内藤陽介 Yosuke NAITO
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 朝日新聞AJWフォーラム
2013-09-26 Thu 12:33
 ご報告が遅くなりましたが、9月12日、朝日新聞AJWフォーラムに「プロパガンダのメディアとしての北朝鮮の切手 」と題するコラムがアップされました。というわけで、きょうはその記事の中から、こんなモノをご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

       金正恩最初の切手

 これは、金正日が亡くなった直後の2011年12月30日に発行された「偉大なる領導者・金正日同志は永遠に我々と共におられる」(以下、「共におられる」)と題するシートで、金正恩の肖像を取り上げた切手としては最初のモノになります。

 この切手は、金正日を追悼する最初の切手として発行されましたが、12月17日の金正日死亡翌日から制作作業を開始したとしても発行日までは約2週間しかありません。デザイナーがゼロから切手の原画をつくり、郵政当局が承認し、裏糊と目打を備えた切手を、少なくとも数十万枚単位で製造し、全国の郵便局に配るまでには、多くの国では普通、1-2ヶ月はかかりますから、いくら朝鮮人民が“革命精神”を発揮しようとも、2週間は短すぎるといえましょう。

 切手をよくみると、額面は“70ウォン”です。ほぼ同時期の北朝鮮の切手の額面は10ウォン、30ウォン、50ウォンのモノが多いことを考えると、この切手の額面があえて70ウォンになっているのは、実際には、翌年2月に予定されていた総書記70歳の誕生日用に準備されていたデザインを、追悼切手として転用したと考えるのが自然なようにも思われるのですが、いかがでしょうか。

 金正恩が朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長となり、父の後継者としての立場を確立したのは2010年9月のことでした。以後、父は後継者としてのお披露目を兼ねて息子を重要行事に同伴させ、雰囲気を盛り上げて、権力の継承を円滑に進めようとします。

 「共におられる」の切手では、父子は同じコートを着ており、ズボンや靴の色やデザインもほぼ同じです。父がサングラスをかけていることもあって、鼻から口元にかけての2人の表情も、血のつながりを感じさせます。こうした演出の背後に、金正恩を金正日の“分身”として位置づけようとの意図があるのは明白でしょう。

 ところが、金正恩が後継者として党や軍の権力基盤を確立する前に、父は亡くなってしまいました。金正日抜きで為政者としての権威を獲得しなければならなくなった金正恩は、父親を飛び越え、北朝鮮においては“唯一絶対神”に等しい存在である金日成の孫であることを強調せざるを得なくなります。

 こうした変化を象徴しているのが、2012年4月11日に発行された「朝鮮労働党第4次代表者会」の小型シート(画像下)です。

       朝鮮労働党第4次大会

 この小型シートでは、父子の切手が1枚ずつ収められていますが、父がトレードマークともいうべきジャンパー姿であるのに対して、金正恩は背広にネクタイ姿です。父の写真にもネクタイ姿のものがないわけではありませんが、人民服もしくは、独特のジャンパー、半袖シャツなどカジュアルな姿が一般的です。むしろ、背広にネクタイをいう服装は祖父・金日成が好んだスタイルでした。なにせ、ソ連から帰国早々、占領ソ連軍の御膳立てで平壌市民の前に初めて姿を見せた時も、“抗日英雄”として軍服を着たらどうかと言うソ連側のアドバイスを無視して、通訳の姜ミハエル少佐からスーツとネクタイを借りてきたという逸話の持ち主ですから…。

 また、「朝鮮労働党第4次代表者会」の金正恩を見ると、服装のみならず、髪型や表情まで、あらゆる面で祖父の金日成を意識していることがうかがえます。たとえば、この切手の金正恩と1962年4月14日に発行された「金日成元帥誕生50周年」の記念切手に取り上げられた金日成の姿と比べてみると、まさに“コピー”という言葉がふさわしいほどです。これは、「共におられる」の頃の路線を放棄し、金正恩は父とは別の人格で、むしろ父を凌駕する金日成の再来というイメージを演出しようとした結果と見て良いでしょう。

 今回の記事では、このほかにも、金正恩以降の北朝鮮の切手をご紹介しつつ、そのプロパガンダ戦略についてご説明しております。機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。 

     
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