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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 アップルの切手
2011-10-07 Fri 09:59
 米アップル社のスティーブ・ジョブズ会長が、日本時間のきのう(現地時間5日)、亡くなりました。謹んでご冥福をお祈りします。というわけで、きょうは“アップル”の切手です。

        りんご100年

 これは、1975年9月に発行された“りんご100年”の記念切手です。(記事タイトルにつられて、アップル社関連の切手だと思ってアクセスしていただいた方、ごめんなさい)

 旧約聖書にも登場するリンゴは中央アジアのコーカサス地方が原産といわれています。コーカサスから中国へ伝えられたリンキンと呼ばれる果物は、鎌倉時代以前にはわが国にももたらされ、これが和リンゴの元になりました。

 これに対して、西洋リンゴに関しては、幕末の文久年間(1861-63)に越前藩主の松平春嶽が欧米から渡来したリンゴの苗木を越前と江戸の屋敷に植えたのが最初と考えられており、1866年には開成所(洋書調所)に勤めていた田中芳男がその枝を拝領して接木を行ったという記録もあります。

 明治維新後は、北海道開拓使次官の黒田清隆や民部権少丞の細川潤次郎が渡米した際にリンゴの苗木を持ち帰り、東京・芝の増上寺境内や北海道の函館郊外の七重勧業試験場に植えています。また、岩手県では独自のルートでリンゴの苗木を入手し、1871年以降、岩手リンゴの栽培を開始しました。

 その後、士族授産政策の一環として、大蔵省勧業寮はリンゴを含むさまざまな果物の苗木を輸入し、殖産試験場や三田育種場でこれを繁殖させて、1874年11月から全国各府県への本格的な配布を開始します。このうち、寒冷地域には1875年3月に第1回目の苗木の配布が行われ、青森県にもリンゴの苗木3本がもたらされました。

 これと時を同じくして、1874年に弘前市の東奥義塾が英語教師として招いたアメリカ人宣教師のジョン・イングが、翌1875年のクリスマスに際して教え子や信徒にリンゴの実を振舞っています。これが、青森県人がリンゴの実を食した最初で、教え子の1人である佐藤敬三郎がリンゴの実を持ち帰り、自宅の裏庭に植えていますが、これを台木として、穂木を接木したものが、現在の主要な品種の元になりました。

 さて、政府から青森県に配布されたリンゴの苗木は、1877年8月15日、弘前市の山野茂樹園で最初の実が採取され、以後、県内での栽培が急速に普及します。特に、1891年に東北線が開通すると、青森県産のリンゴは東京、横浜方面に出荷されるようになり、その後の同県のリンゴ産業発展の基礎が築かれました。

 以上のような経緯から、青森県では1974-75年の2年間にわたり、“りんご100年”を記念する各種行事を開催しました。このうち、メインの記念式典は1974年9月3日に行われましたが、1975年9月17日には、弘前市内にりんご資料館が開館するとともに、県庁構内のリンゴ園に建立されたりんご100年の記念碑の除幕式が行われています。

 この機会をとらえて、青森県では、県の特産品であるリンゴを宣伝するための手段として記念切手の発行を郵政省に要請することとし、1974年7月2日、翌1975年に「りんご100年」の記念切手発行を郵政省と農林省に申請しました。

 当初、郵政省は「一県の記念行事のために切手の発行はできない」として記念切手の発行に難色を示していたと伝えられていますが、最終的には、農林省からの強い働きかけもあって、昭和50年度の記念切手発行計画が審議された1975年2月の郵政審議会では、1975年の記念行事が行われる9月17日にあわせて記念切手が発行されることが決定されました。

 さて、発行された切手は、リンゴとリンゴの木を描くストレートなデザインで、一度見たら忘れられないインパクトのある1枚だと思います。拙著『切手百撰 昭和戦後』にも取り上げてみましたので、機会がありましたら、ぜひ、同書をお手にとってご覧いただけると幸いです。


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