内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 切手が語る宇宙開発史(21)
2012-09-09 Sun 11:23
 ご報告が遅くなりましたが、 雑誌『ハッカージャパン』の2012年9月号が出来上がりました。僕が担当している連載「切手が語る宇宙開発史」では、今回は、1959-60年の北朝鮮とソ連のルナ1-2号の関係を取り上げましたが、その中から、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

        北朝鮮ルナ2号(1960)

 これは、1960年に北朝鮮が発行したルナ2号を称える切手で、背景には、ソ連の象徴としてクレムリンも描かれています。

 1956年、フルシチョフによるスターリン批判を契機として、北朝鮮でも金日成個人崇拝に対する批判が発生。また、同年8月には、ソ連国籍を有するなどソ連と関係の深いソ連派の朴昌玉が、中国共産党中央と関係の深い延安派の崔昌益らとともに、党全員会議で公然と金日成批判を行う8月宗派事件が発生しました。

 8月宗派事件を抑え込んだ金日成は、1958年までに、中ソ両国と関係のある“反党分派”勢力を根こそぎ弾圧し、ソ連・中国の影響を排して自主路線を模索するようになります。

 1959年1月にソ連がルナ1号の打ち上げに成功したことを受けて、北朝鮮は4カ月後の同年5月にソ連の宇宙ロケットを称える記念切手を発行したものの、9月のルナ2号打ち上げ、10月のルナ3号打ち上げを称える記念切手はなかなか発行されませんでした。おそらく、1959年末の時点では、自主路線を取りつつあった北朝鮮は、あいつぐソ連の“成果”に逐一つきあって記念切手を発行していたのではキリがないと考えていたものと思われます。

 ところが、1960年に入ると、北朝鮮を取り巻く国際環境に大きな変化が訪れます。

 まず、1960年1月、日米安保条約が改定されて新安保条約(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力および安全保障条約)が調印され、同年6月に自然成立しました。これに対して、ソ連は安保改定を自国への挑戦と受け止め、日本国内の安保反対闘争に多大な援助を行っていましたが、もともと、東アジアにおけるソ連の藩屏としてソ連によって建国された北朝鮮にとっても、安保改定は脅威と受け止められました。

 さらに、1960年4月には、韓国で選挙不正に対する抗議運動から李承晩政権が退陣に追い込まれ、朝鮮半島情勢が不安定化していました。

 遅ればせながら、1960年7月15日になって北朝鮮が前年9-10月のルナ2・3号の打ち上げ成功を称える記念切手を発行したのは、こうした国際環境の変化に対応すべく、自主路線を掲げながらも、従来通り、ソ連が軍事的な後ろ盾になっていることをアピールしようとしたためと考えらます。

 ちなみに、北朝鮮に限らず、当時、切手を実際に発行するまでの制作準備期間は、一般に3-4ヶ月ほどでした。そこから逆算すると、北朝鮮がルナ2・3号の切手制作を開始したのは、1960年の3-4月頃となります。日本国内で安保闘争と韓国で李承晩退陣を求める抗議運動が高揚しつつあった時期と一致しているのも、決して偶然ではないでしょう。


 ★★★ 内藤陽介、カルチャーセンターに登場 ★★★
   
 9月下旬から、下記の通り、首都圏各地のよみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)で8月の韓国取材で仕入れたネタを交えながら、一般向けの教養講座を担当します。詳細につきましては、青色太字をクリックしてご覧いただけると幸いです。皆様のご参加を心よりお待ちしております。(掲載は開催日順)

 公開講座 ソウル・国立中央博物館へ行ってみよう
・よみうりカルチャー北千住 9月19日(水)13:00-15:00

 T-moneyで歩くソウル歴史散歩 
・よみうりカルチャー荻窪
 10月2日、10月30日、12月4日、1月29日、2月5日、3月5日 13:00-14:30
 
・よみうりカルチャー北千住
 10月17日、12月19日、1月16日、2月20日、3月20日 13:00-15:00


 ★★★★ 電子書籍で復活! ★★★★

 歴史の舞台裏で飛び交った切手たち
 そこから浮かび上がる、もうひとつの昭和戦史

         切手と戦争

   『切手と戦争:もうひとつの昭和戦史』
    新潮社・税込630円より好評配信中!

 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★

 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。
スポンサーサイト

別窓 | 北朝鮮:金日成時代 | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< 大工大の衛星、印で打ち上げ | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  APEC首脳会議ウラジオで開幕>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/