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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 切手が語る宇宙開発史(17)
2011-12-15 Thu 17:58
 御報告が遅くなりましたが、 雑誌『ハッカージャパン』の2012年1月号が出来上がりました。僕が担当している連載「切手が語る宇宙開発史」では、今回は、この切手を取り上げました。(画像はクリックで拡大されます)

        ルナ2号

 これは、1959年11月1日、ルナ2号の月面到達を記念してソ連が発行した記念切手です。

 1959年1月2日のルナ1号の打ち上げに続いて同年9月12日、ソ連が打ち上げたルナ2号は、翌13日、月面に到達しました。

 ちなみに、ソ連首相のフルシチョフが国連総会参加のために訪米し、第二次大戦後初の米ソ首脳会談を行ったのは9月15日のことです。この日程を見れば、ルナ2号の成功を露払いとして、西側のミサイルギャップ幻想をさらに煽り、自国に有利な“平和共存”路線に持ち込みたいという意図があったことは明白といえましょう。

 さて、打ち上げから月面に到達するまでの間、ルナ2号は観測活動を来ない、月には地球にあるような磁場が無くバンアレン帯のような放射線帯も存在しないことを明らかにしたほか、いわゆる太陽風(太陽から流れ出る大量のイオン流)の存在を確認するなどの成果を上げています。

 1957年のスプートニク1号以来、ソ連は衛星が発する電波の周波数をあえて公表し、それを西側機関が傍受することで、自国の技術力に対する“お墨付き”にしようとの戦略をとっていましたが、1959年1月のルナ1号に関しては、月を通過した時点で電波を傍受したと発表する西側機関はありませんでした。このため、一部にはルナ1号の成果を疑問視する声もありましたので、ルナ2号の打ち上げに際しては、ソ連は英国のジョドレルバンク電波天文台に電波傍受の協力を求め、ルナ2号が月に命中して崩壊し、電波の送信が途絶えるとともに、月の重量がわずかに増える瞬間を確認させています。もちろん、英国を通じて米国や西側世界にも情報が“流出”することを期待しての措置です。

 また、ルナ2号には、ソ連の国章とCCCP(ソヴィエト社会主義共和国連邦のキリル文字での略称)を刻んだペナント(正確にはペナント状の金属片が貼られた金属球)が搭載されており、ソ連の月到達の証拠として、それを月面に置いてくるという使命が課せられていました。万一、月面到着時の衝撃でも衛星が解体されなかった場合には、機内に仕込まれた爆薬によって確実に解体が破壊されてペナントが飛び出すという念の入れようです。

 今回ご紹介の切手は、ルナ2号が月に到達するまでの経緯や月面に立てられた国旗を描き、ルナ2号の概要を手際よくまとめています。あるいは、“ペナント”の詳細を聞かされていなかったデザイナーは月面に立つソ連国旗を連想したのかもしれません。まぁ、そのどちらにせよ、その本質は変わりませんがね。

 ルナ2号の成功を受けて、訪米したフルシチョフは、米大統領のアイゼンハワーにペナントのレプリカを渡しながら、「米国も必ずや月に到達してソ連のペナントを見つけるでしょう。ソ連のペナントがお待ちしていますよ。米ソのペナントは、きっと、平和と友好の下に共存することになります」と得意げに語ったそうです。慇懃無礼という言葉がぴったりの挨拶を聞かされたアイゼンハワーの渋面が目に浮かぶようですな。


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