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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 人権救済法案を閣議決定
2012-09-20 Thu 00:41
 日本政府は、きのう(19日)、法務省の外局に“人権委員会”の設置を柱とする人権救済機関設置法案(人権救済法案)を「次期国会の提出を前提として法案の内容を確認する」とした閣議決定を行いました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

       人権宣言50年(クウェート)

 これは、1998年にクウェートが発行した世界人権宣言50年の記念切手です。

 “基本的人権の尊重”ということに異議を唱える人は、まずいないだろうと思います。しかし、人権の尊重や用語といった場合、その内容についてはさまざまな議論があり、容易に結論が出るものではありません。

 たとえば、イスラム世界における女性の問題などは、その典型的な事例と言えましょう。

 すなわち、コーランでは、女性は保護されるべき存在であるとされています。この“保護”の考え方は、たとえば、戦争などで男女の人口バランスが崩れた場合などに経済的に余裕のある男性が“平等に愛する”との前提で複数の妻をめとることが認められるというロジックや、未婚女性の純潔を守ることが一族の名誉となるという考え方に結びついています。

 ただし、現実には“保護”の名の下に男性が女性を恣意的に扱ったり、女性の権利が著しく制限されていたりすることも珍しくありません。たとえば、未婚女性の純潔を守ることが一族の名誉であるということは、裏を返せば、未婚女性がセックスを体験したことが明らかになると一族の名誉が失墜するという発想につながります。このため、かつてのエジプトの農村では、新婚初夜に花嫁が処女でなかったことが判明すると、翌朝、ナイル川にウェディング・ドレス姿の死体が浮かんでいるという悲劇も少なからずあったようで、そうしたことを防ぐためと称して、未婚女性を男性の目の届かない環境に置く、すなわち、一般社会から隔離して、学校にも行かせなければ、町への買い物にも行かせない、それゆえ、お金もほとんど渡さないというようなことも珍しくありませんでした。かつてアフガニスタンのほぼ全域を支配していたタリバン政権下で、女性の権利や教育、社会進出が極端に制限されていたのは、こうした発想によるものです。

 当然のことながら、こうした女性の“保護”は西側世界の人権感覚からすると非難の対象となるわけですが、それでは、イスラム社会のすべての女性が抑圧の下で苦しんでいるとみなしうるかというと、ことはそう単純ではありません。

 たとえば、イスラム教徒の女性が公衆の面前で髪を隠すのは、髪を男性に見せると男性の劣情を刺激し、貞操の危機につながりかねないとの考えによるものですが、ベールの着用を疎ましくいる女性がいる半面、イスラム教徒であることを強く自覚し、公衆の面前で髪を見せることを“恥ずかしい”と感じているがゆえに、自らの意思でベールを着用したいと考える女性も少なくありません。こうした状況を無視して、一方的にベールの着用イコール女性の人権侵害と短絡的に非難しても、結果的に、いわゆる人権屋さんの自己満足にしかならないということも十分にあり得ます。

 もちろん、世界の多くの国や地域において男女に等しく認められている権利を、“保護”を理由に女性には与えないままにしておいてもよいということにはならないのは当然で、そのあたりをどのように伝統的な価値観と折り合いをつけて行くかはなかなか難しい問題です。

 今回ご紹介のクウェートの切手が、ヒジャブ姿の女性の上に大きくクエスチョン・マークを書き、“我々の人権”と左上に記しているのも、まさに、こうした状況を反映したものと言ってよいでしょう。

 さて、今回、政府が閣議決定した人権救済法案ですが、その内容たるや、今回ご紹介の切手もびっくりの大きな疑問符のつくものとして問題視されています。

 まず、法案は「不当な差別や虐待で人権侵害を受けた被害者の救済」を目的としたものですが、“人権侵害”の定義がきわめて曖昧です。すなわち、法案の第2条では「人権侵害とは、不当な差別、虐待その他人権の侵害をいう」とされていますが、これだけではどのようにでも解釈できてしまいます。極論すれば、人権委員会が認定しさえすれば何でもアリということになりかねません。

