図があるのは事実ですが、それでも、北朝鮮国家の名において発行する切手の題材を選択するにあたっては、彼らなりの基準が存在しており、いわゆる“いかがわしい切手”の定番であるディズニーやハリウッド・スターなどは一切登場しません。

 代わりに、1980年代前半の北朝鮮が好んで取り上げた題材がイギリスのダイアナ妃(当時は“元”ではありませんでした)であり、西洋の王室を取り上げた名画でした。そこには、金日成から金正日への権力の世襲が着々と進められていく過程で、王朝、すなわち権力の世襲は悪ではないという彼らのロジックが色濃く反映されていたと見るのが自然でしょう。

 金正日の後継者として息子の金正恩が表に出てきてから1年以上が過ぎましたが、2代目から3代目への権力の世襲は、かの国の切手にどのように影響を及ぼしているのか、いつか拙著『北朝鮮事典』の審判を出すことがあったら、きちんと分析してみたいところです。


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