内藤陽介 Yosuke NAITO
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 第一書記
2012-04-12 Thu 08:59
 きのう(11日)、北朝鮮の朝鮮労働党は代表者会を開き、昨年12月に亡くなった金正日を“永遠の総書記”に指名し、後継者の金正恩を新設ポストの“第1書記”に指名しました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

        フルシチョフ

 これは、1964年、東ドイツで発行された“フルシチョフをたたえる切手”のうち、発明家とその作品を手に取るフルシチョフを描く25ペニヒ切手です。

 いわゆる第一書記という肩書は、スターリン没後の1953年、ソ連の権力を掌握したニキータ・フルシチョフが、スターリン時代の反省として、党首はあくまでも書記の筆頭にすぎないという意味を込めて使用し始めたもので、個人崇拝否定の象徴と理解されていました。

 ソ連共産党第一書記としてのフルシチョフは、1956年の第20回党大会でスターリン批判を行い、軍事力を含む総合的な国力ではアメリカに対抗しきれないという現実を踏まえて対米融和路線を打ち出し、軍縮を促進。その一方で、軍事力の劣勢を挽回するため、スプートニクボストークの打ち上げを成功させ、西側世界に対して、宇宙開発とミサイル防衛でソ連が優位にあるかのような印象を与えることに成功しました。

 しかし、1958年に閣僚会議議長(首相)を兼任してからは、当初共産党内で合意されていた集団指導体制を無視した独断が目立つようになり、農業政策の失敗等もあって、1964年10月、黒海沿岸のピツンダで休暇中に発生した“宮廷クーデター”で党と政府の役職を解任され、1971年に亡くなるまで事実上の軟禁状態に置かれていました。ちなみに、フルシチョフの死後、ソ連共産党のトップの役職名は、第一書記からスターリン時代と同じ書記長に戻されています。

 さて、今回、北朝鮮の金正恩に与えられた第一書記というポストは、金日成の国家主席、金正日の総書記というポストをいわば“永久欠番”化したために、代替ポストとして考え出されたということなのでしょう。ただし、第一書記というのは、上述のように、絶対的な権力者ではなく、あくまでも比較第一位にすぎないという意味を込めたポストですから、ある意味で、現在の金正恩の置かれている立場を正確に表現したものといえそうです。あるいは、就任祝いの祝砲として、衛星と称するミサイル打ち上げを行うというのも、第一書記の先達であるフルシチョフ時代にソ連の宇宙開発が進展したということを踏まえてのことなのかもしれません。

 ちなみに、今回ご紹介の切手は、ソ連の衛星国としての東ドイツがソ連の歓心を買うため、スターリン時代に倣って発行したものですが、そもそも、フルシチョフはスターリンの個人崇拝を否定することで権力基盤を固めて来た人物ですからねぇ。この切手が発行されたのは1964年5月15日のことでしたが、それからわずか5か月後にはフルシチョフは失脚していますから、やはり、第一書記に個人崇拝は相性が悪いということなのかもしれません。

 北朝鮮では、昨年末、金正日追悼切手の1枚として、正日・正恩父子が並んだ写真の切手を収めた小型シートも発行されていますが、いずれ、金正恩単独の肖像をでかでかと取り上げた個人崇拝の切手が発行されるのでしょう。ただし、第一書記という自分の立場を忘れて、文字通りの絶対権力者であった父親の真似をして個人崇拝切手を乱発するようになると、フルシチョフの先例に倣った宮廷クーデターが発生することになるかもしれませんな。


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この記事のコメント
#2181 称号
 当初の報道を聞いて、今回は党役職の総書記だけ永久称号にして国家元首の国防委員長はどうするのだろうと思っていたら、こちらも同様にされましたな。社会主義国家は国家と党が一体ではありますが、二代目は国家と党の両方の永久称号を得た。
 「金氏朝鮮」は世襲共和制と言う点だけでも特異なのに、国家元首の肩書も代々変化していくと言うのは他国に例があるのだろうか。昔の唐王朝で、皇族(後の二代皇帝太宗)が就任した事のある役職・尚書令が後に常時空席になって、次官級が事実上のトップになった、と言う例はある。
 さて今後も「金氏朝鮮」が続くなら、総書記、第一書記に続いて大書記、筆頭書記、上級書記、最高級書記、特別書記、特級書記、書記その一、スーパー書記、デラックス書記、ゴージャス書記等とでも続くのでしょうか。
2012-04-14 Sat 13:02 | URL | いわゐ將軍 #B7q/.fmY[ 内容変更] | ∧top | under∨
 ・ いわゐ將軍 様
 まぁ、かつての中国・朝鮮の王朝は、初代が太祖、2代目が太宗で、以下、X宗と続きますからねぇ。金氏朝鮮も、3代目以降、XX書記が続くというのも、彼らなりに理にかなったことなんでしょうな。
2012-04-21 Sat 19:29 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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