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内藤陽介 Yosuke NAITO
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 第2のズデーテン化を許すな!
2014-02-06 Thu 11:59
 フィリピンのアキノ大統領は、4日付のニューヨーク・タイムズ(電子版)のインタビューで、南シナ海での侵略を続ける中国を、第2次大戦直前、ズデーテン地方(ズデーテンラント)を併合したヒトラーのドイツと重ね合わせ、「われわれが今、不法行為にイエスと言えば、さらなる事態の悪化をどうやって防ぐのか」と述べ、領有権紛争の解決で国際社会がフィリピンを支持するよう訴えました。というわけで、きょうはこの切手です。(画像はクリックで拡大されます)

       ズデーテン加刷

 これは、1938年10月、ドイツによる併合直後のズデーテンラントで、マサリク大統領を描くチェコスロヴァキア切手にナチスの鍵十字と「我々は自由だ」のドイツ語を加刷して発行された切手です。

 現在のチェコ共和国の外縁部にあたるズデーテン地方は、チェコ人の支配するボヘミア王国の時代の東方植民以来、ドイツ系住民の多い地域になっていました。その後、ハプスブルク家の支配を経て、1918年、チェコスロヴァキアが独立を宣言すると、ズデーテン地方の帰属をめぐっては、チェコスロヴァキア政府が同政府による実効支配の追認を求めたのに対して、ドイツ系住民がチェコスロヴァキアへの編入に強く反対。ヴェルサイユ講和会議では、米国が民族自決の観点からドイツへの編入を主張したのに対し、フランスは安全保障の観点からチェコスロヴェキアの強化を主張。最終的に、フランスの主張通り、ハプスブルク帝国解体後の戦後処理を定めたサン・ジェルマン条約によって、ズデーテン地方はチェコスロヴァキア領となり、310万人のドイツ系住民はチェコスロヴァキアにおける“最大の少数民族”となりました。

 これを不満とするズデーテン地方のドイツ系住民の一部は、ズデーテンの自治権を要求。さらに、隣国のドイツがナチス政権下で経済恐慌から脱して経済力を回復すると、コンラート・ヘンラインらのズデーテン・ドイツ人党は、「ズデーテンのみならず全ボヘミア・モラヴィア・シレジア地方のドイツへの編入」を目標に掲げ、ドイツの支援を要請します。

 これを受けて、ヒトラーも“ズデーテン問題の解決”を訴えるようになり、1938年3月の独墺合邦後、「ドイツとチェコの障害になっているのはドイツ人の民族自決権を認めようとしないチェコ側の態度である」、「事態をこのまま放置しておけばヨーロッパ中がチェコの頑迷の巻き添えを喰らうことになる」などとチェコスロヴァキアを恫喝し、欧州内では、ヒトラーが対チェコスロバキア宣戦を行うという観測が強まりました。このため、1938年9月29-30日にいわゆるミュンヘン会談が行われ、対独宥和政策を取る英国のネヴィル・チェンバレン首相、フランスのエドゥアール・ダラディエ首相がズデーテン地方のドイツ編入を容認し、同年10月1日にはドイツによる軍政が施行されました。なお、ミュンヘン会談の前後、ヒトラーは「ズデーテンラントは我々の最後の領土的要求であり、チェコスロヴァキアの独立を侵害するつもりはない」と繰り返していましたが、実際には、1939年3月、チェコスロヴァキア国家は解体され、ドイツはチェコ地域の主要部を併合して、ボヘミアとモラビアの主要部分にベーメン・メーレン保護領(ボヘミア・モラビアのドイツ語読み)を設置しています。

 さて、今回のニューヨーク・タイムズのインタビューで、アキノ大統領が「自国領の部分的な明け渡しを強国に迫られている」として、上記のようなヒトラーによるズデーテン地方併合の先例を持ち出し、「われわれが今、不法行為にイエスと言えば、さらなる事態の悪化をどうやって防ぐのか」と述べています。さらに、チェンバレンらの宥和政策がナチス・ドイツをつけあがらせ、欧州大戦にいたった過去の経緯に照らして、尖閣問題を含めアジア各地での侵略とチベットやウイグルなどでの非道な人権侵害を繰り返す中国を念頭に「(国際社会は)『もうたくさんだ』といずれの時点で言うのか。世界は言わねばならない」と力説。南シナ海における領有権紛争の解決で国際社会がフィリピンを支持するよう訴えました。

 中華人民共和国が“現代のナチス”にもなぞらえられていることは衆目の一致するところであり、その意味では、アキノ大統領の訴えは至極もっともなことです。我々は、ミュンヘンの悲劇を二度と繰り返さないためにも、大統領の呼びかけに、いまこそ応えるべきだと思います。


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