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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 武漢の桜
2006-03-29 Wed 21:35
 中国の武漢大学にある桜の木について「植えたのは旧日本軍。侵略戦争のシンボルだ」と批判する声が急増、中国の大手ウェブサイト「ネットイース(網易)」では「武漢大の桜は中国の恥か」と題する公開討論を始めたそうです。

 というわけで、日本占領時代の武漢大学に関係するものとして、今日はこんなものを持ってきました。

武漢大学

 1937年12月、南京が陥落すると、中国国民政府は重慶への遷都を宣言しますが、その過程で、揚子江中流の都市、漢口が首都機能を担うことになります。このため、1938年8月、日本軍は、国民政府の事実上の首都であった漢口と武昌・漢陽からなる武漢地域の攻略作戦を開始。30万もの兵力を動員し、約2ヶ月後、漢口を陥落させます。作戦は、11月11日に岳州が陥落したところで完了し、以後、日本軍は占領地域を拡大しない方針を固めました。

 今日、ご紹介しているのは、こうした状況の下で設けられた武漢大学野戦郵便局で使用された風景印で、大学の校舎と風景が描かれています。以前、拙著『切手と戦争』でもご紹介したものですが、クリックして画像を拡大していただくと、細部までご覧いただけるものと思います。

 南京から漢口に逃れた蒋介石は、1938年3月29日(そういえば、今日は3月29日ですね)から4月1日まで、武漢大学礼堂で中国国民党臨時全国大会を開催し、そこで“抗戦建国”の基本方針を採択します。これは、「抗戦の目的は日本帝国主義の侵略に抵抗して国家民族の滅亡を回避することにあると同時に、抗戦中の工作をしっかりとこなし、建国という任務を完成させることにある」というもので、以後、抗日戦争の勝利にいたるまで、国民政府の基本方針の一つとなりました。

 このように、“抗戦建国”のゆかりの地であり、中国側の抗日活動の拠点ともなっていた武漢大学を野戦局の風景印の題材として取り上げられたのは、この地が日本軍の掌握するところとなっており、“抗戦建国”がその意味をもはや失っている、ということをアピールする意図があったためとみてよいでしょう。

 まぁ、こうした経緯を考えると武漢大学が“抗日の聖地”となっているのはわからなくもないのですが、だからといって、桜の木には何の罪もないわけで、いまさら“坊主憎けりゃ袈裟まで”のようなことをいわれても、日本人としては当惑するばかりです。こういうとき、日本人同士なら、花見でもしながら酒を酌み交わして腹を割って話すという解決策もあるんでしょうが…でも、その花見じたいが彼らはいやだっていうんですからねぇ。うーん。
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この記事のコメント
#177 はじめまして
郵便学なるものがあるとは初めてしりました。でも本当に切手ってその時代時代を表す絵でできていますよね。熱心なコレクターの方もいらっしゃいますし。ロマンの学問ですね。
この武漢の桜、私は写真で見たことがあります。キレイな桜でした。でも、そんな過去があったなんてしりませんでした。私にはその事実がとても衝撃的でした。
というのも、その桜の写真をくれたのが、武漢大学に通う中国人の友人だったからです。「私たちの友情の証ですね」みたいなことを英語で書いてくれていました。そういう風に言ってくれる人もいて、でもやっぱり文頭にあるようなことを言う人もいる。難しい、ですね。
知ることができて良かったです。ありがとうございました^^
2006-05-25 Thu 20:48 | URL | なずな #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
 なずな様

 はじめまして。コメントありがとうございます。

 >> ロマンの学問ですね。

 僕自身はあんまりロマンチックな人間ではないので、なんだか、そういうお褒めの言葉をいただくとすっごく照れくさいです。

 武漢大学の桜については、いままでは、なずな様のお友達の方々のようなご意見が圧倒的だったのですが、残念ながら、今年に入って、突如、ネット上でクレームをつける輩が表に出てきたということのようです。中国のインターネットが、基本的に、当局の監視下におかれていることを考えると、こういう“妄言(彼らの好きな言葉ですよね)”が出回る背景というものを勘繰りたくなってしまいます。まぁ、圧倒的多数の人たちは、桜は桜という冷静な見方をしてくれていると思うのですが、とかく、声の大きな人たちの主張は悪目立ちしてしまいますよね。

 これを機縁に、今後ともよろしくお付き合いいただけると幸いです。
2006-05-26 Fri 19:24 | URL | 内藤陽介 #-[ 内容変更] | ∧top | under∨
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