内藤陽介 Yosuke NAITO
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 ルーマニアの元王女(?)逮捕
2013-08-18 Sun 16:25
 1947年に退位したルーマニアのミハイ元国王(ルーマニア王国最後の国王)の三女、イリーナ(英語読み)・ウォーカーが、夫で地元保安官事務所の元幹部ジョン・ウォーカーらと、今年春までの約1年で少なくとも10回、闘鶏賭博を開設した疑いで、現地時間の16日までに逮捕されていたそうです。というわけで、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

        ミハイ・郵税免除証紙(航空)

 これは、1947年12月1日にルーマニアで発行された航空郵便用の郵税免除証紙です。郵税免除証紙は、この証紙が貼られた郵便物は料金無料で運ばれることを示すためのモノで、切手の下部にある“SCUTIT DE TAXA POSTALA”は郵便料金無料の意味です。なお、航空郵便用を示す“PRIN AVION”の加刷のない証紙は1947年9月に発行されました。

 ルーマニア最後の国王となったミハイ元国王は、1921年に皇太子カロル(後のカロル2世)の長子として生まれました。当時の国王は祖父のフェルディナンド1世でしたが、国王は1927年に崩御。このため、本来であれば、父のカロルがカロル2世として即位するはずでしたが、父親は恋愛関係のもつれから王位継承権を放棄して愛妾とともに国外へ逃亡。このため、孫のミハイが6歳で王位を継承しました。

 ところが、3年後の1930年、カロルは突如帰国し、息子を退位させて自分が国王カロル2世として玉座に収まってしまいます。その後、カロル2世は独裁体制を強化していきましたが、1939年に始まった第二次大戦でルーマニアは多くの領土を失ったため、1940年に退位を余儀なくされました。これを受けて、ミハイが父親のしりぬぐいをするかたちで復位するという経緯をたどっています。

 1941年6月、いわゆる独ソ戦が始まると、ルーマニアはソ連に奪われた給料の回復をめざし、枢軸国側に立って参戦。しかし、次第に戦況はドイツ降りに傾いていったことから、1944年8月23日、国王ミハイは宮廷クーデターを起こして、親独派のアントネスク政権を追放するとともに、一転してドイツに対して宣戦を布告し、同年9月には連合諸国との休戦協定を締結しています。

 戦後、ルーマニアは敗戦国となることはなんとか免れたものの、国土にはソ連軍が進駐し、ルーマニア軍兵士13万人が捕虜としてソ連に抑留されました。ソ連占領当局は、国王に対して親共産党政府の任命を強要しましたが、国王はこれをかたくなに拒否。このため、1947年12月30日、国王は共産主義者たちに銃口を突きつけられ退位文書に署名し、スイスへ亡命しています。今回ご紹介の証紙は、まさに国王退位の直前の1947年12月1日に発行されたもので、国王の肖像を描く王制時代の切手類としては、最後の1枚となりました。

 さて、スイス亡命後の元国王は、一時、ホーエンツォレルン公を名乗ったものの、基本的にはルーマニア国王を名乗り続けました。今回逮捕された三女は、亡命後の1953年の生まれですから、元国王ご本人からすれば“王女”ということになるのでしょうが、それをすんなりルーマニア国民が受け入れたいたかどうかは、ちょっと微妙なところかもしれません。ちなみに、元国王は現在なおご存命で、王族のウェブサイト上の声明で元王女の逮捕に対し「深い悲しみ」を表明したそうです。

 なお、王制時代を含むルーマニアの近現代史については、拙著『トランシルヴァニア/モルダヴィア歴史紀行』でも、現地のカラー写真を交えてご説明しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。


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