内藤陽介 Yosuke NAITO
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 シリアで邦人ジャーナリスト殉職
2012-08-21 Tue 16:13
 内戦状態のシリアの北部アレッポで、きのう(20日)、日本人女性ジャーナリストの山本美香さんが取材中に戦闘に巻き込まれ死亡しました。謹んでご冥福をお祈りいたします。というわけで、きょうはアレッポ関連のマテリアルを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

       アレッポ・OMF加刷カバー

 これは、1921年6月4日、アレッポからイスタンブール宛に差し出されたカバーで、仏領委任統治下のOMF加刷切手が3枚貼られています。

 第一次大戦中、英仏が結んだサイクス・ピコ秘密協定により、戦後、現在のシリア・レバノンならびにイラクの北部にほぼ相当する地域はフランスの勢力圏とすることが規定されます。しかし、大戦が終結した時、フランスはベイルートやアレキサンドレッタ、ラタキア対岸のルアド島などを占領していたものの、その占領地域はごくわずかで、ダマスカスを解放したのはファイサルのアラブ軍とアレンビーのイギリス軍でしたし、内陸部の広大な地域はイギリスの占領下に置かれていました。さらに、フサイン・マクマホン書簡での密約(アラブがイギリスと共にオスマン帝国と戦えば、戦後、アラブの独立国家樹立を認めるというもの)もあって、シリア地域では、ダマスカスの陥落とともに、ファイサルを首班とするアラブ政府の樹立が宣言されていました。

 そこで、大戦の終結によりフランスとアラブの双方から密約の履行を迫られたイギリスは、ベルサイユ会議で、戦後のシリア・パレスチナ地域を、①イギリス支配の南部OETA(敵国領土占領行政区域:Occupied Enemy Territory Administration):現在のイスラエル国境とほぼ同じパレスチナ、②アラブ支配の東部OETA:アカバからアレッポにいたる内陸部、③フランス支配の西部OETA:ティールからキリキア(シリアとトルコの国境地帯で、現在はトルコ領)にいたるレバノンとシリアの海岸地帯、に分割するという妥協案を通します。

 これに対して、フランスは、あくまでもサイクス・ピコ協定の遵守を求め、シリアにおける自国の権利を主張。このため、フランスとアラブの板ばさみとなったイギリスは、1919年9月、シリア地方からの撤兵を表明。これを受けて、同年11月以降、西部OETAではフランス軍が、東部OETAではアラブ軍が、それぞれ、イギリスに代わって占領行政を担当することになりました。

 なお、イギリス軍の撤退を受けて、ファイサルのアラブ政府は自らの存在を既成事実化して国際社会の認知を受けるべく、1920年3月、ダマスカスでシリア国民大会を開催し、ファイサルを国王とする立憲君主国アラブ王国の独立を宣言します。

 しかし、英仏両国はアラブ王国の存在を無視し、1920年4月に始まったサンレモ会議(同年1月に発足した国際連盟の最高理事会)では、フランスは、イラク北部のモースルの支配を放棄する代償として、イギリスに対して現在のシリア・レバノンの地域を自らの勢力圏とすることを最終的に承認させることに成功。当然、アラブ側は完全独立の要求と委任統治の拒否を決議してこれに抗議しましたが、同年6月、英仏両国は、これを無視して、それぞれの勢力圏内での委任統治を開始。全シリアを軍事占領したフランスは、同年7月、ファイサルを放逐してアラブ王国を崩壊させました。

 今回ご紹介のカバーに貼られている切手は、こうした状況の下、フランス軍事占領下の“シリア”全域で使用するためのものとして、本国切手に「フランス軍事占領(地域)」を示すフランス語(Occupation Militaire Francais)の頭文字O.M.F.ならびに「シリア」の文字が加刷されています。

 第一次大戦後のフランスの中東政策の基本は、キリスト教徒が住民の過半数を占める大レバノンを創設し、これを残りの“シリア”から切り離して分割統治を行うというものでしたが、そうした方針とは裏腹に、初期の段階ではO.M.F.加刷切手がフランスの占領地域全域で使用されています。

 
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