内藤陽介 Yosuke NAITO
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 太陽節
2012-04-15 Sun 23:55
 1912年4月15日に金日成が生まれてから100周年になるのを記念して、北朝鮮では、きょう、平壌で大規模な軍事パレードと閲兵式が行われ、先ごろ朝鮮労働党第一書記に就任した最高指導者の金正恩が、初めて公の場で演説。金正日路線の継承を改めて宣言しました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

      金日成生誕50年     手を挙げる金正恩

 左は、1962年4月14日に発行された“金日成元帥誕生50周年記念”切手の1枚です。画面の右半分は金日成の肖像のアップですが、左側には手を挙げて群衆に応える金日成の姿が描かれています。参考までに、ネット上の報道写真で似たようなポーズの金正恩の画像も貼っておきます。金日成がスーツにネクタイ、金正恩が人民服という違いはありますが、比べてみると、祖父と孫が非常によく似ていることがあらためてわかります。

 さて、北朝鮮の建国以来、国家の最高権力を維持し続けた金日成ですが、彼の誕生日にあたる4月15日が現在のように“太陽節”と命名されたのは、彼の没後3周年にあたる1997年7月8日のことです。すなわち、同日付で、朝鮮労働党中央委員会、同中央軍事委員会、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会、同中央人民委員会、同政務院の連名による決定書「偉大なる首領・金日成同志の革命生涯と不滅の業績を末永く輝かせるために」が発せられ、これにより、彼の生まれた1912年を元年とする“主体年号”を使用するとともに、4月15日を太陽節と命名することが正式に決定されたというわけです。

 金日成はソ連占領下の北朝鮮で権力を掌握し、早くも、1946年には肖像入りの切手も発行されていますが、彼の誕生日が、国家的規模で祝われるようになったのは、中国派・延安派の粛清を通じて彼が独裁的権力を掌握した1960年代以降のことで、記念切手としては、今回ご紹介している1962年のものが、純粋に金日成誕生日を祝う最初のケースとなりました。

 その後、しばらく金日成誕生日の切手は発行されませんでしたが、1968年、突如、彼の誕生日に際して彼の肖像を描く切手と彼の幼年時代を題材とする切手が発行されました。これは、中国の文化大革命での金日成批判に反応した北朝鮮当局が、対抗措置として金日成の神格化を進めたことの一環として行われたものと考えられます。以後、1977年まで、原則として毎年4月15日には“金日成”に関する記念切手が発行されました。ただし、これらの記念切手は、いずれも、実質的には彼の誕生日を記念する切手であるものの、形式的には“金日成誕生日”ではなく、一応、別の題目で発行されています。ちなみに、金日成の誕生日が“全民族最大の祝日”として正式に決定されるのは、1974年のことでした。

 その後、1978年から1981年までは、金日成の誕生日に金日成関連の切手が発行されていません。この時期、党大会の開催が1980年10月までずれ込むなど、北朝鮮の経済不振は深刻さを増していたため、金日成としても、自らの誕生日の記念行事の規模を縮小せざるを得なくなり、それに伴い、記念切手の発行も見送られていたのでしょう。

 ところが、1980年の党大会で金日成の後継者としての地位を確保した金正日が、1982年の金日成古希記念事業を積極的に推進したことをうけて、1982年には金日成古希の記念切手が発行されています。そして、1984年以降、毎年4月15日に金日成誕生日の記念切手が発行されるようになりました。

 1980年代以降の金日成誕生日の記念切手は、それ以前のものが金日成の生涯やその事跡を題材として取り上げているのに対して、万景台の彼の生家や発行当時の彼の肖像を取り上げたものが主流となっています。これは、1980年代以前の記念切手が、純粋に金日成個人崇拝を強化する目的で発行されていたのに対して、1980年代以降は、金日成神格化の余徳により金正日の権威を強化することに力点が置かれていたことによるものでしょう。それを裏付けるかのように、1994年7月、金日成が亡くなった後も彼の誕生日には記念切手が発行されつづけ、1998年以降は現在いたるまで太陽節の記念切手が発行されています。金正日の息子という以外に権力正統性の根拠を持たない金正恩もまた、その路線を継承せざるを得ないことは言うまでもありません。

 ちなみに、北朝鮮では、金日成に対して“首領(様)”との敬称を付けることになっていますが、以前は、この切手にみられるように金日成元帥、金日成首相という呼称もしばしば用いられていました。ところが、このうちの元帥に関しては、ハングル表示の원수 が“怨讐(恨みつのった復讐すべき敵)”を意味する語と同音になるため、忌避されるようになったとも言われています。

 29歳の新たな権力者は、権力の座だけではなく、国民の積年の恨みをも祖父・父から引き継いだわけですが、現在伝えられている情報を見る限り、どうも、彼にはその自覚は乏しいようですな。


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