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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ラタキア
2012-07-20 Fri 09:29
 内戦状態が続くシリアでは、おととい(18日)、首都のダマスカスでダウド・ラジュハ国防相や、アサド大統領の義兄アーセフ・シャウカト国防次官、ハッサン・トルクマニ元国防相ら政権幹部が死亡する事件が起きましたが、これと前後して(正確な時期は現時点では不明)、大統領が首都ダマスカスを離れ、北西部のラタキアに逃れていたことが、きのう(19日)になってわかりました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

       ラタキア加刷(1931)

 これは、1931年、フランス委任統治下で発行されたラタキア加刷の切手です。

 ラタキアは、現在のシリア北西部、地中海に突き出した半島に位置する港湾で、人口の規模としては、ダマスカス、アレッポ、ホムスに次ぐシリア第4位の都市となっています。

 オスマン帝国の時代以来、ラタキア周辺はイスラムの一分派で、アサド大統領も属するアラウィー派の多い地域でした。

 第一次大戦後、フランスは現在のシリア国家の領域を委任統治下に置き、典型的な分割統治を行いました。その一環として、1922年、シリアはダマスカス国、アレッポ国、エッドゥルーズ(ドゥルーズ派国)、アラウィー派国)の緩やかな連邦に再編されます。このうち、アラウィー派国はラタキアを中心とする海岸部に設定され、アラウィー派住民による自治が認められました。

 その後、1930年9月、アラウィー派国はラタキア国と改称され、その領域は地中海岸から内陸の山脈までの範囲と設定されました。今回ご紹介の切手は、これに伴い、ラタキア国用の切手として、フランス委任統治領シリア切手に加刷して発行されたものです。

 その後、シリアでフランスからの独立運動を求める民族主義運動が発生すると、1936年、フランスは妥協策としてフランス・シリア友好条約を締結。結果的に第二次大戦により延期されたものの、3年後の完全独立が決められ、アラウィー派国とドゥルーズ派国はシリア本土に合流することになりました。

 ところで、旧ラタキア国ではアラブ系が多数派を占めていましたが、例外的に、アレクサンドレッタ県ではトルコ系住民が多かったため、アラブが圧倒的多数を占めるシリアへの合流に反対が強く、分離運動が展開されていました。このため、1937年、国際連盟は、アレクサンドレッタ県をハタイ自治州とし、トルコ語を公用語として自治政治を行う一方、財政・外交をシリアが管理する仲裁案を提示します。

 ところが、国際連盟の仲裁案を受けて、1938年にフランスの監視下でこの地域で議会選挙が行われると、トルコ系議員が過半数を獲得。同議会はハタイ独立共和国の独立を宣言してしまいます。その後、トルコとフランスの軍事的管理下を経て、1939年7月、ハタイは国民投票に基づいてトルコの県となり、この地域のアラブやアルメニア人はハタイから離れ、シリアの他の地域に移住していくことになりました。

 一方、旧ラタキア国のうち残りの地域は、1946年4月のシリア独立に伴い、ラタキア県となり、現在にいたっています。

 さて、現在、大統領が反体制派掃討作戦を指揮しているとされるラタキアは、上述のように、伝統的に大統領の属するアラウィー派の拠点で、情勢は比較的安定しているようです。もともと、ダマスカスやアレッポなど、シリア本土とは背景が異なる地域であるうえ、天然の良港で近郊には豊かな農地が広がっており、陶磁器・タバコなどの輸出産業もあることなどを考えると、反体制派が他の地域を制圧しても、大統領と現政権はラタキアとその周辺を基盤に抵抗をつづけ、シリア国家が分裂することも起こりうるかもしれません。そうなった場合、ラタキアを拠点とするアサド政権の切手は、“ラタキア切手”と俗称されることになるのでしょうか。もっとも、アサド政権としては、自分たちこそがシリアの正統政府であるという建前を崩さないでしょうから、みずから“ラタキア”表示の切手を発行することはないでしょうけれど。


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