内藤陽介 Yosuke NAITO
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 蘭印の皇紀
2014-02-11 Tue 13:51
 きょうは建国記念の日です。というわけで、こんなモノを持ってきました。(画像はクリックで拡大されます)

       スラバヤ敵産管理部差し出しの葉書・消印部分    スラバヤ敵産管理部差し出しの葉書

 これは、日本占領下の1943年6月、ジャワ島スラバヤの敵産管理部が差し出した葉書で、水牛農耕図案の3.5セン切手に皇紀で2603年と表示され消印が押されています。今回は消印が主役なので、最初に消印の拡大画像を貼っておきました。

 神武天皇の即位した年を紀元とする皇紀(正式には神武天皇即位紀元)は、1872年10月、「(神武天皇の即位の日として『日本書紀』に記されている)“辛酉年春正月庚辰朔”は西暦では紀元前660年2月11日に相当する(これが、2月11日を紀元節ないしは建国記念の日とする根拠になりました)」と明治政府が布告したことに基づき、1873年1月1日の太陽暦採用と同時に施行されました。年号は上述の通り西暦+660年で、月日は太陽暦と合致しています。したがって、今回ご紹介の葉書の消印にある2603年は、西暦の1943年に相当します。

 さて、日本占領下の蘭印では、公式文書の日附には皇紀が用いられていました。今回ご紹介の葉書は、ゼネラル・エレクトリック(GE)社の資産を接収した際の預かり証で、公的機関の出した文書なので、裏面の日付欄には“皇紀260 年”と皇紀の下一桁を書き込めばよいようになっています。

       スラバヤ敵産管理部差し出しの葉書・裏面

 なお、今回ご紹介の消印の日付は建前通り皇紀2603年となっていますが、スマトラなどでは昭和年号の消印が使用されることもありました。(ウィキペディアには占領下の蘭印では「元号は用いられていなかった」との説明がありますが、これは正確ではありません)また、西暦と皇紀は下一桁が一緒ですので、地域によっては西暦の10の位の4をつぶして対応したケースもあります。

 蘭印と皇紀といえば、終戦直後の1945年8月17日に発せられたインドネシア共和国独立宣言の書面上の日付が皇紀を採用した“05年8月17日”となっているのは有名な話です。この点については、しばしば「ムスリムであるスカルノが日本への感謝の意を示すとともに、(オランダの宗教である)キリスト教に由来する西暦を嫌ったため」という説明がなされることがあるようですが、日本の占領時代には公文書では皇紀が採用されていたため、ただ単にそれを踏襲しただけというのが実情だったようです。その証拠に、連合国軍の上陸により日本軍の武装解除が行われると、消印の年号表示も西暦に戻っています。また、現在のインドネシアでは、独立宣言というと1955年にスカルノが録音した音源が広く知られていますが、ここでの年号は皇紀の“(26)05年”ではなく、西暦の“1945年”となっていることも記憶にとどめておいてよいでしょう。

 いずれにせよ、インドネシアの人々が、日本による占領時代の体験を糧に、戦後、オランダとの苛烈な戦争を戦い抜いて独立を勝ち取ったことは事実で、その点で、彼らが日本に感謝すると言ってくれるのは日本人として素直に喜ぶべき話です。ただし、彼らの独立は、あくまでも、彼ら自身の努力と犠牲によって達せられたものであって、そのことに目をつぶって「日本がインドネシアを独立させてやった」などと主張するのはあまりにも浅薄な理解としかいえません。

 なお、このあたりの事情については、拙著『蘭印戦跡紀行』でもいろいろと例を挙げながらご紹介しておりますので、機会がありましたら、ぜひご覧いただけると幸いです。

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