内藤陽介 Yosuke NAITO
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 泰国郵便学(29)
2014-02-26 Wed 10:57
 ご報告が遅くなりましたが、財団法人・日本タイ協会発行の『タイ国情報』第48巻第1号ができあがりました。僕の連載「泰国郵便学」では、今回は、1967年のトピックということで、アセアン国際観光年について取り上げました。その中から、きょうはこの切手をご紹介します。(画像はクリックで拡大されます)

       タイ・国際観光年

 これは、1967年9月15日に発行された国際観光年の記念切手で、王宮を背景にチャオプラヤー川に浮かぶ御座船のスリ・スパンナホンが取り上げられています。

 タイ政府による本格的な観光振興政策は、ラーマ5世(チュラーロンコーン)時代に、王立鉄道の長官だったプラチャトラ・ジャヤカラ親王が米国向けにタイを宣伝するパンフレットを送ったのが最初とされています。

 ちなみに、親王はチュラーロンコーン35人目の息子として1881年1月23日に生まれました。英国ケンブリッジ大学で土木工学を、フランス、オランダでダムやトンネルの掘削技術を学び、英国での土木工学研究所勤務を経て1904年に帰国。陸軍の工兵士官として工兵局を設立し、鉄道建設にも尽力しています。1936年没。

 さて、王立鉄道は1924年に下部組織として宣伝局を設置し、観光宣伝と同時に、タイを訪れる外国人に対して便宜を提供することになりました。親王による米国向け観光パンフレットの送付もこうした文脈に沿ったものです。

 1936年、タイ政府は観光政策を大幅に充実させるべく商業省(後商業交通省)の所管に移しましたが、大東亜戦争の勃発により、外国人観光客の受け入れは途絶しました。

 戦後、観光行政は観光宣伝を中心に首相直轄の組織として観光局が担当することになります。

 1958年9月のクーデターでピブーン・ソンクラームを追放して、政府の実権を握ったサリット・タナワットは、1959年2月の首相就任までの間、病気療養のために渡米しましたが、滞在中に目にした米国の観光政策に感銘を受け、帰国後、政府広報部とともに政府観光局(National Tourist Office)を設置。1960年3月18日、同局は、バンコク・サナムスアパーのシーアユッタヤー通りに独自のオフィスを開設しました。その後、同局は、タイ政府観光機構(Tourist Organization of Thailand:TOT)、さらに1979年にはタイ政府観光庁(Tourism Authority of Thailand:TAT)と改称し、現在にいたっています。

 1960年代以降、インドシナ情勢の不安定化に伴い、タイは米軍の兵站基地となったが、それに伴い、タイ国内はヴェトナム戦争に従軍する米軍関係者の保養地となり、さらに、彼らを通じて、欧米人にとってのリゾート地として注目されるようになりました。その背景には、1964年8月のトンキン湾事件発生後、米軍がインドシナへの関与を強めていくなかで、翌1965年、ニューヨーク事務所を開設して、米軍の保養地としてのタイの魅力を積極的にアピールした政府観光局の営業努力があったことも見逃せません。

 その甲斐もあって、国際観光年の1967年にタイを訪れた外国人は、一般の観光客が33万6000人、インドシナの前線から休暇期間に訪タイした米軍関係者が5万人にものぼり、彼らがタイ国内に落とした外貨は、タイの国家財政にとっても重要な財源となりました。また、こうした成果を踏まえ、政府観光局は1968年には初めての地方事務所をチェンマイに開設。その後のタイの観光産業の基礎を築いています。

 さて、今回ご紹介の切手に取り上げられた、チャオプラヤー川に浮かぶスリ・スパンナホンというモチーフは、バンコクを象徴するものとして、下の画像のように、TATのマークにも取り上げられています。

       タイ政府観光庁マーク

 ただし、TATのマークでは、王宮側から川を見た構図のため、背景にはワット・アルンが描かれていますが、切手は逆に、ワット・アルン側からの視点で、王宮を背にした構図が採用されています。

 切手に取り上げられたスリ・スパンナホンは、ラーマ1世が建造した御座船の老朽化が進んだため、その後継機として、ラーマ6世の命によって建造されたもので、船首の像は、ブラフマー(ヒンドゥー教の神)の乗物、ハンサ(白いガチョウの姿であらわされる神鳥)をかたどっています。スパンナホンという船名はハンサの別名です。

 船は全長46.15メートルの巨大なもので、1911年11月13日に進水しましたが、完成後、この船を手がけた職人の長は、すべての道具を捨てて二度と職人としての仕事をしないと誓ったのだとか。船は50人の漕ぎ手によって航行され、玉座や天蓋を乗せたうえで、王室の記念式典などの際に用いられています。

 
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