内藤陽介 Yosuke NAITO
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 エジプト・ムルシー政権1年
2013-06-30 Sun 15:56
 エジプトで、2011年にムバーラク政権が崩壊した“1月25日革命”の後、選挙で勝利したイスラム同胞団出身のムハンマド・ムルシーが大統領が就任してから、きょう(30日)でちょうど1年になります。というわけで、きょうはこの切手を持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

       エジプト1月革命2周年

 これは、今年発行された1月革命2周年の記念切手です。

 2000年以降、エジプトのムバーラク政権は経済の自由化を進め、年間5-7%の経済成長率を維持していましたが、富の再分配が進まないまま物価は高騰。この結果、国民の格差は拡大し、20代の失業率は2割を越え、国民の約2割が1日2米ドル以下で、4割以上が1米ドル以下で生活するという状況が生まれています。さらに、サダト暗殺以来、29年間にわたって独裁体制を維持してきたムバーラク政権下では政府による言論の弾圧も常態化していたことも、国民の不満を醸成していました。

 こうした状況の中で、2011年初、チュニジアでいわゆるジャスミン革命が発生。これに感化された人々がフェースブックを使って、前年(2010年)6月、アレクサンドリアの若者ハーリド・サイードが警官による押収麻薬の横流しをインターネットで告発しようとしたところ、警官の激しい暴行を受けて殺害された事件をふまえ、1月25日を「警察の日」ならぬ「怒りの日」にしようと呼びかると、同日、各地で抗議行動や暴動が拡大しました。これが、いわゆる“1月25日革命”の発端で、2月11日、ムバーラクは退陣に追い込まれました。

 ムバーラク政権の崩壊後、エジプトでは国軍最高評議会による暫定統治期間を経て、民政移管に向けた準備が進められ、2011年11月28日から2012年1月3日まで3回に分けて行われた人民議会選挙ではイスラム教系の政党が7割を占めて圧勝します。その後、5月23-24日に行われた大統領選挙では、イスラム穏健派のムハンマド・ムルシーが1位となったものの過半数の票を獲得できなかったため、6月16-17日、第1回投票で2位となった元首相のアフマド・シャフィークとの決選投票が行われ、ムルシーが当選。同月30日にムルシー政権が正式に発足しました。

 しかし、すでに決選投票の時点で、イスラム系のムルシーと旧ムバーラク政権の幹部であったシャフィークの一騎打ちとなったことに不満を抱く者も多く、政権発足後もそうした国民の不満は解消されないまま、政権と野党との対話は進展せずに政治の空転が続きました。

 この結果、革命の混乱により外国人観光客が激減して主要産業である観光が大打撃を受けたこともあり、経済状況も急速に悪化。失業者数は革命前から100万人以上増えて343万人、失業率は12%にも達し、食料品も小麦が約28%、卵が約22%、牛乳や鶏肉が約15%値上がりするなど、国民生活は大きな打撃を受けましたが、イスラム組織を母体とするムルシー政権には経済政策の専門家はほとんどおらず、無為無策の状況が続いています。

 当然のことながら、こうしたムルシー政権に対しては国民の批判も根強いのですが、政権側は、大統領が自身に絶対的な権限を付与する憲法宣言を発したり、政権に批判的な活動家らを名誉毀損などの容疑で次々と拘束したりするなど強権的な手法で乗り切ろうとしたため、ますます国民の支持を失うという悪循環に陥っています。

 こうしたことから、政権発足を前に、今月下旬からエジプト各地では大統領の退陣を求める反政府デモが各地で激化。これに対して、大統領とその支持派は“国民の選挙で選ばれたこと”を根拠に一歩も引かない構えで、国を二分する対立は出口が見えない状況が続いています。

 いずれにせよ、アラブ随一の大国であるエジプトの混乱はアラブ世界全域に少なからぬ影響を与えることは必至で、しばらくは目が離せない状況が続きそうです。


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