内藤陽介 Yosuke NAITO
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 マリ政府“和平協定”に調印
2013-06-20 Thu 14:06
 マリ政府とトゥアレグ人反政府勢力“アザワド解放全国運動(MNLA)”は、おととい(18日)、隣国ブルキナファソの首都ワガドゥグで、との間で北部キダルでの投票に関する合意文書(報道では、これが“和平協定”と言われているようです)に調印しました。これにより国家再建への重要ステップとして、来月に予定されている大統領選挙は全土での実施に向けて弾みがつくと見られています。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

       仏領スーダン改値加刷

 これは、1927年、マリの前身にあたる仏領スーダンの20フランの加刷切手です。切手は、1914年に仏領オート・セネガル・ニジェール用に発行されたトゥアレグ人を描く5フラン切手に、1921年、仏領植民地の再編に伴い“SOUDAN(スーダン)”と加刷して発行されたものに、さらに、1927年に額面改定の加刷を施して発行されたものです。

 さて、仏領時代、遊牧民であるトゥアレグ人は砂漠地帯を比較的自由に往来し、昔ながらのラクダの隊商で生計を立てていました。また、彼らの多くは、フランス植民地当局による西洋式の教育を拒んだため、アフリカ系とは違って、官僚機構を担いうる知的エリート層が形成されませんでした。

 1960年代に入り、仏領西アフリカ連邦が解体され、連邦を構成していた各植民地が個別に独立国となると、トゥアレグ人の居住地域も、ニジェール、マリ、アルジェリア、リビア、ブルキナファソの各国に分割されることになりましたが、このうち、特に多くのトゥアレグ人口を抱えるようになったのが、マリとニジェールです。

 しかし、マリ、ニジェールの両国においてはフランス語のみが公用語とされ、トゥアレグ人の言語であるトゥアレグ語(タマシェク語)は排除されたため、植民地時代にフランス語教育を拒否してきたトゥアレグ人が、独立後の新国家で社会的な地位を得るのは困難でした。一方、トゥアレグ人の側は、新政府による“近代化”政策を重大な文化侵略と受け止めていました。さらに、新たに誕生した“国境”により、かつてのような自由な往来が(少なくとも建前上は)制限されるようになったこととも、トゥアレグ人にとっては不満でした。

 こうしたことから、マリでは独立以来いくどとなくトゥアレグ人の反乱が発生していますが、今回問題となったキダル州は、1990年に発生した反乱の和平協定として1991年にアルジェリアの仲介で結ばれた停戦協定(タマンラセット合意)を受けて、1991年8月8日に設定されたものです。キダル州はマリとニジェールおよびアルジェリアとの国境地帯に位置しており、トゥアレグ人に対する宥和政策の一環として、州内での自治権が大幅に認められました。

 このように、もともとトゥアレグ人の勢力が強いキダル州ですが、昨年来の内戦では、当初、反政府で一致していたトゥアレグ人とイスラム過激派のアンサール・ディーンが対立し、フランスによる軍事介入まで、アンサール・ディーンの実効支配下に置かれていました。現在でも、イスラム勢力は相当規模の武器と兵力を維持しており、北部の砂漠ないしは山岳地帯を拠点に活動を継続しています。したがって、マリ政府とトゥアレグ人との合意は成立したとはいえ、依然として不安定要因は少なからず残っているといえましょう。

 なお、このあたりの事情については、拙著『マリ近現代史』でも詳しくご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


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