内藤陽介 Yosuke NAITO
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 最も命を狙われた男
2011-12-17 Sat 22:45
 キューバからの報道によると、フィデル・カストロ前国家評議会議長が“最も命を狙われた男”として、ギネスブックに掲載されることになったそうです。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

        キューバ・革命防衛委員会45年

 これは、2005年にキューバが発行した「革命防衛委員会45周年」の記念切手で、右側には演説するカストロの写真が取り上げられています。

 1959年のキューバ革命を経て発足したカストロ政権は、当初、必ずしもソ連型の社会主義国家の建設を志向していたわけではなく、あまりにも極端な富の偏在を是正する“改良主義”の立場に立っていました。
 
 ところが、その“改良主義”の実現に際してカストロ政権が行った農地改革は、外国人の農場経営の禁止等を法律に盛り込んでおり、米国系資本は大きな打撃を受けることになりました。このため、米国はキューバ政府に抗議し、カストロがこれを拒絶すると、マイアミから飛行機が飛来し、爆弾を落としていくようになったほか、8月以降、融資停止などの経済制裁を開始します。

 アメリカとの対立を深めていく中で、カストロ政府は、必然的に“敵の敵”であるソ連との関係を強化せざるを得なくなりました。

 1959年にキューバで革命が起こるまでは、アメリカの“裏庭”であるラテンアメリカ諸国では、ソ連と外交関係を結ぶことはおろか、経済的な関係を持つことさえタブー視されていました。したがって、キューバがソ連の期待しているような社会主義国家となるかどうかということはさておき、アメリカの“裏庭”に楔を打ち込むためにも、キューバを援助し、恩を売っておくことはソ連の冷戦戦略にとって有益なことでした。

 こうした事態を目の当たりにしたアメリカは、キューバがついに“赤化”したと判断し、カストロ政権打倒のための経済封鎖に着手。1960年2月、キューバからの果実輸入を禁止するとともに、同年7月には、キューバ最大の輸出品であった砂糖の輸入を停止しました。

 もっとも、アメリカによるキューバの砂糖輸入停止に対しては、アメリカが買い付けを拒否したのと同量の砂糖をソ連が国際価格で買い取ることを申し入れたため、アメリカ側が期待していたような効果を挙げることなく終ってしまいます。これを受けてキューバ政府は、アメリカを挑発するかのように、「我が国が侵略されるようなことがあれば、ソ連の好意を受け取る以外の道はなくなるだろう」との声明を発表しました。

 この声明に激怒したアメリカは、ついに、実力でカストロ政権を転覆させることを決意し、8月16日、CIAによるカストロ暗殺計画(毒入の葉巻がカストロのもとに届けられました)を実行に移します。しかし、この秘密工作は失敗に終わり、同月19日、アメリカはキューバに対する経済封鎖を発動しました。これに対して、カストロはアメリカ資本の工場や農園を次々に接収するとともに、共産中国との国交樹立とソ連との経済関係の強化を決定。両者の対立はエスカレートしていきます。
 
 こうした状況の下で、9月18日から10日間にわたり、カストロは国連総会へ出席するためにニューヨークを訪問。この間、米国務省はカストロの在米中の行動範囲をマンハッタン島内に限ると通告すると、キューバも国連総会の期間中、駐ハバナ米大使の行動範囲を大使館周辺に限定すると通告するなど、両国の激しいせめぎあいが行われています。

 そして、9月28日、帰国したカストロが革命広場で帰国報告の演説を行っている途中、4発(2発との説もあります)の爆弾が爆発するという暗殺未遂事件が発生しました。辛くも難を逃れたカストロは、とっさに事件を逆手に取って、「集団的警備の充実のため」として、日本の隣組組織と類似の革命防衛委員会の設立を提案し、これを満場の拍手で承認させています。

 今回ご紹介の切手は、この事件から起算して45周年になるのを記念して発行されたもので、おそらく、カストロの写真は帰国報告の演説の際に撮影されたものではないかと思います。

 まぁ、今回の“ギネス入り”を報じたニュースによると、カストロに対する暗殺未遂は計638回(その大半は、当然のことながら、CIAが関与したものです)にも及んでいるそうですから、暗殺未遂事件に遭遇した現場の写真というのも決して珍しいものではないのかもしれません。とはいえ、今回ご紹介の1枚のように、暗殺未遂事件と直接関係のある切手というのは、やはり、珍しいのではないでしょうかね。

 なお、さすがのカストロも年齢には勝てず、2006年から病気療養中で、今年4月の第6回キューバ共産党大会では、正式に党トップの第1書記を退任しています。このあたりの、ポスト・カストロをめぐるキューバの動きについては、拙著『事情のある国の切手ほど面白い』でもいろいろとご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


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