内藤陽介 Yosuke NAITO
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
World Wide Weblog
 切手の帝国:シーホース
2014-01-04 Sat 10:54
 ご報告が遅くなりましたが、大修館書店の雑誌『英語教育』2014年1月号が発売になりました。僕の連載「切手の帝国:ブリタニアは世界を駆けめぐる」では、今回は、新年号ということで、干支の馬にちなみ“シーホースの切手”を取り上げました。その記事の中から、きょうはこんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

       シーホース1ポンド

 これは、1913年に英国が発行した1ポンド切手で、伝説のシーホースを駆るブリタニアが描かれています。

 1913年、英国郵政は新たに高額面(ハーフ・クラウン=2シリング6ペンス、5シリング、10シリング、1ポンドの4種)の普通切手を発行することになりました。熱心な切手収集家だった国王ジョージ5世は、この新切手を芸術性の高いものにすべく、オーストラリア人彫刻家のバートラム・マッケナルに図案の制作を依頼します。

 マッケナルは1863年、メルボルン近郊のフィッツロイ生まれ。1910年にジョージ5世の戴冠記念メダルを制作しましたが、国王がこのメダルをいたく気に入り、そのデザインはジョージ5世時代の切手やコインに幅広く使われています。

 依頼を受けたマッケナルは、メダルの肖像と、馬車に乗り大海原を駆けるブリタニア(英国の女神)を組み合わせた原画を制作しました。

 ギリシャ神話では、海神ポセイドンは、頭と胴体の前半分が馬、後半分が魚という神獣、ヒッポカンポス(ノルウェーと英国の間の海中に棲んでいるということで、英国にもゆかりがあります)が牽引する戦車に乗って移動します。マッケナルは、このモチーフをアレンジして、車上のブリタニアには、ポセイドンに倣った三叉の矛とユニオンジャックの盾を持たせました。また、ギリシャ神話のヒッポカンポスは前足が水掻きになった姿で描かれるのが一般的ですが、切手の馬の前足は通常の蹄になっています。

 七つの海を支配する大英帝国のイメージを表現したシーホースの切手は、その凹版印刷の見事な出来栄えとも相まって、1913年に発行されると、まさしく高額切手にふさわしい風格で大いに好評を博しました。また、図案のイメージを反映して、シーホースの切手は、一部の英領地域でも地域名を加刷して使用されています。

 切手の印刷は、当初、ウォータールー・ブラザーズ・アンド・レイトン社が担当していましたが、1915年12月には、印刷所がトマス・デ・ラ・ルー社に変更。さらに、1918年12月以降は、ブラッドバリー・ウィルキンソン社が印刷を担当し、1934年から製造が中止される1939年までは、ウォータールー・アンド・サン社が印刷を担当しました。ちなみに、ウォータールー・ブラザーズ・アンド・レイトン社はウォータールー・アンド・サン社から分離独立した会社ですが、1920年に両社は再統合されていますから、最初と最後は同じ印刷所が製造したともいえましょう。

 ちなみに、1939年、英国の高額普通切手のデザインは、シーホースから国王ジョージ6世の肖像に変更されています。

 同年9月に勃発した第2次大戦により、英国は超大国の地位から陥落し、戦後は植民地の独立が相次いで、シーホースの切手に象徴された大英帝国は英連邦へと変質しました。その意味では、一つの切手の退場は、期せずして、時代の変化と密接にリンクしていたともいえそうです。


 ★★★ 展示イベントのご案内 ★★★

 第5回テーマティク出品者の会 1月17-19日(金ー日)
 於・切手の博物館(東京・目白)

 テーマティク出品者の会は、テーマティクならびにオープン・クラスでの競争展への出品を目指す収集家の集まりで、毎年、全国規模の切手展が開催される際には作品の合評会を行うほか、年に1度、切手展出品のリハーサルないしは活動成果の報告を兼ねて会としての切手展を開催しています。僕も、昨年のバンコク展に出品した朝鮮戦争のコレクションを展示します。入場は無料ですので、ぜひ、遊びに来てください。(詳細はこちらをご覧ください)


