FC2ブログ
内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 チェチェン・ローカル加刷
2013-04-21 Sun 09:27
 米国ボストンマラソンで起きた爆弾テロ事件は、きのう(米国時間19日夜)、容疑者として特定されたチェチェン人兄弟のうち、逃走中の弟ジョハル・ツァルナエフが逮捕され、発生から5日目で解決に向かうことになりました。というわけで、きょうはチェチェンがらみでこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

        チェチェン・ローカル加刷カバー

 これは、1993年、チェチェン共和国の首都グロズヌイからリトアニア宛の書留便で、チェチェンのローカル加刷切手が発行されています。

 現在、ロシア連邦内のチェチェン共和国となっている地域は、北カフカースの北東部に位置しており、18世紀以降、先住民族であるチェチェン人の激しい抵抗を抑え込んで、ロシア帝国が支配下に組み込みました。

 首都のグロズヌイは、1818年、ロシアの前哨基地として要塞が築かれたことに始まり、1850年に油田が発見されたことで、20世紀以降、ロシアの油田地帯の中核となり発展。ソ連時代はチェチェン自治州、後にチェチェン・イングーシ自治ソヴィエト社会主義共和国(以下、チェチェン・イングーシ自治共和国)の首都となりました。

 いわゆる独ソ戦さなかの1942年、ドイツ軍はソ連領内・北西カフカースの地に迫り、チェチェン・イングーシ自治共和国の一部地域はドイツ軍の占領下に置かれました。首都のグロズヌイはソ連有数の石油産業の中核都市であったため、ドイツ軍の激しい空襲にさらされ、1942年10月10日から15日にかけて市内中心部は激しい火災に見舞われています。

 これに対して、チェチェン人を含む“反ロシア的”な民族がドイツ軍と結んで反抗することを恐れていたスターリンは、カフカースからドイツ軍を撃退した後の1944年2月、チェチェン人とイングーシ人に対独協力の疑いをかけ(実際には、そのほとんどはドイツ軍とは無関係でした)、全チェチェン人とイングーシ人50万人を中央アジアやシベリアに追放。さらに、1946年には、チェチェン・イングーシ自治共和国は廃止され、ウラジカフカスを含む領土の大半は北オセチア自治共和国に割譲されてしまいました。今回の事件の容疑者の一家が、キルギス出身のチェチェン人というのは、こうした事情によるものです。

 その後、スターリンが亡くなり、フルシチョフによるスターリン批判が開始されると、チェチェン人・イングーシ人は対独協力の冤罪を晴らされて名誉が回復され、チェチェン・イングーシ自治共和国の再建が認められました。しかし、追放されていた間に、チェチェン人・イングーシ人の土地にはロシア人・オセット人などが入植していて元の土地所有者との対立が頻発したほか、旧チェチェン・イングーシ自治共和国領のうちウラジカフカスを含む西部は北オセチアから返還されず、また、石油産業の利益も地元に還元されずにモスクワに吸い上げられていたということもあって、チェチェン人・イングーシ人のモスクワに対する不満は鬱積していくことになりました。

 こうした背景の下、ソ連末期の1990年に11月にチェチェン・イングーシ自治共和国がソ連邦からの独立を宣言。1991年5月、チェチェン・イングーシ自治共和国はチェチェン・イングーシ共和国に改名されました。その後、チェチェン共和国とイングーシ共和国は分割され、同年11月、チェチェンがソ連からの独立を宣言します。

 ソ連は、チェチェンの独立を承認しないまま1991年12月に崩壊しましたが、後継のロシア大統領ボリス・エリツィンは、1994年、チェチェンの連邦からの独立を阻止するため4万のロシア連邦軍を派遣し第一次チェチェン紛争に突入することになります。

 今回ご紹介のカバーは、こうした時期の使用例で、切手はソ連時代のものに“イスラム”の文字や月と星を加刷したものですが、消印はソ連時代の鎚と鎌の紋章が入ったものがそのまま使われており、いかにも過渡期の郵便物といった感じです。

 さて、今回の事件は容疑者として逮捕された人物はチェチェン人で、先に死亡した共犯(主犯格?)の男(逮捕された男の兄)はイスラム過激派との関連もささやかれています。ただし、仮に彼らが、イスラム過激派ないしはロシアからのチェチェンの分離独立を求める活動家であったとしても、なぜ、ボストン・マラソンが攻撃の対象になったのかは常人には理解しがたいですな。まずは、彼らが真犯人であるかどうかの確認を含めて、犯行の動機や背後関係について、今後の捜査に注目したいところです。


 ★★★ テレビ出演のご案内 ★★★

 NHK教育テレビ 2013年4月23日(火) 23:00~ 「知恵泉」

 今回は「前島密」の特集で、内藤がゲスト出演して、郵便という新たなプロジェクトを立ち上げた実務家としての前島の人間的魅力についてお話します。ぜひ、ご覧いただけると幸いです。なお、放送番組の常として、大事故・大事件など突発的な事情により、番組の内容・放送時間等が変更になる可能性もありますが、予めご了承ください。(番組HPはこちらです)


 ★★★ 内藤陽介の最新作 ★★★

       マリ近現代史
         『マリ近現代史』

 絵葉書・切手ほかヴィジュアル満載、オールカラーの本格的通史!
 マリ問題とその歴史的背景を分かりやすく解説 

 版元ドットコムで好評発売中のほか、アマゾンでも予約受付中!

 本書の刊行を記念して、以下の日程でトーク・イベントを行います。

・4月27日(土) 15:00- 『マリ近現代史』出版記念トーク
 於 東京・浅草 都立産業貿易センター台東館6階特設会場
 スタンプショウのイベントの一つとして、出版記念のトークを行います。入場は完全に無料ですので、ぜひ、遊びに来てください。


 ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★   

 4月から、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。開催日は5月7日、6月4日、7月2日、7月30日、9月3日(原則第一火曜日)で、時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。


 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★

 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。
スポンサーサイト

別窓 | ロシア連邦 | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< 佐藤琢磨がインディ初優勝 | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  第80回郵政記念日>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/