内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 泰国郵便学(28)
2013-11-25 Mon 08:13
 ご報告が遅くなりましたが、財団法人・日本タイ協会発行の『タイ国情報』第47巻第5号ができあがりました。僕の連載「泰国郵便学」では、今回は、前回取り上げたバンコク・アジア大会以外の1966年後半から1967年にかけてのトピックについて取り上げました。その中から、きょうはこの切手をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

       タイ・国際米穀年

 これは、1966年11月25日に発行された“国際米穀年”のキャンペーン切手で、水田とコメの女神、メー・ポーソップが描かれています。

 国連食糧農業機関(FAO)は、世界から飢饉や栄養不足をなくすために、1960年から1965年にかけて飢餓救済運動を展開し、その中間年にあたる1963年にはタイを含む世界各国でキャンペーン切手も発行されました。

 これを引き継ぐかたちで、FAOは1966年を“国際米穀年”とし、①米穀産業を促進してコメの生産、消費、流通および貿易を促進させるとともにコメの経済的および経済的な研究を奨励すること、②飢餓救済運動に寄与するコメの役割に対する世界の関心を高めること、③世界人口の約半分以上が依存している米穀の国際的な商品としての価値についての再認識を得ること、などを目的として、さまざまなキャンペーン活動を展開することを決定。その一環として、加盟各国に対してキャンペーン切手の発行が要請され、タイでも、今回ご紹介の切手が発行されたというわけです。

 切手に取り上げられたメー・ポーソップは、タイの伝統的な精霊信仰において稲の魂とされている女性の精霊で男性が脱穀すると怖がって逃げてしまうとされています。このため、毎年の収穫時には、初めの稲は女性が脱穀するという儀礼が行われていました。

 ところで、切手が発行された11月25日は、タイ国内のコメの収穫期真只中ですが、同時に、ラーマ6世(ワチラーウット)が1925年に崩御した忌日でもある点も見逃してはなりません。

 タイの近代化を推進した偉大なる父、ラーマ5世(チュラーロンコーン)との差別化を図るため、ワチラーウットは農業政策に力を入れたとされています。

 すなわち、1910年に国王として即位したワチラーウットは、早くも翌1911年には農務省に命じ、スラ・パトム宮殿(現在はシリントーン王女の住居として利用されています)を会場として第2回農業・商業博覧会を開催。農業振興に力を注ぐ姿勢を明らかにしました。また、英国人トマス・ワークを顧問として迎え入れ、農務省水利局を運河局として改組し、灌漑事業を積極的に推進したほか、1916年には、バンコクに隣接するパトゥムターニー県のタンヤブリーに農業試験場を設け、コメの品種改良に着手しています。

 さらに、第一次大戦後の経済低迷期には、他国の農産物との競争を通じて国内の農業を成長させるべく、大規模な物産博覧会の開催も計画しました。残念ながら、この博覧会は財政難のために実現が大幅に遅れ、1925年にはワチラーウット本人が崩御してしまったため日の目を見ずに終わりましたが、会場として予定されていた総面積57万6000平米の土地は、その後、ルンピニー公園として整備され、現在でもバンコク市民の憩いの場となっています。公園の入口に巨大なワチラーウットの像(下の画像)が建てられているのは、こうした事情によるものです。

       ルンピニー公園・銅像

 なお、現在のタイには、国全体の休日ではないものの、特別な記念日として25の日付が政府によって指定されていますが、その中には、ワチラーウットの忌日である11月25日(つまり、今日ですな)も、彼の遺徳をしのぶ“ラーマ6世の日”として含まれています。

 そうした記念日にあわせて「国際米穀年」のキャンペーン切手を発行した国家の意図としては、農業振興に力を注いだとされるワチラーウットを称え、あらためて王室の権威を国内に浸透させる意図もあったと考えるのが自然でしょう。


 ★★★  絵葉書と切手でたどる世界遺産歴史散歩  ★★★

 2014年1月11日・18日・2月8日のそれぞれ13:00-15:00、文京学院大学生涯学習センター(東京都文京区)で、「絵葉書と切手でたどる世界遺産歴史散歩」と題する講座をやります。(1月18日は、切手の博物館で開催のミニペックスの解説)

 新たに富士山が登録されて注目を集めるユネスコの世界遺産。 いずれも一度は訪れたい魅力的な場所ばかりですが、実際に旅するのは容易ではありません。そこで、「小さな外交官」とも呼ばれる切手や絵葉書に取り上げられた風景や文化遺産の100年前、50年前の姿と、講師自身が撮影した最近の様子を見比べながら、ちょっと変わった歴史散歩を楽しんでみませんか? 講座を受けるだけで、世界旅行の気分を満喫できることをお約束します。

 詳細はこちら。皆様の御参加を、心よりお待ちしております。


 ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★   

 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。次回開催は12月3日(原則第1火曜日)で、以後、1月7日、2月4日、3月4日に開催の予定です。時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。


 ★★★ 内藤陽介の最新作 『蘭印戦跡紀行』 好評発売中! ★★★

 『蘭印戦跡紀行』広告

 日本の兵隊さん、本当にいい仕事をしてくれたよ。
 彼女はしわくちゃの手で、給水塔の脚をペチャペチャ叩きながら、そんな風に説明してくれた。(本文より)

 南方占領時代の郵便資料から、蘭印の戦跡が残る都市をめぐる異色の紀行。
 日本との深いつながりを紹介しながら、意外な「日本」を見つける旅。

 出版元特設ページはこちらです。また、10月17日、東京・新宿の紀伊國屋書店新宿南店で行われた『蘭印戦跡紀行』の刊行記念トークの模様が、YouTubeにアップされました。よろしかったら、こちらをクリックしてご覧ください。


 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★

 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。
スポンサーサイト

別窓 | タイ:ラーマ9世時代 | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< <Brasiliana 2013>終了 | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  <Brasiliana 2013>受賞速報>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/