内藤陽介 Yosuke NAITO
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 文楽への補助金削減へ
2014-01-27 Mon 11:55
 国立文楽劇場(大阪市中央区)の初春公演が、きのう(26日)、千秋楽を迎え、同劇場のまとめでは、初春公演は過去最多の動員を記録したものの、年間の有料入場者数は前年比2.5%減の10万1204人となり、大阪市が文楽協会への補助金を満額(3900万円)支給するための条件として掲げた10万5000人には届かず、約734万円カットされる見通しとなったそうです。というわけで、文楽応援企画ということで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

       野崎村(古典芸能シリーズ)

 これは、1972年3月1日発行に発行された古典芸能シリーズ第3集(文楽)のうち、「野崎村」を取り上げた1枚です。

 「野崎村」は、1710年、大坂で大店の娘お染と丁稚の久松が心中したことを題材とした近松半二の作品『新版歌祭文』の上の巻にあたるもので、1780年に大坂・竹本座で初演されました。
 
 大坂の油屋に奉公する久松は、養父である野崎村の百姓、久作の妻の連れ子おみつと許婚でありながら、店の娘お染と相思相愛の仲でした。しかし、主人と奉公人の許されぬ恋であるうえ、お染には縁談もまとまり、二人の前途に希望はありません。しかも、悪人に店の金をだまし取られた久松は、野崎村へ戻されてしまいます。一方、久松との結婚を楽しみにしてきたおみつは、思いがけず祝言が早まることになり、大喜び。ところが、“久松と別れるなら死ぬ”と激しい恋心を抱くお染が久松の跡を追って野崎村を訪れます。久作に諭された二人は、いったん、別れることを約束しますが、そこに心中の覚悟を見抜いたおみつは、久松との結婚を諦め、尼となる――という内容です。

 切手の元になった写真は林嘉吉が撮影したもので、久松を慕って野崎村まで訪ねてきたお染が久松をかきどいている場面です。人形の遣い手は久松が豊松清十郎、お染が吉田蓑助です。切手としての原画構成を担当したのは大塚均でした。

 さて、大阪市の橋下徹市長は、2年前、文楽協会への助成を見直す方針を打ち出し、市は、技芸員の活動補助金1000万円を除いた運営補助金2900万円分について、国立文楽劇場での年4回の「本公演」と「文楽鑑賞教室」の集客数に応じて増減させる制度を決め、今年度から新制度がスタートしました。この結果、合計の入場者数が10万5000人を切った場合、補助金は、下回った人数1人につき約1930円ずつ減額されることになり、9万人以下ならゼロということになっています。

 文楽が、国や自治体の助成金など全く受け取らなくとも、純粋に公演のみで利益を上げられるのであれば、大変結構なことなのでしょうが、現実には、そうなっていないわけで、すでに、1955年の時点で、国は“(人形浄瑠璃文楽座の座員により演ぜられる)文楽”を「文化財保護法」に基づく重要無形文化財に指定し、文楽の保存、記録の作成、伝承者の育成に対して、公費でその経費の一部を負担することができるようにしています。この場合、文楽が真に国の助成に値する文化財か否かという点については議論があるかもしれませんが、個人の好き嫌いは別として(報道を見る限り、橋下市長は文楽がお嫌いなようですが)ユネスコ無形文化遺産保護条約の発効以前の2003年、文楽は「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に掲載され、2009年9月の第1回登録で正式に無形遺産として登録されていることからすると、その文化的・芸術的価値は広く世界的に認められていると考えるのが妥当でしょう。

 もちろん、税金による助成を受ける以上、文楽協会側には、公正かつ適正な資金の運用ときちんとした会計報告が求められるのは当然の話で、この点において、過去の同協会には問題点がなかったわけではないでしょう。ただし、その場合、責任を追及されるべきは文楽協会ないしはその役員なのであって、坊主憎けりゃ袈裟までよろしく、文楽そのものへの支援も止めてしまえばいいということにはならないはずです。

 文楽協会が、助成金に見合っただけの成果をあげていないというのであれば、たとえば、従来の公演や鑑賞教室に加え、大阪市が行うイベントや要人接遇の際のアトラクションとして文楽の公演を行うなどして、不足分は“体で払ってもらう”ということも考えられるわけで、そうした知恵も絞らず、入場者数という数字だけで評価してバッサリというのは、市長が文楽嫌いで知られるだけに、どうにも割り切れないものが残ります。

 ちなみに、文楽と同じくユネスコ無形文化遺産でありながら、実際に鑑賞する人数という点では、文楽よりもはるかにマイナ―と思われる(失礼)沖縄の組踊について、人数が少ないから、助成金をカットしようと沖縄県なり那覇市なりが言い出したという話は、寡聞にして、聞いたことがありませんな。


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