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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手に描かれたソウル:徳寿宮
2011-12-05 Mon 09:54
 ご報告が大変遅くなりましたが、『東洋経済日報』11月25日号が刊行されました。僕の連載「切手に描かれたソウル」では、徳寿宮を取り上げました。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

        米ソ共同委員会宛葉書     米ソ共同委員会宛葉書(裏)

 これは、徳寿宮内に設けられていた米ソ共同委員会宛に信託統治反対を訴えた葉書です。

 韓国の5大王宮のひとつとされる徳寿宮は、元々は朝鮮時代の王族で成宗の兄、月山大君の邸宅でしたが、豊臣秀吉による文禄の役(1592年)に際して義州に避難していた宣祖が、荒廃した景福宮(ソウルの宮殿は秀吉軍の入城前に朝鮮の民衆によって焼打ちにあっていました)に代わる臨時の王宮とし、慶運宮と命名されました。

 その後、景福宮の離宮であった昌徳宮が1615年に再建され、王が昌徳宮に移ると、慶運宮は忘れられた存在になっていましたが、1896年の閔妃暗殺事件といわゆる俄館播遷(高宗がロシア公使館に逃れて政務を執った非常事態)を機に、1897年以降、王の在所となり、大韓帝国の発足後は皇帝の住居となりました。ちなみに、現在の徳寿宮という名になったのは、大韓帝国最後の皇帝、純宗の時代のことです。

 徳寿宮は、韓国現代史においては、第二次大戦後の米軍政時代、米ソ合同委員会が置かれていたことでも知られています。

 1945年12月27日、米・英・ソ3国の外相が戦後処理を協議するためにモスクワで会談。いわゆるモスクワ協定がまとめられ、翌日、3国の首都で同時に発表されました。

 このうち、朝鮮に関しては、①朝鮮の独立国として再建することを前提として、民主主義臨時朝鮮政府を樹立する、②同政府の樹立を支援し、必要な諸方策を作成するため、米ソ両軍の代表による共同委員会(米ソ共同委員会)を設置する、③5年間を限度として4ヵ国による信託統治を行う、④在朝鮮米ソ両軍の代表者会議を2週間以内に招集する、ということが定められています。

 徳寿宮におかれていたのは、この②で規定された米ソ共同委員会です。

 なお、朝鮮の信託統治を定めた③は、即時独立を期待していた人々が強く反発し、12月28日には、早くもソウルで信託統治反対国民総動員委員会が結成されるなど、米軍占領下の南朝鮮では大規模な反託(信託統治反対)運動が発生。これに対して、ソ連軍占領下にあった北朝鮮では、ソ連が信託統治の実施を通じて朝鮮の衛星国化をもくろんでいることを察知した金日成が、信託統治をソ連による「後見」としてこれを支持。これに引きずられるかたちで、南朝鮮の左翼陣営も信託統治賛成にまわり、南北間ならびに左右両派の激しい対立が引き起こされました。

 騒然とした世情の中で、徳寿宮の米ソ共同委員会には連日、信託統治反対を訴える嘆願の葉書が大量に送られ、その一部は市場に流出して、僕のコレクションにも収まったというわけです。

 信託統治反対の嘆願葉書には、日本時代の葉書の額面を生かして、差額分は料金収納印を押して利用したケースが少なくありません。逆に言うと、日本時代の印面を解放後に活用した葉書の多くは徳寿宮の米ソ共同委員会宛のものですから、その意味でも、韓国郵便史に興味のある人間にとっては、徳寿宮はなじみのある名前といえましょう。

 ちなみに、現在の徳寿宮では、正門にあたる大漢門の前で、王宮を守っていた兵士たちの勤務交代式を再現した“王宮守門将交代儀式”が行われていることでも知られていますが、大漢門から約800メートル続く石垣の貞洞通り(通称:石垣道)は、銀杏の黄葉の名所として知られています。

 なお、モスクワ協定と反託闘争については、拙著『韓国現代史』でもいろいろとご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。

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