 つづいて、法案では人権委員会はいわゆる“3条委員会”として設置することになっています。3条委員会は、政府の管轄下ですが、裁判所や警察とは無関係の組織であるため、その運用は極めて慎重でなければなりません。ところが、法案(第11条第2項)では、委員の要件として「委員長及び委員の任命に当たっては、委員のうちに人権の擁護を目的とする団体若しくは人権の擁護を支持する団体の構成員、または人権侵害による被害を受けたことのあるものが含まれるよう努めなければならない」とされており、“人権侵害の被害者”が優先的に選ばれることになっています。“人権侵害”の定義があいまいなうえに、その被害者と称する人が、彼らによって加害者とされた人を一方的に告発するということは、明らかにフェアではないでしょう。被害者(と称する人)が加害者(とされた人)に対して一方的に復讐するのではなく、専門家が第三者の立場で法に照らし、客観的な証拠に基づき、公正に裁くというのが近代法の大原則であるはずですが、人権委員会は、まさにこうした原則を捻じ曲げたものでしかありません。

 さらに、法案では、人権委員についての国籍条項がありません。このため、外国人が自国の利益に反する日本人を“人権侵害”の名目で告発し、圧力をかけることも可能です。また、一般国民の言論や行動を規制しようとする一方で、マスメディアに対する規制は設けないとしている点も、“法の下の平等”に反する重大な問題点です。

 こうした内容の人権救済法案が通ってしまうと、たとえば、「北朝鮮による日本人拉致事件を糾弾することは在日朝鮮人の名誉を傷つける人権侵害である」とか「中国共産党政府によるチベットやウイグルでの人権侵害を批判することは、中国に対する差別的言動である」などという理由で告発される可能性が出てきます。なにせ、法案では、差別された(と称する)在日朝鮮人や中国人が個人として訴えれば良いわけですから…。当然、僕のブログも閉鎖に追い込まれ、僕自身も身柄の拘束や家宅捜索を受ける可能性は否定できません。まぁ、そうなったらそうなったで、以後、僕はそのことを“勲章”とし、物書きとしての活動を続けて行こうと思いますが…。

 当然のことながら、こうしたトンでも法案については与野党をとわず批判が強く、政権内でも、松原仁国家公安委員長は反対の立場をとっていました。それを、松原委員長が海外出張中で閣議に出席できない隙を突くようなかたちで、今回、閣議決定をしてしまったというのは、それじたい、法案のいかがわしさを裏書きしているようなものです。法案の内容が真実に国民のためになると自信を持っているのなら、法案に反対しているという理由で松原委員長を堂々と罷免し、そのうえで、閣議決定すればよいのですから。

 昨今の中国や韓国のように、国内の不満から目を逸らすために、対外的な強硬手段に訴えるという事例は枚挙に暇がありませんが、対外的な危機で国民の目がそちらに向いている隙に、国民にとって不都合な法案をごり押ししようとするのは実に卑劣なことだといわざるを得ません。そういえば、“社会保障と税の一体改革”と称していながら、結局は消費増税だけしか決まらなかったことや、解散・総選挙を行うための定数是正はほとんど手付かずの状態であることなども、竹島と尖閣の問題で吹っ飛んでしまったかの感がありますな。

 民主党政権による中韓両国への過剰なまでの配慮が今回のような事態を招いたという指摘が盛んに行われていますが、結果的に、昨今の両国の対日攻勢が民主党政権の非道をアシストしているというのが現実でしょう。その意味では、民主党政権は大いなる“外交的成果”をあげているわけで、実に腹立たしいことです。


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この記事のコメント
#2222 絶対こんな法案ダメ!
ミンス党は日本を滅ぼすつもりだ!
2012-09-20 Thu 20:12 | URL | hillsidecnx #mQop/nM.[ 内容変更] | ∧top | under∨
・hillsidecnx 様

 おっしゃる通り。自民党(時代)を礼賛するつもりは全くありませんが、“ミンス党”が許しがたい連中であることには変わりありません。
2012-09-21 Fri 11:51 | URL |  内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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