 ★★★ トーク・イベントのご案内 ★★★

 2014年1月2日より、東京・両国の江戸東京博物館で大浮世絵展がスタートしますが、会期中の1月24日13:30より、博物館内にて「切手と浮世絵」と題するトーク・イベントをやります。

 参加費用は展覧会の入場料込で2100円で、お申し込みは、よみうりカルチャー荻窪(電話03-3392-8891)までお願いいたします。展覧会では、切手になった浮世絵の実物も多数展示されていますので、ぜひ遊びに来てください。

 なお、下の画像は、展覧会と僕のトーク・イベントについての2013年12月24日付『讀賣新聞』の記事です。

大浮世絵展・紹介記事


 ★★★  絵葉書と切手でたどる世界遺産歴史散歩  ★★★

 2014年1月11日・18日・2月8日のそれぞれ13:00-15:00、文京学院大学生涯学習センター(東京都文京区)で、「絵葉書と切手でたどる世界遺産歴史散歩」と題する講座をやります。(1月18日は、切手の博物館で開催のミニペックスの解説)

 新たに富士山が登録されて注目を集めるユネスコの世界遺産。 いずれも一度は訪れたい魅力的な場所ばかりですが、実際に旅するのは容易ではありません。そこで、「小さな外交官」とも呼ばれる切手や絵葉書に取り上げられた風景や文化遺産の100年前、50年前の姿と、講師自身が撮影した最近の様子を見比べながら、ちょっと変わった歴史散歩を楽しんでみませんか? 講座を受けるだけで、世界旅行の気分を満喫できることをお約束します。

 詳細はこちら。皆様の御参加を、心よりお待ちしております。


 ★★★ 予算1日2000円のソウル歴史散歩 ★★★   

 毎月1回、よみうりカルチャー(読売・日本テレビ文化センター)荻窪で予算1日2000円のソウル歴史散歩と題する一般向けの教養講座を担当しています。次回開催は1月7日(原則第1火曜日)で、以後、2月4日と3月4日に開催の予定です。時間は各回とも13:00~14:30です。講座は途中参加やお試し見学も可能ですので、ぜひ、お気軽に遊びに来てください。


 ★★★ 内藤陽介の最新作 『蘭印戦跡紀行』 好評発売中! ★★★

 『蘭印戦跡紀行』広告

 日本の兵隊さん、本当にいい仕事をしてくれたよ。
 彼女はしわくちゃの手で、給水塔の脚をペチャペチャ叩きながら、そんな風に説明してくれた。(本文より)

 南方占領時代の郵便資料から、蘭印の戦跡が残る都市をめぐる異色の紀行。
 日本との深いつながりを紹介しながら、意外な「日本」を見つける旅。

 出版元特設ページはこちらです。また、10月17日、東京・新宿の紀伊國屋書店新宿南店で行われた『蘭印戦跡紀行』の刊行記念トークの模様が、YouTubeにアップされました。よろしかったら、こちらをクリックしてご覧ください。


 ★★★ ポストショップオンラインのご案内(PR) ★★★

 郵便物の受け取りには欠かせないのが郵便ポストです。世界各国のありとあらゆるデザインポストを集めた郵便ポストの辞典ポストショップオンラインは海外ブランドから国内製まで、500種類を超える郵便ポストをみることができます。
スポンサーサイト

別窓 | 英国:KGV 時代 | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
<< 年賀状の切手 | 郵便学者・内藤陽介のブログ |  世界漫郵記:ドバイ⑤>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
| 郵便学者・内藤陽介のブログ |
copyright © 2006 郵便学者・内藤陽介のブログ all rights reserved. template by [ALT-DESIGN@clip].
/