内藤陽介 Yosuke NAITO
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 アジア萬歳
2013-08-15 Thu 14:24
 きょう(15日)は“終戦の日”です。というわけで、何を持ってこようかいろいろ迷ったのですが、とりあえず僕の最新作『蘭印戦跡紀行』の中から、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

       アジア萬歳     アジア萬歳・裏面

 これは、先の大戦中、ジャワ駐留の日本兵が差し出した軍事絵葉書で、裏面には「アジア萬歳」と題された戦争画が取り上げられています。葉書の日本兵と母子がとても良い雰囲気で気に入っているので、拙著の表紙にも使った1枚です。

 大戦中の3年強におよんだ日本占領時代の蘭印(オランダ領東インド、現インドネシア)については、人によって評価はさまざまだろうと思います。ただし、当初、現地の非オランダ人の多くが日本軍の進駐を熱烈に歓迎したことは厳然たる事実で、今回ご紹介の絵葉書にみられるような光景はいたるところで見られた現象でした。

 そもそも、大航海時代から数世紀にわたるオランダの植民地支配下では、現地の非オランダ系住民はほとんど無権利状態に置かれ、奴隷同然の扱いを受けていました。そうした中で、彼らの間には、かつてジャワ島東部を支配していたクディリ王国のジャヤバヤ王(ジョヨボヨ王とも。在位1135-57年)が、晩年、詩人のムプ=セダーとムプ=パヌルに命じて書かせた叙事詩『バラッダユダ』の次のような“予言”を心のよりどころとする人も少なくありませんでした。

 第5の時代、北方から黄色い人たちがやってきて、白い人を追い払う。
 黄色い人もインドネシアを支配するが、トウモロコシの花の咲く前に去っていく。
 
 蘭印の人びとにとって、北方からやってきてオランダ人を追い払った大日本帝国は、まさしく、この詩に出てくる“黄色い人”のイメージとぴったり重なっていましたから、非オランダ系の人々は日本軍の進駐を受け入れることにほとんど心理的な抵抗を感じなかったといわれています。もっとも、日本の占領時代がわずか3年強しか続かなかったという点で、後半部分の“トウモロコシの花の咲く前に去っていく”という予言も、ある意味では正しかったわけですが…。

 ちなみに、今回ご紹介の絵葉書には「アジア萬歳」の解説として以下のような文章が記されています。

 土民は皇軍を心から迎へた。
 空にはHIDOEP ASIA RAJA(アジア萬歳)のアドバルーンが悠々と浮かんでゐた空は涯しなくひろかつた。

 現在の視点、特に、「戦前の大日本帝国はとにかくすべて悪だった」という歴史観からすれば、この文章を“土民”に対する上から目線のプロパガンダに過ぎないと切って捨てることは簡単でしょう。しかし、それが仮にプロパガンダに過ぎなかったにせよ、当時の状況下では、現地の非オランダ人はオランダ人を駆逐した日本人に賭けるしかなかったこともまた事実です。実際、僕自身、インドネシア各地で、「日本人は厳しかったけど、とにかくいろいろなことを教えてくれたよ。わしがこれまでやってこれたのも、みんな日本時代に受けた教育や訓練のおかげだ」といった類の話をしてくれた老人に何人もお会いしています。本の帯にある「日本の兵隊さん、本当に良い仕事をしてくれたよ」というのも、ロンボク島の老婆から僕が実際に聞いた言葉です。

 もちろん、インドネシア共和国が最終的に独立を達成したのは、インドネシア国民(になった人々)がみずから血を流し、熾烈な対蘭独立戦争を戦った結果です。そのことは大前提として絶対に忘れてはなりません。その意味において、僕は、彼らの尊い犠牲を無視して「日本がインドネシアを独立させてやった」という類の議論をする人たちには絶対に与しません。ただ、その一方で、日本による占領という体験が触媒となって、結果的にそれが彼らの独立につながったということを、彼ら自身がポジティヴに語ってくれるのであれば、その気持ちは素直に、ありがたく受け入れるべきだろうと思います。そうした彼らの友情を無視して“日本軍によるアジア侵略”を嬉々として糾弾する日本人が少なからずいますが、そうした連中に対しては、心の底から軽蔑するという以外の感情しか沸いてきませんな。

 先日刊行されたばかりの拙著『蘭印戦跡紀行』は、そんな思いから、僕がインドネシア各地で実際に見聞した“日本”の痕跡について、切手や郵便物、絵葉書などを交えながらまとめてみたものです。機会がありましたら、ぜひ、お手に取ってご覧いただけると幸いです。


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 日本の兵隊さん、本当にいい仕事をしてくれたよ。
 彼女はしわくちゃの手で、給水塔の脚をペチャペチャ叩きながら、そんな風に説明してくれた。(本文より)

 南方占領時代の郵便資料から、蘭印の戦跡が残る都市をめぐる異色の紀行。
 日本との深いつながりを紹介しながら、意外な「日本」を見つける旅。

 * 出版元特設ページはこちらをご覧ください。

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